東急の企画・運営により、2024年1~3月に運行を予定している「THE ROYAL EXPRESS ~SHIKOKU・SETOUCHI CRUISE TRAIN~」の旅行プラン説明会が6月30日に都内で行われた。3泊4日のクルーズで「THE ROYAL EXPRESS」(伊豆急行2100系)への乗車に加え、専用バスやクルーズ船も活用して瀬戸内海を周遊する。

  • 「THE ROYAL EXPRESS」四国・瀬戸内クルーズトレインの旅行プランが発表された(写真提供 : 東急)

旅行プラン説明会では、プラン概要の説明に加え、このクルーズのために制作された新曲が披露され、参加料理人による料理の試食時間も設けられた。

■3泊4日のクルーズ、地元料理や船旅も

「THE ROYAL EXPRESS ~SHIKOKU・SETOUCHI CRUISE TRAIN~」は、1日目の10時10分頃に岡山駅を出発し、高松駅、琴平駅、松山駅を経て、4日目の18時頃、岡山駅へ戻る旅程となっている。東急社会インフラ事業部クルーズトレイン推進グループ統括部長の松田高広氏が旅行プランの概要を説明した。

1日目のテーマは「瀬戸の海に想いを馳せながら」。岡山駅を出発し、瀬戸大橋を渡って四国へ上陸し、高松駅を経由して琴平駅へ向かう。琴平駅到着は14時頃の予定。琴平を観光した後、渓流の奥座敷に立地する「湯山荘 阿讃琴南」に宿泊する。

2日目のテーマは「四国の伝統文化を感じて」。多度津駅を10時10分頃に発車し、目的地の松山駅到着は14時50頃の予定。2日目の宿泊施設は選択制とされ、道後温泉の「別邸 朧月夜」または山間部の高台に位置する「瀬戸内リトリート青凪 by 温故知新」から選べる。

  • 「THE ROYAL EXPRESS」運行ルートと1日目の行程、宿泊施設は「湯山荘 阿讃琴南」

  • 2日目の行程。宿泊施設は「別邸 朧月夜」と「瀬戸内リトリート青凪 by 温故知新」の選択制

3日目のテーマは「凪の誘い・瀬戸内の絶景」。松山駅を10時30分頃に発車し、14時15分頃に今治駅到着後、専用バスでしまなみ海道へ。しまなみエリアの観光を終えた後、広島県尾道市の生口島にある「Azumi Setoda」で宿泊する。

フィナーレとなる4日目は、「四国・瀬戸内の彩りに囲まれて」をテーマに、今治駅を10時30分頃に出発し、14時30分頃に高松駅に到着。その後、高松港から新岡山港まで約2時間、「おりんぴあどりーむ せと」貸切クルーズに乗船し、乗船中にフェアウェルセレモニーが行われる。18時頃、岡山駅に到着し、解散となる。

予讃線の多度津駅以西は単線区間になっており、「THE ROYAL EXPRESS」は行き違い・通過待ちを行いながらゆっくり進む。そのため、瀬戸内海沿いの車窓を豪華な車内から存分に楽しめる。駅を離れての観光や、宿泊施設へ移動する際は専用バスに乗車。専用バスの運行を両備ホールディングスが担当する。最終日に運航される「おりんぴあどりーむ せと」も、両備グループの国際両備フェリーが担当する。

  • 3日目は今治駅を経由し、しまなみ海道へ

  • 3日目の宿泊は生口島の「Azumi Setoda」

  • 4日目は高松港から「おりんぴあどりーむ せと」に乗船し、岡山へ

昼食は地元の料理人を迎え、瀬戸内でしか味わえない料理を「THE ROYAL EXPRESS」の車内で提供。1日目は高松市「料亭 二蝶」の山本亘氏による日本料理、2日目は坂出市「Azalee」(フランス語でツツジ)の米田宏和氏によるフレンチ、3日目は松山市「鮨 いの」の猪野祐介氏によるにぎり鮨、4日目は伊予市「L’API」の宮川圭輔氏によるイタリアンを提供する予定となっている。

運行日は2024年の1月26~29日、2月2~5日、2月9~12日、2月16~19日、2月23~26日、3月1~4日の計6回。旅行代金は2名1室利用時で96万円から、1名1室利用時で134万4,000円からとなる。募集人数は各回最大15組30名、最少催行人員は16名とのこと。

申込み受付期間は7月27日から9月28日まで。申込み多数の場合は抽選を行う。郵送申込みの場合は9月28日必着、ウェブサイトでの申込みは9月28日23時59分が締切となる。なお、「THE ROYAL EXPRESS」のクルーズプランに過去2回以上参加したことのあるリピーターは、7月27日から8月10日まで行われる先行販売の対象になる。

これらを踏まえ、東急の松田部長は「地域の皆様とともに、四国・瀬戸内の魅力にあふれた、これまでにない世界に誇る旅舞台を作っていきたい」と話し、旅行プランの概要説明を締めくくった。

■地元関係者らの期待・意気込みは

四国・瀬戸内クルーズの旅行プラン決定にあたり、地元関係者も登壇し、それぞれ挨拶した。1日目の昼食を担当する二蝶代表取締役・「料亭 二蝶」料理長の山本亘氏は、水戸岡鋭治氏のデザインによる豪華列車で料理を提供できることを喜びつつ、「瀬戸内でとれた魚・野菜、そういったものをなるべく多く表現していきたいと思っています。お楽しみいただけたら」と語った。

JR四国専務取締役・鉄道事業本部長の長戸正二氏は、これほど極上の旅行プランができたことに驚いているとコメント。関係者らと連携して四国の活性化に努め、その上で「皆様と来年会えることを楽しみにしています」と話した。

現地での専用バスとクルーズ船を担当する両備ホールディングス執行役員トランスポーテ―ション&トラベル部門副部門長の大上真司氏は、「おりんぴあどりーむ せと」が「THE ROYAL EXPRESS」の世界観と一体になることを見込みつつ、「安全を最優先に、お客様の思い出に残るホスピタリティの高い運航をしていきます」と意気込む。

  • 登壇者全員のフォトセッション。ドーンデザイン研究所の水戸岡鋭治氏(1列目の右端)も出席した

香川県東京事務所長の森岡英司氏は、国鉄時代の観光キャンペーンで「青い国」と称された四国にロイヤルブルーの豪華列車が走ることに期待を寄せ、「できるだけ多くの皆様にこの素晴らしい体験をしていただきたい」と話した。愛媛県東京事務所副所長の河上芳一氏も、四国・瀬戸内クルーズで訪問する観光地の見どころを挙げた上で、「ぜひ、愛媛の歴史・文化、自然、美味しい食べ物をご堪能いただければ」と挨拶した。

最後に、「THE ROYAL EXPRESS」と専用バス、クルーズ船「おりんぴどりーむ せと」のデザインを手がけたドーンデザイン研究所主宰の水戸岡鋭治氏も挨拶。北海道クルーズを経て今回の四国・瀬戸内クルーズが実現し、「不可能だったことが実際に可能になった」と話す。JR各社や国土交通省鉄道局の応援があったことにも触れ、「これからもこのプロジェクトをさきがけに、もっと楽しい、日本の鉄道の旅を作っていきたい」と語った。

■四国・瀬戸内クルーズのテーマ曲演奏、地元料理やジュースの試食・試飲も

今回の説明会では、新たに制作されたテーマ曲「THE ROYAL EXPRESS ~四国・瀬戸内の旅~」も披露され、音旅演出家・ヴァイオリニストの大迫淳英氏が生演奏。初期の「THE ROYAL EXPRESS」テーマ曲のフレーズを取り入れつつ、伊豆のクルーズや北海道クルーズとは異なるメロディを取り入れ、四国・瀬戸内クルーズへの期待を高める楽曲となった。

  • 音旅演出家・ヴァイオリニストの大迫淳英氏が「THE ROYAL EXPRESS ~四国・瀬戸内の旅~」を生演奏

説明会の後、「料亭 二蝶」の山本料理長による料理の試食会が行われ、春祝魚(はるいお)寿司、和三盆、みかん「甘平(かんぺい)」果汁100%のストレートジュースが提供された。四国・瀬戸内クルーズにおいて、山本料理長の料理は1日目の昼食で提供予定だが、実際の運行時期とは異なるため、今回の料理はあくまでイメージとしてとらえてほしいとのことだった。

まずは春祝魚寿司。サワラの味噌漬けを押し寿司にした一品となっている。脂が乗った身の上にゆずのしぼり汁が添えられており、魚の旨味を十分に感じつつ、さっぱりとした後味に。寿司に添えられたしょうゆ豆は、乾燥させたそら豆を煎って醤油に付け込んだ讃岐の郷土料理。軽い食感と香ばしさ、醤油の風味が効いていた。春祝魚寿司との相性が良かっただけでなく、お酒のおつまみにも適しているように感じられた。

  • 説明会で提供された春祝魚寿司としょうゆ豆、和三盆、「甘平」ストレートジュース

山本料理長の解説によれば、「春祝魚」とはサワラを用いた讃岐の文化風習で、かつて小麦から稲作に移る間のわずかな時期に花嫁が里帰りすることがあったという。その際、サワラを持たせ、サワラの片身を刺身で振る舞い、残った片身を味噌漬けにして嫁ぎ先に持たせることで、家と家をつなぐ意味があると説明していた。

続いて和三盆。上品な甘さが特徴で、作りたてだったこともあってか、口の中でほろっと崩れる食感も面白い。試食後、型取りの実演も行われた。木の型に和三盆を詰め、片手に持った器具で型に振動を与え、徐々にずらしていく。すると、型から少しずつ和三盆が外れていき、花の形になって出てきた。季節や天気による水分量の違いで、固まり方にも違いが出てくるという。型も季節に応じたものを使用しており、四国・瀬戸内クルーズの運行時期(1~3月)は「スイセン、鬼、お雛の型」を使用するとのことだった。

  • 型に詰めた和三盆に少しずつ振動を与える

  • 花の形にかたどられた

  • 「料亭 二蝶」料理長の山本亘氏

最後に提供された「甘平」100%のストレートジュースは、みかんとは思えないほど濃厚な甘さに驚いた。みかん特有の酸っぱさもあり、濃厚な甘みを引き立てつつ、さっぱりした甘味の余韻を残していくところが印象的だった。「甘平」は愛媛県オリジナルの高級品種で、大粒の果実だが栽培が難しく、希少だという。後で愛媛県の河上氏に尋ねたところ、「甘平」は1月に旬を迎えるとのことで、四国・瀬戸内クルーズへの参加で「甘平」を味わえるタイミングがあるかもしれない。

今回、「THE ROYAL EXPRESS ~SHIKOKU・SETOUCHI CRUISE TRAIN~」の詳細な旅行プランが発表され、地元関係者からの期待と歓迎の声も聞けた。説明会で味わった料理は実際の提供料理と異なるものの、四国・瀬戸内クルーズの食についても、これまでのクルーズで蓄積されたノウハウが存分に生かされるのではないかと思えた。これまで以上に高額な料金設定だが、時間をかけて走行する豪華列車で得られる体験は特別なものになるだろう。興味を持ったら「THE ROYAL EXPRESS」公式サイト等も参照してみてほしい。