• 日本テレビ報道局の細川恵里記者 (C)NTV

ドラマ志望で日テレに入社し、「フィクションにしか興味がなかったんです」という細川記者。だが、前に配属されていた宣伝部で『NNNドキュメント』を担当すると、「ノンフィクションのドキュメントってこんなに面白いんだ、こんな世界があるんだということに気づいて、自分も作ってみたいと思ったんです」と、報道局への異動希望を出した。

そのきっかけとなった作品は、25歳の若さでがんのため亡くなった山下弘子さんを4年にわたり追いかけた『彼女が見ていた景色 ~山下弘子の生き方~』(2018年7月22日放送)。「ドラマよりもドラマチックですし、真実だからこそより伝わってくるものがあるんだと思いました」と衝撃を受けた。

そんな念願の枠での放送が実現したことに、もちろん「すごくうれしいです」というが、「『Nドキュ』をやりたいというのは滝野さんにも言っていたので、決まったことを報告したら『良かったね』と言葉をかけてもらいました」と、一緒に喜んでくれたという。

■婚姻届の証人にも…取材者×取材対象者を超えた関係性

細川記者と滝野さんとは孫と祖母ほどの年齢差があるが、「おばあちゃんと話しているというより、結構年上のお姉さんと話している感覚なんです。だから、自分の親が滝野さんみたいになったらいいなというより、自分があんなふうになれたらいいなという憧れが強いです」という距離感。

取材が一段落すると、プライベートの話をする仲になるそうで、「私、1年前に結婚したのですが、滝野さんに婚姻届の証人もなっていただきました。よく、『仕事ばっかりして、旦那さんも大事にしたほうがいいわよ』と言われます(笑)」と、取材者×取材対象者を超えた関係性を築いている。

  • 細川記者(右)の婚姻届の証人になった滝野さん (C)NTV

滝野さんが発する様々な言葉の中で、特に印象に残るというのは、“道はつながってる”。それは、自身の境遇に照らし合わせ、強く共感するものだった。

「滝野さんは『自分らしく生きたい』と53歳でアメリカに留学されたのですが、留学先の友人から贈られた本にあった1行でシニアのチアリーディングを知って、連絡先が分からなくても、たまたまそのシニアチームがある町に行ったことがあったので、そこの郵便番号だけ書いて手紙を送ったら届き、交流が始まって活動を知ることができたという経験があるので、『何か1つやろうと思って行動を起こすと、少しずつ道がつながって今がある』とおっしゃっていたんです。私も、滝野さんを取材しようと思ったことがきっかけで、報道に異動希望を出すきっかけの番組だった『NNNドキュメント』に今こうしてたどり着くことができたので、滝野さんの“道はつながってる”という言葉に、すごく励まされながら取材していました」

■「滝野さんという存在を後世に伝える」という思い

改めて、今回の見どころを聞くと、「滝野さんは、見ているだけでとにかく元気になれる存在だと思うので、自分があまり良い状態じゃなくて悩んでたり、これからうまくいかないかもしれないと迷っていたり、つらいことがある人が見ていただけると、半歩でも進むきっかけになってくれる人だと思います」と、そのエネルギーを表現。

「何でもいいから始めたらいいよ」が口癖だという滝野さんを映し出す今作は、多くの人が新しいスタートを切った新年度の始まりにふさわしいドキュメンタリーと言えるだろう。

そして、細川記者は「滝野さんがこれから先、体が動かなくなってチアを引退されたり、例えば施設に入るということになっても、滝野さんという存在を後世に伝えるんだという思いで、この作品を作っています」と使命感を語り、「いちスタッフの思いとして、今後も追い続けていきたいと思います」と意欲を示した。