20年以上のキャリアを誇り、主演からバイプレイヤーまで映像界にはなくてはならない俳優の濱田岳。そんな濱田が「非常に難しい」と大きなやりがいを感じているのが、現在放送中のTBS系日曜劇場『マイファミリー』(毎週日曜21:00~)で演じている東堂樹生という役だ。「この役を真摯に向き合って乗り越えられることができれば、40代、50代へのモチベーションにつながると思う」と語った胸の内に迫る――。

  • 『マイファミリー』東堂樹生役の濱田岳

5月22日放送の第7話の終わり、「俺が誘拐した」とこれまでの一連の誘拐事件を告白した濱田演じる東堂。このシナリオは、脚本の準備稿の段階で分かっていたことで、それまでの東堂の行動や感情を考えると、苦しくなる部分は多かったという。

「いままでも(二宮和也演じる鳴沢温人の娘の)友果ちゃんの事件を一緒に追っているときや、救出するシーンなどで発する東堂の言葉には常に嘘と真実が混ざっている。そこで完全に犯人じゃないという言動をすれば、それはただのサイコパスの犯行に見えてしまう。それだと脚本の意図からはズレてしまうので、どこかに心が痛んでいることが滲み出る必要がある。でもそれが分かりやすくてもダメじゃないですか。本当にやりがいがあるし、難しい役だなと思いました」。

濱田の言葉通り、これまでの誘拐事件で温人の右腕となりながら事件を追う姿や、誘拐事件の暴露本が出されたときの東堂の告白など、“仲間”としての純粋な思いと、自分のミッションを遂行するための嘘が入り乱れた表現は、正解が見えづらく、非常に難易度が高いと感じられる。

「決して簡単ではないですよね。例えば友果ちゃんを助けたとき、東堂は犯人を追うふりをしますが、温人が腕をつかんで『追わなくていい』って止めるんですよね。そのときも東堂の心のなかには、ミッションが失敗した気持ちと、温人の心の優しさに感動する気持ち、安心しているお嬢さんを見てホッとする気持ち、そして傷つけてしまったという後悔の念。いま考えただけでもいくつもの感情がこもっている。本当にどんな顔をしたらいいんだろう……と悩みは多いです」。

とは言いつつも、濱田だからこそ難役を任せられるという製作陣の絶大なる信頼があるのも事実だ。

「こういう難しい役を与えていただけるというのは素直にうれしいです。この苦しみも自分にしかできないんだと思って臨んでいます。やっぱり僕も30代になって、おバカな感じの役だけではなく、大人をしっかり騙せるような役を演じられるというのはありがたいです」。

さらに濱田は今後の俳優業へも思いを馳せる。

「今回の役を真摯に向き合って、しっかりと乗り越えることができれば、また演じるということの自信につながっていくのかなと思います。今後迎える40代、50代への大きなモチベーションになる作品になればいいなという思いで演じています」。