東宝配給の映画『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』と『劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険』が2001年の初公開以来20年ぶりとなる「2本立て同時上映」を行った。

  • 当時の入場者特典「ゴジハムくん」を持つ沢辺伸政氏(左)と、バンダイの新商品「怪獣番外地シリーズ GMKリアルゴジハムくん(名称仮)」を手にする金子修介監督(右)

「ゴジラ&ハム太郎復活上映会」と銘打たれた本イベントは、2021年12月11日に東京・新文芸坐、19日に京都みなみ会館で開催。東京会場では『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』の金子修介監督と、当時の「とっとこハム太郎」プロデューサー沢辺伸政氏によるトークが行われ、ゴジラとハム太郎が2本立て興行に至った経緯や、当時のファンからの反響といった興味深い話題で、つめかけたゴジラファンおよびハム太郎ファンを沸かせた。

まずステージに上った「とっとこハム太郎」プロデューサー沢辺伸政氏は、映画化の経緯を次のように語った。

「小学館の学年誌で1997年より連載された『とっとこハム太郎』は、2000年からテレビアニメ化されると、それまで以上に人気を高めました。そんな中、スタッフの間で“映画ができたらいいな”と話していたのですが、映画化が実現したのは当時の東宝・映画調整部長で現在は社長の島谷能成さんから『ハム太郎の映画どうや?』と声をかけていただいたのがきっかけでした。非常にうれしかったですね。小学館では東宝さんと組んで、春休み、ゴールデンウイーク、夏休みとアニメ映画を公開していましたので、ハム太郎の映画をやるには冬休みしかなかった。そんなとき島谷さんが『ゴジラとハム太郎を一緒にやるのはどうだ』と提案してくださったんです。普通ではちょっと考えつかないアイデアだと思いましたが、面白いとも思いました。原作者・河井リツ子先生にもご確認しましたら、組み合わせとしては楽しいんじゃないですかと、前向きな意見をいただきまして、それで『やろう!』と決まりました」

劇場版『ハム太郎』の監督は出崎統氏(出崎氏の「崎」は立つ崎が正式表記)が務めることになった。出崎監督といえば『エースをねらえ!』『ガンバの冒険』『宝島』『あしたのジョー2』『スペースコブラ』をはじめとする、東京ムービー(現:トムス・エンタテインメント)製作のテレビアニメで活躍したアニメ界の名匠。沢辺氏は出崎監督の起用について「劇場版として高いクオリティが求められたし、魅力を出さないといけないと考えて、出崎さんに監督をお願いしました。私は『ガンバの冒険』が好きで、あの作品で個性的なネズミたちを活き活きと動かしてくれた出崎さんの演出力を、ぞんぶんに発揮してもらいたいと思ったんです」と説明した。

続いて、『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃大怪獣総攻撃』(以後『GMK』と略)の監督を務めた金子修介氏が登壇。金子監督は少年時代から特撮映画、特撮テレビドラマに強い愛情を持ち、いつか自分の手でゴジラ映画を作ってみたいという思いを抱いていた。監督デビュー後、数々の青春映画で優れた実績を挙げた金子監督は、自身の怪獣映画への愛情を全力で込めた『ガメラ 大怪獣空中決戦』(大映)を1995年に発表。特撮ファンだけでなく映画ファン全体から高い評価を集めた。金子監督の『ガメラ』はシリーズ化され、『ガメラ2 レギオン襲来』(1996年)『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』(1999年)も優れた内容の作品として多くのファンに愛された。『GMK』はそんな金子監督が挑んだ、初の「ゴジラ映画」となった。

『GMK』と『ハム太郎』が同時上映になる、と金子監督が聞いたのは撮影が始まって中ごろのタイミングだったという。金子監督はそのときの心境をふりかえって「東宝の富山(省吾)プロデューサーから知らされたときは、驚きました。もともと『GMK』って、ゴジラに対抗する怪獣はバラン、バラゴン、アンギラスだったんですけど、作品自体の興行力が落ちてきているということで、2000年の末に東宝からバランとアンギラスではなく知名度の高いモスラとキングギドラにしてほしい』と打診があったんです。そんな状況でもあったので、ゴジラに“援軍”が必要だと東宝が判断したのでしょうね。驚きはしたけれど、2本立てにすることで興行の力がつくのならいいのかなって思いました」と、当初は単独上映のつもりで徹底的に“怖い”ゴジラを描いてやろうと構想していたのが、かわいい『ハム太郎』との同時上映が決まったことで少々面食らいつつも、受け入れる姿勢を見せたことを明かした。

『ハム太郎』について金子監督は「当時、うちの長男が小学3年生、長女が1年生で、テレビアニメの「ハム太郎」を観ていましたし、実際にハムスターを飼っていたこともあって親しみはありました。『GMK』との同時上映であることよりも、出崎監督が登板するのを知って、そっちのほうがビックリしましたね。僕が子どものころから尊敬していたアニメ監督でしたから。『悟空の大冒険』とか『エースをねらえ!』とか、大好きでした。僕の商業作品デビュー作はにっかつロマンポルノ『宇能鴻一郎の濡れて打つ』(1984年)なんですけど、これって『エースをねらえ!』のパロディとして作ったんですよ」と、ハム太郎への親しみと出崎監督への憧れを語った。

20年前、実際に劇場へ足を運んだ思い出のある方ならご記憶かもしれないが、あのときの映画館には『ハム太郎』を観るつもりで訪れた観客(父兄)に対して「同時上映のゴジラは迫力満点の怪獣特撮映画ですので、初めてご覧になる未就学児童のお子さま方には作品内容ご理解の上でご鑑賞ください」との“張り紙”が出された。これについて沢辺氏は「あれは公開後に準備したわけではなくて、最初から劇場窓口でこういうメッセージを出そうと考えていました。ゴジラを観てびっくりされるお子さんがいると思いましたので、ハム太郎側のお願いとして実行したのです」と、幼い子どもがショックを受けないよう、事前に配慮する姿勢を打ち出そうとしていたことを説明した。

今回の復活上映会には、20年前に両作品を観に行ったものの「ゴジラが怖すぎて途中までしか観られなかった」という人もいたそうだ。20年の歳月を経て、初めて『GMK』と『ハム太郎』の2本を心ゆくまで堪能することができたというファンの思いを知った沢辺氏は「本日のチケットが、発売開始から約2分で完売したとうかがって、ゴジラのファンはやっぱり熱いな……と思っていましたが、今日はハム太郎のファンの方たちもたくさん来場していただき、こんなうれしい出来事がまさか20年後に起きるとは思っていませんでした。いろいろなことがありましたが、この場で「ハム太郎」のことを思い出してもらう機会が持てたのは、本当にうれしいです」と、20年前の苦労を懐かしく思い出しつつ、つめかけた大勢のファンに感謝のコメントを残した。

金子監督も改めて20年前の『GMK』『ハム太郎』同時上映をふりかえって、「もしも企画の最初からハム太郎といっしょにやると知っていたら、もうちょっとマイルドな内容のゴジラ映画にしていたかもしれません。まったく想定外の話でしたからね。20年前に子どもだった人たちが、もう一度このカップリングで観てみようか、と思ってくれたのは感慨深いです。僕は自分が作った映画は劇場で観ないほうなんですけど、『GMK』は大晦日に家族を連れて観に行ったんです。大勢の親子連れが楽しんでいたのを観察して、『ゴジラ』と『ハム太郎』の組み合わせって面白いんじゃないかって思いました」と話して、『ゴジラ』と『ハム太郎』が力を合わせて2002年の正月興行を成功させたことに喜びを見せた。

今から20年前となる初公開当時『ゴジラ』と『ハム太郎』の同時上映を記念し、入場者プレゼントとしてかわいい「ゴジハムくん」マスコットが観客に配られた。ゴジハムくんは『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』のもので、翌年の『ゴジラ×メカゴジラ』では「メカゴジハムくん」、その次の年公開の『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』では前売券購入特典として「モスハムくん」が配布された。ショーケースには当時の前売券や新聞広告、パンフレットなどの資料と共に、かわいいゴジハムくんと仲間たちがせいぞろいし、ファンの目を楽しませた。

トークイベントの最後には、「怪獣番外地」ブランドの新製品「リアル造形のGMKゴジラとハム太郎のコラボフィギュア」=「GMKリアルゴジハムくん(名称仮)」の商品見本がお披露目された。この「GMKリアルゴジハムくん(名称仮)」には、ハム太郎がついていないゴジラのみの頭部も付属し、交換することも可能だという。『GMK』ならびに『ハム太郎』のファンの方、そしてゴジハムくんのファンの方は要注目の商品といえる。

沢辺氏と金子監督のトークイベントのもようは、翌週の19日に開催された京都会場(京都みなみ会館)でスクリーン上映も行われた。さらには、熱烈なゴジラ&特撮映画ファンとして有名なフリーアナウンサー・笠井信輔氏がステージに上り、緊急トークイベントを行ったことも特筆しておきたい。

今後もゴジラファン、ハム太郎ファンのリクエストがあれば、2001年以降のラインナップである『ゴジラ×メカゴジラ』&『劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムハムージャ! 幻のプリンセス』(2002年)、そして『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』&『劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムグランプリン オーロラ谷の奇跡 リボンちゃん危機一髪!』(2003年)の復活(同時)上映が実現するかもしれないという。最大のヒーロー「ゴジラ」と最小のヒーロー「ハム太郎」の、20年を経ての新たなるコラボレーションに期待が寄せられる。

なお、「ゴジハムくん」20周年記念の大型フィギュア(3色)が「ゴジラストアTokyo」「ゴジラストアOsaka」「ジーストア名古屋出張所」「淡路島ニジゲンノモリ」「TOHOシネマズ日比谷」「TOHOシネマズ新宿」「TOHOシネマズなんば」にて、数量限定販売される。ゴジハムくん公式Twitterでは、令和に復活したゴジハムくんの最新情報を発信している。

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