
(左から)パーソナリティの小山薫堂、佐藤修悦さん、宇賀なつみ
◆「勝手にやっちゃいました」修悦体誕生のきっかけ
1953年生まれ、岩手県出身の佐藤さん。2000年代前半、JR新宿駅の工事現場で警備員として勤務していた際、駅利用客が迷路のような構内で道に迷う姿を見かね、自らガムテープで案内表示を作り始めました。その独特な文字はインターネットや口コミ、メディアを通じて話題となり、いつしか「修悦体」と呼ばれるようになります。新宿駅、日暮里駅、下北沢駅などで親しまれてきた修悦体は、案内表示にとどまらず、映画の題字や広告、展覧会にまで広がっています。
宇賀は「そもそも警備員をやられていたときに、誰かに言われて作ったわけじゃないんですよね?」と質問します。すると佐藤さんは「そうですね。もう勝手にやっちゃいましたね」と笑います。「怒られるのを覚悟で、怒られたらガムテープを剥がせばいいやって感覚でした」と当時を振り返る一方、最終的には駅長や工事担当者から「佐藤君、これいいね」と声を掛けられ、「オッケーをもらった感じですね」と話しました。
工事中の新宿駅では、利用客から「トイレはどっちですか」「出口はどこですか」と道を尋ねられることが日常茶飯事だったそうです。そこでホーム番号や矢印をガムテープで作り始めた佐藤さんですが、現在の「修悦体」の特徴でもある丸みを帯びた文字にも理由がありました。
「新宿駅を使っているお客さんの顔を見ただけで、『この工事いつ終わるんだ』という不満があるのが分かりました。少しでも和らげたいと思って、そこから角を丸くし始めたんです」と佐藤さん。このエピソードに、小山は「皆さんの心に寄り添った結果のフォントって感じですね」と話します。
佐藤さんはデザインを専門的に学んだ経験はほとんどなく、高校時代に商業美術の授業でゴシック体を知った程度。それでも現場では定規や下書きを使うことなく、その場でガムテープを貼りながら文字を完成させていきました。
ときには、近くを通る利用客に「これ、まっすぐですか?」と声を掛け、位置を確認してもらうこともあったそうで、「お客さんも意外と教えてくれるんですよ」と笑います。
この日のために作成していただいた修悦体の「小山宇賀」
◆現在も現役警備員「依頼があれば作ります」
現在72歳になった佐藤さんですが、今も新宿駅で現役の警備員として働いています。小山が「今のお仕事は作家なんですか?」と聞くと、「いや、もう現役の警備員です」と回答。70歳で退職するつもりだったものの、会社から「定年が75歳に変わりました。辞めないでください」と引き留められたことも明かしました。
現在では「修悦体」は駅の案内表示だけでなく、映画の題字や広告、CDタイトル、企業ロゴなど幅広い分野で活用されています。
小山が「ナイキ新宿のストアロゴも作られたんですよね」と話を振ると、佐藤さんは「作ったのは『新宿』の文字だけ」と謙遜。依頼を受けた当初は「なんでナイキさんが?」と耳を疑ったそうですが、「新宿なら修悦さんでしょう」とデザイナーから声が掛かったことを知り、制作を引き受けたといいます。さらに、椎名林檎さんのCDタイトル制作も担当した経験があるものの、「本当にガムテープでいいのかな、と最後まで半信半疑だった」と率直な胸の内を明かしました。
しかし、「プロでも何でもないですから。声を掛けてもらえるだけでありがたい」と話し、子ども食堂の看板なども無償で制作しているといいます。「商売ではなく、見ている方に喜んでもらえる、あるいは何かの役に立つ。その思いだけが今でもガムテープ文字作りの原動力になっています」と話します。
最後に小山が「何歳ぐらいまで続けられるつもりですか?」と尋ねると、佐藤さんは「指先が動く限りは、また依頼があれば喜んで作ります」と笑顔で答えました。
<番組概要>
番組名:日本郵便 SUNDAY'S POST
放送日時:毎週日曜 15:00~15:50
パーソナリティ:小山薫堂、宇賀なつみ
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/post/
番組公式X:@sundayspost1