第43回アカデミー賞最優秀作品賞を含む主要3部門を獲得した映画『新聞記者』を藤井道人監督自らの手で新たに紡いだNetflixシリーズ『新聞記者』。進行形の政治問題やスキャンダルに真正面から切り込むチャレンジングな作品で、米倉涼子、綾野剛、横浜流星という実力派陣の共演がかなった。それぞれ新境地に挑んだ彼らだが、米倉は「お二人からたくさんのエネルギーをもらった」としみじみ。撮影を振り返りながら、3人がお互いから受けた刺激を明かした。

  • Netflixシリーズ『新聞記者』で共演した横浜流星、米倉涼子、綾野剛(左から) 撮影:蔦野裕

Netflix版はキャストを一新し、さらにスケールアップした全6話のドラマとして全世界に配信。権力の不正を追及する東都新聞社会部の記者・松田杏奈(米倉)が、事件を闇に埋もれさせないように必死で証言を集め、真相を追っていく物語で、理想を抱きつつも組織の論理に翻弄される若手官僚・村上真一を綾野、新聞配達をしながら大学に通う就活生・木下亮を横浜が演じ、映画版にはなかった視点から現代社会の問題を浮き彫りにしていく。

――リアリティを追求した作品でもありますが、役作りにおいてはどのようなリサーチをされたのでしょうか。

米倉:藤井監督と一緒に東京新聞さんを訪ねて、女性記者やベテラン記者の方にお話を伺いました。新聞社のフロアを回せていただき、どのように新聞ができ上がっていくのか、またどのような気持ちで記事を書いているのか、記事に注目してもらうためにどのように動いているのかなど、いろいろなお話を聞かせていただきました。

横浜:僕が演じた亮は、普通の若者であり、ある出来事をきかっけに環境が変化していく役どころです。演じる上では、もともと政治や社会にあまり興味がなかったけれど、どんどん知りたくなっていく……という亮と同じ気持ちになれたらと思っていました。また新聞配達に関しては、実際に作業されている場所に行って、折り込みのやり方や配達の仕方を教えていただきました。日常的に亮がやっていることとして表現できるように、新聞を持って帰って家でも折り込みの練習もしていました。

綾野:僕は役作りをする上では誰にもお会いしていません。官僚の方々にも、それぞれに向き合っている正義があるはずなので、村上を演じる際にも誰かの主観を入れるわけにはいきませんでした。松田さんや、亮さんの生きている姿を素直に受け取ること、そして台本に描かれている時間で村上を作り上げていこうと思いました。

――米倉さんは、藤井監督とは初タッグとなりました。藤井監督とのお仕事の印象を教えてください。

米倉:映画界にはこんなイケメンがいるんだなと思いました(笑)。初めてお会いしたときに、「思ったようにやってください」と言ってくださって。背が高いのに、腰が低い方だなって(笑)。

――現場での藤井監督はいかがでしたか?

米倉:いざ撮影に入ると、藤井監督はものすごく粘り強くて一歩も引かない(笑)。私は地上波のドラマを主戦場として活動をしていたので、映画のチームの方々にはほとんどお会いしたことがありません。だからこそ新しい世界に飛び込んだという印象も強く、撮影現場ではとても緊張していました。まだ勝手がわからない部分も多かったので、またぜひ藤井組でリベンジしたいなと思っています。

――綾野さんと横浜さんは、藤井監督とのお仕事を重ねられています。藤井組に参加する喜びとは、どのようなものでしょうか。

横浜:藤井監督から今回のお話をいただいたときに、「映画版では描ききれなかった部分を流星に託したい」と言っていただき、とてもうれしいことだなと感じました。同時にその思いに応えるためには相当な覚悟が必要だと思いましたが、藤井監督はいつも僕たちに寄り添ってくれて、いい作品をつくるためには一切の妥協をしない方。そういう藤井監督だからこそ身を任せられるし、いつも“自分も知らなかった自分”のようなものを引き出してもらえる。話していても感覚や考え方が似ているなと思うところも多く、僕にとって一緒にいると安心する方です。

綾野:藤井組に一貫して言えるのは、芝居だけに集中できる環境があるということだと思います。作品づくりの現場では分担することが大事ですが、そうでない事もあります。藤井組は、俳優部が芝居以外のことはすべて、各部署に任せてしまえるような器の広さがある。それは、藤井組にいるそれぞれが努力して作り上げた器に他なりません。藤井監督は各部署に対するリスペクト心や、分かち合うことをとても大事にしている方。藤井組は、そういった監督を中心に、各部署の尊厳を慮ることで進化しているんだなと感じています。