――チャレンジングな作品でお三方の共演がかないました。共演されて、お互いに刺激を受けた部分も大きかったでしょうか。

米倉:剛くんと流星くんからは、こうして見ているだけでもそれぞれのオーラとエネルギーがある方だということがわかりますよね。今回ご一緒させていただいて、俳優という仕事に対してものすごく真面目に向き合っているお二人だなと実感しました。剛くんとは、病室で会話をするシーンがとても印象的です。本作は『新聞記者』というタイトルではありますが、松田という新聞記者を通していろいろな人の正義や責任を視聴者の方にお届けする作品だと思っています。そういった意味では、病室での村上さんの姿を見たときに、彼がみんなの重荷を背負っているということがひしひしと伝わってきてとても心を打たれました。剛くんは今回身体づくりにも励んでいらっしゃって、本当にストイックだな! と。

綾野:病室のシーンは、僕もものすごくシビれました。刺激的な時間でしたね。

横浜:お二人の現場でのたたずまい、役への向き合い方などすべて、すごいなと感じる瞬間ばかりでした。一緒にお芝居をさせていただけることが幸せだなと、毎日喜びをかみ締めながら撮影していたのを覚えています。米倉さんはとてもフランクに現場を引っ張ってくれて、いつもいい雰囲気づくりをしてくださいました。亮が松田さんに会いに行き、彼女の信念や本音を聞く場面がありますが、そのときの松田さんの目からいろいろなものが伝わってきて、僕も感情を動かされました。また綾野さん演じる村上は、亮の大切な人を追い詰めた側の人間で、亮にとっては憎むべき立場の人。でも剛さん演じる村上の姿を見たときに、憎むべきなのかよくわからない気持ちになったんです。剛さんの村上には、そう思わせてくれるものが詰まっていた。作品への向き合い方や、役への入り込み方など、僕ももっと深く考えながら臨んでいくべきだなと刺激を受けました。

綾野:米倉さんには、もっと早く出会い、その背中を体感したかったと思いました。積み上げてこられたプロ意識が、きちんとご自身の中に存在している、もっと言えば纏われている。なにより今年またブロードウェイに挑戦されるというニュースを見たときに鳥肌が立ちました。とてつもないことをされている。僕にはまだ到底想像ができない世界観ですが、「もっともっと」と、ものすごく元気が出たんです。気持ちが溢れてきました。そういった意味でも、人を動かす力があるんです。一方で、僕は流星くんからもいつも心を動かされています。僕の言葉で彼に色をつけてもあまり意味がないと思いますが、流星くんは今、無色無属性にいろいろなカラーをまといながら七色になって発光をしようとしている。ここからさらに一緒に上がっていけたらと。

――本作自体も、見た後にもっと社会について知りたくなるような人の心を動かす力を持った作品だと感じます。みなさんは本作に参加したことで新たに発見したことや、気づきを得たことはありますか。

米倉:初めての藤井組で、初めてお会いする俳優さんもたくさんいらっしゃいました。「こうやってお芝居をしていくんだ」と刺激を受けることも多く、剛くん、流星くんからもたくさんのエネルギーをいただきました。今はまた新しい扉を開いていきたいという思いでいっぱいです。記者という仕事について取材をする中では、今を生きて、声なき声を届けようと頑張っている記者の皆さんがいることを知って。完成作を観ても、いろいろな思いを抱えて生きている人がいるんだと実感することもあり、私自身とても勉強になることが多かったんです。お二人とご一緒できたこともそうですが、本当に出会えてよかったなと思える作品になりました。

綾野:僕も、劇中で起きる出来事を自分の肉体を通して感じることで、たくさんの気づきがありました。米倉さんと流星くんを通して感じたことも多くありましたし、そこを目指して走っていたような撮影期間だったと思います。今回は肉体的な役作りもしていますが、それも松田さん、亮さん、村上の3人が顔を合わせるシーンに向けて作り上げていったもの。あのシーンから感じられるものを、視聴者の方々にもぜひ受け取ってもらえたらうれしいです。今回、米倉さん、流星くんと初めて共演をさせていただき、藤井組で新しい風を感じながら作品に臨むことができました。生きている限り前進と改めて感じさせてくれたように思います。

横浜:これまでは同世代との共演も多かったですが、本作で先輩方と一緒に作品をつくっていくという経験をさせていただいて、僕にとっては学ぶことばかりの撮影期間でした。また僕も亮と同じように政治や社会について興味、関心が薄いところがあったように思いますが、亮として生きることで、ニュースの見方や捉え方にも変化が起きたり、世の中に起きている出来事を他人事としてではなく、もっと自分のこととして考えられるようにもなりました。社会で生きている一人の人間としても、ものすごくいい時間を過ごすことができたなと感じています。

■米倉涼子
1975年8月1日生まれ。神奈川県出身。1993年モデルとしてデビュー。1999年に女優へ転身。近年はドラマ『35歳の高校生』(13年)、『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』(18年)などに出演。『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)は10年続く人気シリーズとなった。ミュージカルでも活躍しており、2008年に『CHICAGO』の日本版でミュージカルに初出演。2012年7月には『CHICAGO』でブロードウェイデビューを飾り、2017年、2019年と、3度ブロードウェイ主演を果たし、2022年4度目のブロードウェイ公演も決定している(東京凱旋公演は12月)。
■綾野剛
1982年1月26日生まれ、岐阜県出身。モデル、音楽活動を経て、2003年に『仮面ライダー555』(テレビ朝日系)にて俳優デビュー。2007年に映画『Life』で長編映画初主演を果たし、2009年、映画『クローズZERO II』に出演。2010年にドラマ『Mother』、2012年の連続テレビ小説『カーネーション』などで注目を集め、2013年、映画『横道世之介』『夏の終り』で第37回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。『そこのみにて光輝く』(14年)、『怒り』(16年)、『日本で一番悪い奴ら』(16年)など代表作も多数。藤井道人監督とは、映画『ヤクザと家族 The Family』(21年)、ドラマ『アバランチ』(21年)でタッグを組んでいる。
■横浜流星
1996年9月16日生まれ、神奈川県出身。直近の出演作に、主演映画『きみの瞳が問いかけている』(20年)、主演映画『DIVOC-12 「名もなき一篇・アンナ』、映画『あなたの番です 劇場版』、主演ドラマ『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』、ドラマ『私たちはどうかしている』(20年)、ドラマ『着飾る恋には理由があって』(21年)に出演。現在はTBS×ハリウッド共同制作日曜劇場ドラマ『DCU』に出演中。今後、主演映画『嘘喰い』が2月11日公開、映画『流浪の月』が5月公開予定、主演映画『アキラとあきら』の公開が8月26日控えている。