マーケティングの手法には、環境分析ができるもの、施策の構築に役立つものなど、さまざまなタイプがあります。自社のマーケティング課題を踏まえて、適切な手法を選ぶのが大切です。

今回は、広く知られているフレームワークを用いた分析の手法と、近年トレンドになっているマーケティング施策の手法について解説します。それぞれの分析の概要を把握し、どれが現状で役に立ちそうか考えてみてください。

  • マーケティングの手法にはどんな種類がある? 代表的な手法の概要やメリットを解説

環境分析・マーケティング戦略立案のための手法

会社の内部環境や外部環境を分析したり、事業のマーケティング戦略を立てたりするのに役立つ分析を紹介します。

1.3C分析

顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つのCに分けて外部環境・内部環境を分析する手法が3C分析です。

・顧客(市場):顧客のニーズやトレンドの変化を把握する
・競合:競合の商品やサービスがどの程度顧客に合っているのかを分析する
・自社:市場や顧客の変化から、自社がいかに対応するかを考え、成功するための要因を見出す

 分析して現状を把握するだけで終わるのではなく、最終的には自社が成功するための戦略を見出すのが目的です。3つのCは、顧客→競合→自社の順番で分析するのが良いでしょう。

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2.SWOT分析

事業の内部環境・外部環境を、以下4つの観点で分析する手法です。

・Strength(強み)
・Weakness(弱み)
・Opportunity(機会)
・Threat(脅威)

SWOT分析はシンプルで理解しやすいため、マーケティングの他にもさまざまな目的で利用されます。たとえば経営目標の設定、企業の抱える問題の洗い出し、社員個人の目標策定などです。

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3.PEST分析

外部のマクロ環境に特化して分析する手法が「PEST分析」です。下記のように4つの分野の頭文字を取って名付けられました。

・Politics(政治面)
・Economy(経済面)
・Society(社会面)
・Technology(技術面)

外部環境のトレンドを把握し、変化の可能性をいくつか事前に予測しておくことにより、環境の変化に素早く対応する術を見出します。

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4.ファイブフォース分析

著名なマイケル・ポーター氏による分析フレームワークです。市場には常に5つの力が働いており、パワーバランスを分析することで、影響力の大きいパワーを把握することを推奨する内容です。

1.敵対関係の強さ
2.売り手の交渉力
3.買い手の交渉力
4.新規参入の脅威
5.代替品の脅威

たとえば自動車業界は業界内企業の競争が激しく、新規参入・代替品の脅威が比較的弱いです。部品調達・工場建設・販売拠点確保など新規参入には巨額の投資が必要で、既存の自動車メーカー・車種が保有するブランド力も強いため、参入障壁も高いです。

今後の業界構造についても既存のメーカーが中心の地位をキープする状況がしばらく続くと思われますが、脱炭素(EV・水素)、AI(自動運転)などの先端技術・付加価値が重要になりつつあります。この分野の国際競争が、今後の業界構造を大きく左右するかもしれません。

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マーケティング施策の方針を立てるための分析手法

ターゲット顧客の設定、商品・サービスの訴求、価格設定など、具体的なマーケティング施策の策定に役立つ手法を2つ解説します。

1.STP分析

STP分析とは、細分化した市場の中からターゲットとする顧客を決定し、自社商品サービスの強み・売りなどの位置づけを行う分析です。この分析は以下3つの作業から成り立っています。

・Segmentation(細分化)
・Targeting(ターゲティング)
・Positioning(位置づけ)

セグメンテーションでは市場(ユーザー)をさまざまな切り口を組み合わせて細分化します。たとえば居住地区・性別・年齢・年収・TV視聴時間など。

次のターゲティングでは、自社商品・サービスのビジョン・付加価値・メッセージに該当するセグメントを選び出します。たとえば30代女性/正社員/年収400万円以上/一人暮らし/テレビを毎日2時間視聴といった具合です。

ターゲットとする顧客を決めたら、自社商品・サービスの立ち位置を明確に定義するポジショニングを行います。たとえばシャンプーなら、コスパ重視、香りの良さを訴求、天然成分をアピール、髪のまとまりを良くする、育毛をサポートするなど、さまざまな路線が考えられます。

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2.4P分析

マーケティングについてほとんど知らなくても、一度は聞いたことのある方も多いぐらいに有名なのが4Pモデルです。以下の4つの分野でマーケティングミックスを構成します。

・Product(製品):どのような特徴の製品か
・Price(価格):いくらに設定するか
・Place(流通):流通経路をどうするか
・Promotion(販促):どのように販促を行うか

4つのPを軸として、製品・サービスとターゲット顧客をうまく結びつけるための施策を考えていきます。ターゲットが複数パターンある場合、4Pもそれに応じて組み立てなくてはなりません。

すべての要素を100%理想どおりに実現するのは難しいので、力加減・バランス配分も大切です。

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近年のトレンドになっているマーケティング手法

ここからは近年盛んに利用されている手法について見ていきましょう。

1.コンテンツマーケティング

読者に価値ある情報を提供し、ニーズを育成して購買につなげ、最終的には愛用者として定着させることを目的としたWEBマーケティングの手法です。

「企業が伝えたい情報」ではなく「顧客が知りたいと思っている情報」を計算してコンテンツを制作するのが重要なポイントです。

2.SNSマーケティング

TwitterやInstagramなどのSNSを活用し、自社の認知度向上やファンの獲得を狙うマーケティングです。

消費者のSNS利用頻度が増し、SNSにおける口コミの広まりの影響度も増加していることからSNSマーケティングに取り組む企業も増えています。

3.インフルエンサーマーケティング

SNSマーケティングの一種で、ある分野で影響力を持つ「インフルエンサー」に協力してもらい、SNSで製品やサービスを紹介してもらう手法のことです。

インフルエンサーとはSNSで多くのフォロワーを獲得している人のことで、トップクラスだと100万人以上を獲得しているインフルエンサーもいます。

マーケティング手法の最新の傾向

今後さらに利用が広まると考えられる手法を紹介します。

1.AI・チャットボットの活用

顧客との接点でAIやチャットボットを活用する取り組みはさまざまな業界で広がっています。WEBにおいて問い合わせ・相談・申込みなどの段階でチャットボットを利用し、非対面のマーケティング手法の1つとして確立されつつあります。

コロナ渦で直接の接触機会が失われたことにより、このトレンドはさらに強まったと言えます。

2.動画利用の増加

コロナ渦以前より動画コンテンツは重要な手法とみなされていましたが、今後さらにこの傾向は加速すると予測されます。

たとえばイベント・発表会など対面式のマーケティングにおいて、動画を活用可能です。完全なオンラインイベントにすると、場所を借りる費用や人件費などを抑えられ、コスト面でもメリットがあります。

3.SDGsの活用

SDGsとは持続可能な開発目標であり、世界的な課題として認知度が上がっています。経済や社会、地球環境、人権など多岐にわたる17の目標が設定されています。

マーケティングでもSDGsに関する事例が、テレビCMやWEBメディアなどで徐々に増えている傾向です。またSDGsの取り組みが少ない企業とは取引を見直すという方針の企業も海外を中心に増える傾向にあり、企業の存続という観点からも重要なテーマです。


今回ご紹介したマーケティングの手法の大まかな流れは以下になります。

まず「3C分析」「SWOT分析」「PEST分析」「ファイブフォース分析」では、外部や自社事業(または商品・サービス)の強みなどの環境分析をします。

続いて「STP分析」「4P分析」によって、マーケティング施策の方針や展開を検討します。

そして「コンテンツマーケティング」「SNSマーケティング」「インフルエンサーマーケティング」「AI・チャットボット」「動画」「SDGs」といった、近年トレンドとなっている施策も考慮します。

それぞれの段階に応じて組み合わせたり振り返ったりして活用することで、最適なマーケティング施策が選択でき、事業やサービスの成長を促してくれるでしょう。