お金の話題になると出てくる資産運用という言葉。ただ、資産運用とはどういうものなのかと聞かれると、うまく答えられない方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では資産の定義や種類のほか、個人と会社での資産の違い、資産を増やす運用方法を解説します。

  • 資産と一口に言っても様々な種類が存在する

    資産と一口に言っても様々な種類が存在します

資産の定義と種類

お金を増やすには、資産運用が大事だといわれています。資産とは、企業や個人が所有しているのもののうち、お金に換えられる財産の総称です。例えば、預貯金や現金や不動産、有価証券のほか、お金に換えられる美術品、設備などはすべて資産に数えられます。

企業会計上の資産は、大きく流動資産と固定資産の2つに分けることができます。

■流動資産

流動資産は、読んで字のごとく「流れ動く資産」を意味し、1年以内に現金化できる資産のことです。流動資産はさらに、「当座資産」「棚卸資産」「その他流動資産」の3つに分けられます。

<当座資産>

当座資産は、現金、預貯金、受取手形、有価証券、売掛金など流動資産の中でも、ほかに比べて現金化しやすいもののことです。

<棚卸資産>

棚卸資産は、商品や製品、原材料など、企業が販売目的で一時的に保有しているもののことです。

<その他流動資産>

その他流動資産は、当座資産、棚卸資産のどちらにも入らない流動資産のことです。前渡金や前払金、未収収益、短期貸付金などがこちらにあたります。

■固定資産

固定資産は流動資産の反対で、現金化に時間のかかる、安定した状態にある資産のことです。固定資産は、「有形固定資産」「無形固定資産」「繰延資産」の3つに分けられます。

<有形固定資産>

有形固定資産は、固定資産のうち目に見えるものの総称です。例えば、下記のようなものがあります。

  • 建物…店舗や工場など
  • 機械装置…製品を作る生産ラインなど
  • 車両運搬具…自動車やフォークリフトなど
  • 構築物…土木設備など
  • 工具…検査や切削に用いる物
  • 器具・備品…パソコンや複合機など
  • 土地…工場やオフィス
  • リース資産…購入した場合と変わらないコストを負担するなど一定の条件を満たす物
  • 建設仮勘定…建設や製造のために前払いする代金

<無形固定資産>

無形固定資産は、固定資産のうち目に見えないものを指します。例えば、下記のようなものが挙げられます。

  • 営業権…M&Aにおいて、事業吸収される側の会社の目に見えない資産を評価したもの
  • 借地権…土地を借りる権利のこと
  • 商標権…自社独自の商品を区別するためのマーク(文字や記号)などの目印を独占できる権利のこと
  • 特許権…新規かつ高度な発明やアイデアを保護する権利のこと
  • 知的財産権…実用新案など、物品の形状や構造などの考案を保護する権利のこと
  • ソフトウェア…自社で使用する会計ソフトやプログラムなどのこと(販売するためのソフトウェアは、棚卸資産に該当します)

<繰延資産>

繰延資産は、企業または事業を営む個人が支出する費用のうち、その支出の効果が1年以上続くものを指します。会計上、繰延資産に分類されるのは下記の5つです。

  • 創立費…会社の設立登記を行う際の登録免許税、定款作成費など
  • 開業費…広告宣伝費やオフィスの家賃など、会社設立から実際の事業開始までにかかった費用
  • 社債発行費…社債を発行するためにかかった費用
  • 株式交付費…新株の発行は自己株式の処分などにかかった費用
  • 開発費…新技術の開発や新規市場の開拓にかかった費用

資産と財産と資本の違いとは

資産と意味が近い言葉としては、財産や資本があります。続いては、この3つの違いについて見ていきましょう。

■資産と財産の違い

資産と財産の違いは、資産が「お金に換えられるもの、金銭的な価値があるもの」を指すのに対し、財産は「金銭には換算できないけれど、資産を生み出す価値があるもの」も含む点です。

例えば、企業の伝統や社会的信用、ブランド力、ノウハウ、従業員の能力、取引先との信頼関係などは、目には見えないけれど企業の資産を生み出す価値があり、「会社の財産」ということができます。

この目に見えない企業の財産は、会計上は「のれん」と総称され、M&Aの際には、買収を行った企業が支払った金額から買収された企業の純資産の差額が、のれん代として計上されます。

また、会計上は、資産のことを「積極財産」、負債のことを「消極財産」とも表現します。

■資産と資本と違い

資本は、個人の場合は「利益を上げるために行う事業の元手になるお金」、企業の場合は「会社の運営の元になるお金」のことを指します。一方、資産は「個人や会社が持つ換金可能な財産全体」を指すものです。

例えば、会社の設立資金として500万円を用意し、さらに500万円を銀行から借り入れた場合、会社の資産は500万+500万円=1,000万円です。ただし、会計上ではお金がどこから入ってきたのかを記録するため、資本は設立資金の500万円、残りの500万円は銀行からの借入のため負債の扱いになります。 常に「資産=負債+資本(純資産)」という関係になっています。

個人の資産と会社の資産との違い

個人と会社では同じく資産と表現していますが、その内容は多少異なります。それぞれ、どのような内容を指しているのか見ていきましょう。

■個人の資産

個人の資産は、現金、預貯金、土地、家屋、車、有価証券のほか、期間満了や途中解約時に返戻金のある終身保険などの金融資産のことです。これらを金銭換算したときの合計額が、個人の資産総額になります。

■会社の資産

会社の資産は、事業を行ううえで必要な原材料の仕入れ、商品の生産、販売といった活動を常に行っているため、現金や預貯金、土地、有価証券などに加えて、流動資産や固定資産が含まれます。

  • 個人と会社で資産の考え方は異なる

    個人と会社で資産の考え方は異なる

個人が資産を増やす方法とは

個人の場合、資産は安定した将来の生活に直結するため、いかに資産を増やしていくかが重要です。 資産を増やすには、得た収入を貯めておく「預貯金」と、利益を得ることを目的に資本を投じる「投資」の2つの方法があります。

■預貯金

預貯金とは、銀行や信用金庫などにお金を預けることです。例えば、毎月の給与の中から一定額を預貯金に回せば、その分だけ資産は増えていきます。預貯金の場合、預金保険制度により万が一金融機関が破綻しても、1,000万円までは元本と利息が保護されますのでリスクは少ないでしょう。

ただし、銀行の金利は低いため、金利で資産を増加させるのは期待できません。

■投資

投資は、資産を運用してリターンを得ることで、資産を増やしていく方法です。「投資信託を購入して配当を得る」「不動産を購入して賃料収入を得る」「株式を購入して値が上がったところで売却することで値上がり益を得る」など、さまざまな方法があります。預貯金と違って元本保証はありませんので、投資はリスクを伴う反面、うまく運用できれば、効果的に資産を増やせる可能性があります。

主な資産運用の方法

資産運用の方法にはさまざまなものがありますが、それらの特徴はリターンとリスクの大きさで表されます。リターンとは、資産運用で得られる収益のこと。リスクとは、結果の不確実性のことです。

リスクとリターンは表裏一体の関係にあり、リターンが大きいものほどリスクも大きく、リターンが小さいものほどリスクは小さくなります。つまり、大きな収益を期待できるものは、その分不確実性も大きく、大きな損失が出る可能性も大きいということです。

■外貨預金

外貨預金は、海外の通貨である外貨で預金する資産運用方法です。海外の金利での運用となるため、多くの場合、円建てで定期預金を組むより高金利での運用が期待できます。預金なので、外貨ベースでは元本保証がありますが、為替変動の影響を受けるため、円ベースでは損失が出る可能性があります。

例えば、1ドル=100円のレートで1万米ドル分(100万円)を預金した場合、満期時にレートが1ドル=150円なら150万円、1ドル=75円なら75万円の価値として受け取り金額が計算されます(金利、手数料、税金の計算は省略)。

■投資信託

投資信託は、投資家から集めたお金をまとめて1つの大きな資金とし、投資の専門家が運用し、株式や債券などに投資している金融商品です。運用成果が投資額に応じて、各投資家に分配されます。

投資信託の主要な投資対象としては、債券投資を中心としたローリスク・ローリターンのもの、株式投資を中心としたハイリスク・ハイリターンのもの、市場指標に連動した動きをするインデックスファンドなど、さまざまなものがあります。

■株式投資

株式投資とは、企業が発行する株式を取得することで、配当金や値上がり益を得る資産運用方法のことです。株価は日々変動しており、銘柄によっては1日で20~30%も値上がりしたり、値下がりしたりすることもあります。そのため、ハイリスク・ハイリターンの金融商品になります。

■不動産投資

不動産投資は、不動産物件のオーナーになり、第三者に物件を貸し出すことで家賃収入を得たり、価値が上がったところで売却して値上がり益を得たりする、資産運用方法のことです。

不動産は安くても数百万円からのものがほとんどですので、初期投資の費用はかかりますが、条件のいい物件なら毎月安定した家賃収入が期待できます。ただし、物件選びや運営・管理には、それなりの準備が必要になります。

■外国為替証拠金取引(FX)

外国為替証拠金取引は、為替レートの変動を利用し、海外の通貨を売買して利益を得る資産運用方法のことです。外国為替を英語で「Foreign Exchange」と表すため、FXとも呼ばれています。

日本では、投資金額である証拠金の、最大25倍までの取引が可能です。少ない元手で大きなリターンを狙うことができますが、倍率を上げれば、当然相場が反対に動いたときは損失も大きくなります。

■先物取引

先物取引は、ある商品について、将来の決められた日に決められた価格で取引することを約束する取引です。外国為替証拠金取引と同じく、投資金額である証拠金の10倍以上の取引ができますので、少ない元手で大きなリターンを得られるチャンスがあります。

しかし、反対の値動きになった場合は大きな損失を被りますので、ハイリスク・ハイリターンな方法といえるでしょう。

  • 資産運用はリスクとリターンを見極めて実行する

    資産運用はリスクとリターンを見極めて実行する

リスクとリターンを理解した資産運用を心がけよう

資産とは、換金できる財産の総称で、個人の場合は預金や家・土地、車、保険金などを、会社の場合は流動資産、固定資産全般を指します。

個人が資産を増やす方法には、預貯金と投資の2種類があります。そのうち、投資にはリスクはありますが、上手に運用できれば着実に資産を増やしていけるでしょう。 投資の場合、金融商品ごとにさまざまな特性がありますので、リスクやリターンをよく確認して選んでみてください。