離婚をしたいと思ったときに、まず考えるべきは離婚後の生活です。特に50代で子どもを連れて離婚となると、自分の老後の生活費はもちろんですが、教育費も大きな問題です。ここでは、50代の女性がまだ独立していない子どもを連れて離婚する場合の離婚後のお金についてお伝えします。

  • 50代の子連れ離婚で考えるべきポイントは?

    50代の子連れ離婚で考えるべきポイントは?

離婚後の「生活費」を捻出できるか

2014年総務省「全国単身世帯収支実態調査」によると50代の働いている女性の1カ月あたりの収入は約20万円です。一方、支出は約19万円で、この支出には社会保険料や税金も含まれています。

この統計は、単身世帯を対象としているので、子どもにかかるお金は含まれていません。収入も住居費も住む地域などによって大きく異なるため、統計値を自分に当てはめることはできません。

しかし、毎月ギリギリの生活になるかもしれないことは想像できます。また、子連れとなると、養育費や貯蓄がないと非常に厳しい生活になることも想像できます。今一度、離婚後の生活費がいくらぐらいなのか考えてみましょう。

持ち家については、売却して住宅ローンを完済し残りのお金を分配する、1人が住み続け1人がお金をもらって出て行くなど様々なケースがあるようです。中には、人に貸して不動産収入を折半している人もいます。

しかし、いずれにしてもその家で住まないのであれば引っ越しすることになりますから、引っ越し費用が必要です。外食が増えたり、転校で制服が変わり買い替えたり、見えないお金がかかることも知っておきたいものです。

離婚後の「教育費」を捻出できるか

50代の子どもとなると高校生や大学生が多いことでしょう。最も教育費がかかる時期ですから、その教育費をどう支払っていくかは大きな課題です。特に大学費用は養育費をもらっていたとしても、容易に支出できる金額ではありません。自宅外通学だとなおさらです。

奨学金で教育費をまかなう

そこで検討したいのが奨学金です。2020年4月から給付型奨学金と入学金や授業料の減免がセットになった高等教育の修学支援制度がスタートしました。この制度は住民税非課税世帯とそれに準ずる家庭の学生を対象としており、利用するには家計条件と成績条件をクリアする必要があります。

家計条件の収入の目安は約270万円です。しかし270万円を超えたとしても約380万円までなら、段階的に支援を受けられます。しかし、年収はあくまでも目安であり、実際は住民税の課税標準額等で判断されます。支援対象かどうか日本学生支援機構の進学資金シミュレーターで調べられるので、一度試してみると良いでしょう。

ここで、注意点として学生本人がバイトで稼ぎすぎると住民税が課税され、所得判定に影響することです。目安の年収としては未成年なら約200万円、成年なら約100万円で、これを超えると住民税を課税されることがあります。バイトで学費を稼ぐことも考えるかもしれませんが、稼ぎすぎるのも要注意です。なお、養育費は所得に含みません。

修学支援制度の資産条件をチェック

次に資産条件です。生計維持者が1人の場合は、預貯金等の資産額が1,250万円未満、2人の場合は2,000万円未満である必要があります。生計維持者とは、父と母がいる場合は原則父母の2名です。しかし、離婚し学生本人は親権者である母と暮らしている場合、父から養育費が支払われていたとしても父は生計維持者ではありません。

ところが、親権のない母と同居し親権者である父と別居している場合、生計維持者は父母の2名となります。一緒に住んでいるから生計維持者になるとは限りませんので、この点も自分のケースはどうなのか事前に調べておいた方が安心です。

離婚後の年金生活も視野に

年金生活についても離婚前から考えておきましょう。会社員経験がないなど、厚生年金に加入経験がなければ、年金は老齢基礎年金のみで満額はひと月約6万5,000円です。会社員経験があったとしても勤めた期間が短いと、十分な年金額は期待できません。

見込み年金額を確認するには

まずは、自分の年金額を確認しましょう。50代になるとねんきん定期便に年金の見込み額が記載されています。この金額は、60歳まで今の年収と職業が続くと仮定して計算された金額です。少ないと思うのであれば、今後、厚生年金に加入して年収を上げていけば、増やすことができます。さらに60歳以降も働くことで年金を増やせます。夫という収入源を手放すのであれば、まずは自分の年金額を自分で増やすことを考えましょう。

年金分割とは

次に考えたいのが年金分割です。しかし年金分割に大きな期待をしない方が良いでしょう。なぜなら、分割対象となるのは厚生年金の記録だからです。厚生年金に加入経験がある場合老後の年金は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2種類ありますが、「老齢基礎年金」は分割対象にはなりません。したがって、国民年金しか加入したことがない自営業の夫の場合、分割対象の年金は存在しません。

年金分割には「3号分割」と「合意分割」があります。「3号分割」は2008年4月1日以降の婚姻期間が対象になります。自分自身が国民年金の第3号被保険者であった期間の相手の厚生年金の記録を半分に分けます。

「合意分割」は、婚姻期間中の厚生年金の記録を夫婦で分け合うものです。夫から妻に半分プレゼントされるわけではなく、夫と妻双方の厚生年金の記録を分け合います。厚生労働省の「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、3号分割を含む合意分割の年金の分割平均額は約3万円です。

年金分割後の金額を知りたい場合は、年金事務所に「年金分割のための情報提供請求書」を提出し、事前に情報収集しておきましょう。50代であれば分割した場合の年金見込み額を知ることができます。

離婚後の生活をしていけるだけの収入があるか

離婚後のお金についてお伝えしてきましたが、離婚をするなら支出に耐えられるだけの収入が必要になります。もし耐えられる収入がないのであれば、いくら貯蓄があっても貯蓄が底をつくのは時間の問題です。質素な生活で良いと思ってもやはりお金は必要です。自分と子どもが貧困生活に陥らないために、離婚後の生活と現実を考え慎重に離婚を考えてください。