阿部隆八段を矢倉で破る。次局も勝利すれば3年連続の王座戦挑戦者決定トーナメント進出

第68期王座戦二次予選(主催:日本経済新聞社)の▲阿部隆八段-△藤井聡太七段戦が3月16日に関西将棋会館で行われました。結果は藤井七段が100手で勝利。二次予選決勝に駒を進めています。

先に仕掛けたのは阿部八段。まだ30手にも満たない段階で5筋の歩を突き捨て、戦いを起こします。対する藤井七段は手にした歩を生かして8筋から反撃。さらには相手の歩切れを突いて、飛車で横歩をかすめ取る積極的な指し回しを見せました。

藤井七段が飛車を定位置の8二に引き揚げる間に、阿部八段は銀を繰り出していきます。このあたりは双方一手ごとに長考を繰り返す長考合戦に。方針を誤ると一気にバランスが崩れる難しい局面だけに慎重に手を進めていきました。

阿部八段が桂を跳ね、本格的な戦いが始まると一転、パタパタと手が進んでいきます。先ほどまでの長考で読み勝っていたのは、藤井七段だったようです。わずかに藤井七段有利で局面が進行していきます。

藤井七段は銀で桂を食いちぎり、その桂を打って阿部玉に迫ります。ここからは完全に藤井七段の攻め、阿部八段の受けという構図に。阿部八段は丁寧に受け続け、反撃のタイミングをうかがいました。

そして迎えた83手目、ここが本局の岐路となりました。藤井七段が銀を打ち、上部からの攻めを見せた局面。桂を1五に打って反撃するか、それとも自陣に打ってなおも耐えるか。局後の検討によると、ここが阿部八段の反撃のチャンスだったようです。阿部八段も局後に「第一感は▲1五桂でした」と語っています。

阿部八段は実戦ではここで攻めきれず、▲9八桂と受けてしまいました。ここからは藤井七段の華麗な寄せを見るばかり。パズルのような手順で飛車を動かして敵陣に成り込み、最後は中段玉を上下挟撃の形で仕留めました。

この勝利で藤井七段は王座戦二次予選の決勝に進出です。挑戦者決定トーナメント進出を懸けて谷川浩司九段-大橋貴洸六段戦の勝者と対戦します。次局への抱負を問われた藤井七段は、「決勝トーナメントに進めるよう頑張りたい」といつもながらの謙虚な姿勢を見せました。

また、本局の勝利で今年度の成績は47勝12敗(未放映のテレビ対局を除く)となり、3年連続の勝率8割超えへあと1勝としています。

2期前の王座戦ではベスト4に進出している藤井七段。写真はベスト4入りを決めた直後のもの
2期前の王座戦ではベスト4に進出している藤井七段。写真はベスト4入りを決めた直後のもの