負ければタイトル失冠の将棋を制してタイに戻す。広瀬章人八段は痛い逆転負け

将棋のタイトル戦、第69期大阪王将杯王将戦(主催:スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社)第6局が、3月13、14日に佐賀県「大幸園」で行われました。挑戦者の広瀬章人八段が3勝、渡辺明王将が2勝で迎えた本局は、108手で渡辺王将の勝利。成績を3勝3敗のタイに戻し、決着は最終局へと持ち越されました。

第4局までともに先手番を制するという、拮抗した展開となった本シリーズ。第5局で広瀬八段がついに後手番で勝利して均衡が崩れました。近年のタイトル戦は先手番勝率が高く、テニスのサービスゲームに例えられるほど。渡辺王将は、負ければタイトルを失う一局を後手番で迎えることになりました。

第6局はシリーズ3度目の角換わりとなり、広瀬八段が序盤早々に端の位を取る工夫を見せます。対する渡辺王将は位から遠ざかる右玉を採用。右玉は受ける展開になりやすく、攻めの棋風の渡辺王将としては珍しい戦型選択です。

先にリードを奪ったのは広瀬八段でした。駒損ながらも積極的な攻めで、後手玉を丸裸にします。自陣は低い玉形で安泰です。

しかし、渡辺王将は簡単には倒れません。相手の攻め駒の金に当てつつ、玉を補強する銀を打った後に、敵陣に銀を打ち込みます。さらに攻防の角を放ち、広瀬八段に楽をさせません。

終盤、広瀬八段が飛車取りと飛車成りを狙って厳しく迫った局面で、渡辺王将は悠然と角を活用します。これでは王手で飛車を成られてしまいますが、大丈夫なのでしょうか。

もちろん渡辺王将は対策を用意していました。竜の王手に対して、ノータイムの金合いが絶好手。竜と成銀取りの先手となる受けで、王手を防ぎつつ、手順に自らの飛車取りも解除する一石二鳥の一手です。やむなく広瀬八段は竜を三段目から二段目へと活用しますが、この瞬間、渡辺玉には詰めろがかかっていない状態になりました。

一手の余裕を得た渡辺王将は、角を軸にして電光石火の寄せをさく裂させます。詰めろ詰めろで広瀬玉に迫り、相手に反撃の隙を与えません。広瀬八段は自陣に金を連続して投入しますが、持ちこたえることができませんでした。最後は焦点への香捨てが突き刺さり、108手で渡辺王将が勝利を収めました。

局後の検討によると、渡辺王将が打った攻防の角に対する広瀬八段の受け方がまずかったようです。しかしながら、まずかったのは相手が渡辺王将だったからと言えるでしょう。突如出現した逆転への細い、細い道を一寸たりとも間違えずに進み切った渡辺王将が見事でした。

渡辺王将が苦しい将棋を逆転勝ちしたことで、これでこのシリーズはフルセットまでもつれ込みました。最終局の第7局は改めて振り駒が行われます。ここまで2局連続で後手番が勝利しているので、もはや先後は関係ないのかもしれません。注目の第7局は3月25、26日に新潟県佐渡市「佐渡グリーンホテルきらく」で行われます。

カド番をしのいで防衛まであと1勝とした渡辺王将(写真は第3局のもの)
カド番をしのいで防衛まであと1勝とした渡辺王将(写真は第3局のもの)