将来のためを思って中長期で手堅く資産を増やすには、リスクを抑えつつ如何に投資効率を高めるかが重要です。そんな投資方針を叶えてくれる投資信託を本記事で紹介しましょう。
今回紹介する投資信託
■グローバル3倍3分法ファンド/日興アセットマネジメント
大手証券会社やネット証券のほか地方銀行でも購入することができます。
■ウルトラバランス 世界株式/アストマックス投信投資顧問
2019年8月に運用が開始されたばかりのファンドでSBI証券やフィデリティ証券といったネット証券での取り扱いが主ですが、今後は3倍3分法と同じように取り扱い金融機関が増えていくでしょう。
投資信託の種類としてはどちらも「バランスファンド」に分類されます。国内や海外の株式に分散投資してリスクを抑えつつ、先物取引を使って投資効率を高めている特徴があります。グローバル3倍3分法の「3倍」が表しているのはまさに投資効率のことです。
「バランスファンド」としてリスクを抑えるための仕組みは他のファンドと同じ
まずはそれぞれのファンドの投資比率を見てみましょう。
グローバル3倍3分法ファンド(以下、「3倍3分法」)では、(1)株式、(2)国債、(3)REITの3種類の資産に投資しています。「3分」が表す3種類の資産ということです。またREITとは不動産に投資する投資信託のことです。
一方でウルトラバランス 世界株式(以下、「ウルトラバランス」)では(1)株式、(2)国債、(3)金(きん)の3種類の資産に投資しています。
どちらのファンドも国内外の株式と国債に投資することで、リスクを分散しています。株式の価値が上がると債券の価値が下がる「逆相関」の関係になる仕組みを使っています。
加えて、3倍3分法ではREITを組み入れることで、ウルトラバランスでは金を組み入れることで、さらに効果的な分散となるように工夫しています。
図1では株式、REIT、債券の3つの資産の投資をしています。投資している資産の合計が「300%」となっているのは先物取引を組み入れているからで、理由はこの後詳しく説明します。
「先物取引」は原資よりも大きな取引ができるので投資効率が高まる
投資効率が高まる核心を説明します。核心は、先物取引を上手く使っていることです。
先物取引は将来のある時点での取引をあらかじめ約束しておく取引のことで、「証拠金」という取引保証金のようなお金を用意して取引します。そして証拠金の何倍何十倍に相当する資産の取引ができるのが先物取引の特徴です。
例えば証拠金の10倍の取引ができる先物取引で、100万円を用意した場合には最大1,000万円相当の資産の取引ができることになります。このとき実際に取引している資産の数量のことを「建玉(たてぎょく)」といいます。
3倍3分法もウルトラバランスも、ファンドで集めたお金のうち約20%を先物取引の証拠金として使い、証拠金の約10倍の資産を運用しています。そのため以下の図のように、3倍3分法では集めたお金に対して「3倍」の資産を、ウルトラバランスでは約2.9倍の資産を運用していることになります。
図2では、ファンドで集めたお金の80%を株式とREITへ投資し、残り約20%を先物取引の証拠金にあてています。その証拠金を使って、日本、アメリカ、ドイツ、イギリス、オーストラリアの各国債の先物と日本の株式の先物に投資。その結果、資産の取引量が約10倍の220%になり、合計300%の資産配分になっています。
図3では、ファンドで集めたお金の80%を「世界各国の株式に投資するETF」へ投資し、残り約20%を先物取引の証拠金にあてています。その証拠金を使って、アメリカ、フランス、日本の各国債の先物とアメリカの金先物に投資。その結果資産の取引量が約10倍の210%になり、合計290%の資産配分になっています。
ところで少ないお金で多くの資産を運用すると、その分価値の変動幅が大きくなるためリスクが大きくなると思いませんか。そもそも先物取引はリスクが大きいものと理解している人もいるでしょう。
そこで3倍3分法もウルトラバランスも、先物取引にあてる資産の額を全体の約20%に抑えているわけです。しかも先物取引の対象は先進国の国債を中心にしています。先進国の国債は資産の中でも価格の振れ幅が小さいので、リスクに強いと言われています。そもそもリスクに強い資産に対しての運用を増幅しているので、先物取引の中ではリスクが小さいほうであるということです。
はじめに説明した「バランスファンド」としての逆相関の関係は、株式と国債先物との間でも成り立っています。相関係数の値のマイナスが大きいほど逆相関の関係にあります。シミュレーション結果では、2008年に起きたリーマン・ショックにより景気が後退したときも、国債先物は収益がでていました。
数十年単位で行う積み立て投資にも有効かも
先物取引の性質のうち「投資効率を高める」という部分を上手く活用したファンドは、手堅く利益を積み上げていく投資の理想形といえるかもしれません。リスクを抑えながら利益が上げられるので、積み立て投資にも有効といえるでしょう。
ほったらかし投資として「インデックスファンド」を積み立てている人は、これらのファンドも積み立ての対象に入れることで、また異なる視点でのリスクヘッジにすることができます。
冬のボーナスの投資先としてもぜひ検討してみてください。