「断捨離」という言葉が定着してどのくらい経つでしょうか。提唱した方の趣旨は別として、最初は単に「捨てる」の意味合いが強く受け取られていたように思います。しかし最近では、「選択して捨てる」から、「選択することによるライフスタイルの再確認」「生活スタイルの見直し」「生活スタイルの見直しによる家計の改善」などへと意識も変わってきました。

より「断捨離」の本質へと近づいていっていると言えるでしょう。断捨離の本質とはなにか、また断捨離がどのように資産形成につながるのかを、あらためて考えてみます。

  • 「断捨離」するとお金が貯まるは本当……?

    「断捨離」するとお金が貯まるは本当……?

断捨離は“将来”を考えないとできない

皆さんは、「断捨離」のようなことをしたことがありますか? 程度はいろいろあるでしょうが、一度は考えたり実行したりしたのではないでしょうか。たとえ些細なモノであっても、いざ処分するとなると、今後それが使うことがあるかどうかを真剣に考えるでしょう。

将来必要かどうかということは、今後自分がどのような暮らしを考えているかによって決まります。ちょっとしたものであれば、そう深く考える必要がないかもしれませんが、本格的な「断捨離」となると、真剣に先々のことを考えなければならず、自然と人生設計を立てざるを得ません。

まさにファイナンシャルプランニングの第一歩です。そして、人生設計を具体的に金額で数値化するのが生涯収支表(ライフプランニングシート)です。

人は数値化することによって、人生設計がより具体的になり、実行しやすくなります。夢を実現するための障害も事前にわかり、早くから対策を立てることができます。ファイナンシャルプランニングは生涯収支表に始まり生涯収支表に終わるといわれます。より良い資産形成も、適正な保険の選択も、投資における受け止められるリスクの度合いもすべて生涯収支表の中で判断できるのです。

つまり断捨離は、より良い資産形成と密接な関連があることになります。断捨離も人生設計も一朝にはできません。あれこれ試行錯誤をしていくうちに、自身の考えもまとまり、次第に形になっていくものです。

ファイナンシャルプランニングと断捨離

ファイナンシャルプランニングの基本の生涯収支表を作成する第一段階は「将来計画」。将来どのような生活がしたいかを明確にすることがまず必要となります。子供の教育や住まいの取得、趣味や生きがい、仕事の満足度、老後の生活など、様々な事柄に対して夢や希望があるでしょう。その夢や希望を実現すべく準備し、金銭的裏付けまでしっかり整合性を持たせるのが生涯収支表です。

当然、あれもこれもと希望すると家計はパンクするでしょう。優先順位をつけていかざるを得ません。また一度にいろいろ実現する余裕はなくても年数を少しずらせば、あきらめずに実現できることもあるかもしれません。何度か生涯収支表を手直ししていく間に人生設計は確固たるものになっていきます。

また、そうして人生設計を組み立てていると、少しのつまらない無駄が将来の夢の実現に大きな障害となっていることも実感できるようになります。今は些細な無駄でも積もり積もって先々の夢の障害になるのです。今少しの節約を実行すると、将来びっくりするくらい収支が改善します。

断捨離によってモノの審美眼が身につく

断捨離は単に捨てることではありません。優先順位をつけて、選択と切り捨てを判断することです。また、選択と切り捨てを判断していくうちに、自分にとって必要なモノが明らかになっていき、モノに対する審美眼も養われていきます。

そして折角モノを処分したのですから、二度と増やしたくないと考えるようになります。どうしても必要と思われるものは真剣にその必要度合いを考えるので、無駄もなくなっていくでしょう。自然と本当に必要なもの、長く使えるもの等を選ぶ習慣がついていくのです。

モノに支配されない自分の生活スタイルを自分自身でデザインする力がつけば、無駄な出費も少なくなるはずです。

収納の経済学

私は住宅メーカーに勤務していた時、毎年多くのお客様と接してきました。お客様の多くは建て替えユーザーで、すでにたくさんの家財を所有しています。そして、建て替えの大きな要因の一つは収納への不満なのです。

従って、納戸を熱望する方が大半でした。確かに季節ものをしまっておくスペースは必要です。しかし、「あふれる家財を目につかないところに隠しておきたい」、「捨てるのも大変なのでそっくり仕舞えるところがほしい」という心理も大いにあったのです。

例えば3畳の納戸の所有を検討しているとします。作業スペースを考えれば、実際に使いやすく収納できる部分はその半分程もありません。納戸は実質収納としては効率的ではないのです。スペースの割には収納量が大きくがありません。また奥にあるものは取り出しにくく、結果“死蔵”することになり、不用品をますます増やすだけなのです。

  • 「納戸」使用時の収納イメージ

また、たとえ納戸といえども、そのスペースにはそれ相応の建築費もかかります。ローンもその分余計に負担しなければならないでしょう。不用品を隠しておくために余分に支出するのは大いに問題だとは思いませんか。不用品を処分して、納戸をSOHOなどのオフィススペースにしてみたらどうでしょうか。在宅で働けば収入も確保できますし、資格試験の勉強スペースに充てれば、将来は収入アップも期待できます。収納スペースもタダではないのです。収納にもお金がかかるのです。

モノのを可視化して節約へ

今まで節約のレポートは色々ご紹介してきました。今回は少し視点を変えて、建築士ならではの節約方法をご紹介してみましょう。上記の納戸の話と関連しています。納戸は断捨離の大敵でもありますが、断捨離を機会に収納を可視化してみてください。より一層節約できるはずです。

収納は原則収納するものの奥行きだけあるものがベストです。扉を開ければ収納されているものが全部見えていて一目瞭然状態、つまり、奥に別のモノが収納されていない奥行きの浅い収納が使いやすいのです。場合によっては扉がない方が望ましいくらいです。

そうするといつもどこに何があるか目に入っているので、不要なものも目に付きやすくなり、無駄な買い物は極端に少なくなります。下図は廊下に設置した薄型収納のイメージ図です。

  • 薄型収納のイメージ※上図の凡例と比較ください

もう一つのポイントは、使う場所に収納するということです。キッチン関連はキッチンに収めて、決して他の場所に収納しないことが大切です。洗面脱衣室や他の部屋も同様です。パジャマや下着などは各人の個室にあるよりも脱衣室に収納されている方が格段に使いやすくなります。予備の洗剤などもそれぞれ使われる場所に保管しましょう。保管できない量は買わないことです。

少し具体的に考えてみましょう。最初にあまり悩まないモノから不用品を処分していきます。台所や洗面所などが良いでしょう。ある程度処分できたら、少し収納の余力ができるはずです。もし、他の部屋にキッチン関連のモノが収納されていたら、すべてキッチンに移します。

そうした後に収納しきれないものがあれば、再度処分の可否を判断すると同時に収納を工夫します。シンクや吊り戸棚は奥行きが深い収納のため活用方法のハウツー本も多く、ここでは省略します。

吊り戸棚やシンク下に収納されずにあふれがちなものは、大きく2タイプあります。炊飯器等の電源や奥行きを必要とする家電製品と食品のストックや小物です。この2つを分けて収納します。特に小物の収納は、雑多な隙間収納に収めるのではなく、可能であれば壁面いっぱい利用した薄型収納を工夫してみてください。高さのバリエーションだけでなく、奥行き19㎝の薄型で、巾1㎝からアレンジできる組み立て収納もあります。

狭いキッチンでは扉はない方が使いやすいでしょう。扉で隠しておきたいと考えるのは、上記の納戸の考え方の延長です。

断捨離上手と収納上手は節約上手にもなっていくでしょう。なお節約の方法については過去レポート「そのお金、ムダですよ - FPが教える家計の節約術」 も参照ください。