教育費や住宅取得などで、何かとお金がかかるのが30代、40代です。一方、まだ若くて給与が少なかったり、子供が小さくて夫婦どちらかしか働けないケースもあるでしょう。なかなか悩ましいのがこの年代です。

しかし働き盛りだからこそ、まだ若くてエネルギーにあふれている年代だからこそ、やり方によっては差がつくのもこの年代です。

では、同世代は貯蓄額はいくつなのでしょうか。また少しでも同世代より多くの貯蓄額を所有するにはどうしたらよいでしょうか。

  • 30代、40代の貯蓄額はいくら?

    30代、40代の貯蓄額はいくら?

年代別貯蓄額

年代別の貯蓄高はどのようになっているのでしょうか。日銀の外郭組織である金融広報中央委員会による「家計と金融に関する世論調査」平成30年度のデータを利用して、検証してみましょう。

統計値は多岐多様な範囲に及びますので、関連となる部分を編集しています。今回のテーマは30代と40代ですが、異なる年代の動向も参考になりますので、合わせて付記しています。また、家族構成や持ち家の有無、大都市圏のデータも、より実態を知るうえで参考になると思い一部取り上げています。

最初に貯蓄高の統計値を見てみましょう。平均値は30代で810万円、40代で1,238万円ですが、中央値はそれぞれ500万円、800万円となっています。中央値とは総数の1/2の地点の値です。平均値の場合は一部の富裕層の貯蓄高が全体に及ぼす影響が高く、実態とかけ離れてしまう欠点があります。

貯蓄が1,000万円の大台に乗るのは40代後半か50代前半のようです。住宅ローンを払いつつも、ようやく何年かをしのげる貯蓄を確保して、老後の蓄えをスタートできます。

全体の約1/5が非持ち家世帯となっていて、預貯金額は約600万円です。まだ若くて、住宅取得前の準備状態と推測されます。一方、全国平均と都市部の貯蓄高には差はありません。おそらく収入は都市部の方が多いとは思いますが、支出も多いのではないでしょうか。物価も高くやむを得ない側面もありますが、工夫次第で節約できる部分でもあるでしょう。

保有金融資産の種類

金融資産の内訳をみてみましょう。40代は30代と比較すると、株式以外は少しずつ増えています。50歳以上になると安全重視の預貯金が多くなります。あまりリスクを取れなくなる世代なのでしょう。

さらにNISAや個人型確定拠出年金(iDeCo)などの利用状況を見てみましょう。非課税ということもあり、年代ごとに伸び、特に積立形式のものは、その性格上着実に伸びていきます。安定して貯蓄額を増やすには、給与から引き落とされるものや毎月積み立てていくものが確実だとデータも証明しています。

1,000万円到達願望

では、現状の貯蓄額と比較して、どの程度の貯蓄額を各年代は目標としているのでしょうか。30代、40代の中央値はいずれも1,000万円です。すこしでも同世代より早く、1,000万円に到達すれば、それだけ次のステップに早く進めて老後の安心につながるはずです。

30、40代の貯蓄方法

下記の表はボーナス等の臨時収入を貯蓄に組み入れたパーセントを示したものです。臨時収入ありと回答している比率は約85%。その内、預貯金に組み入れた比率は30代で23%、40代で18%となっており、10%から20%を組み入れると回答した比率が最も多くなっています。

ボーナス等の臨時収入は、あくまで「臨時」なのです。本来生活設計は月々の収入で計画すべきであり、下表のように大半を生活に組み入れている現状は少々危険と言えるでしょう。従って貯蓄額を増やすスピードをアップするポイントはここにあると言えます。

これからの時代は共働きが一般的でしよう。総務省統計局が昨年発表した「平成29年就業構造基本調査」によると、30代の女性の就業率は73.4%、40代は76.3%となっています。独身も含まれますので、共働きの比率ではありませんが、今後も増えていくと思われます。

そうしたことを考えると、臨時収入の大半、夫婦どちらかの収入の大半を貯蓄に回せるはずなのです。過去に何回かご紹介もしましたが、私は20代からボーナスの端数(10万未満)を残してすべて貯蓄に回していました。端数は9万円以上ある場合も数千円の場合もあります。たとえわずかな金額でも日ごろはできない贅沢なレストランでの食事を楽しむなど、工夫次第でそれなりに楽しめます。

月々の給与でやりくりするということは、積立金融商品などの貯蓄も月々の給与から出費しなければなりませんし、旅行や家電製品の買い替えのために蓄えも必要です。残りが生活費となります。

貯蓄を増やすポイント

月々の給与だけで生活するためには、消費の見直しが不可欠です。しっかりした生活設計による消費生活の適正化は、金融商品の多少の利回りの良さ以上の効果があります。それにリスクもありません。周りの同世代よりも少しでも貯蓄額を多くしたいと考えるのであれば、それなりの努力は必要です。いくつか見直せる生活費を考えてみましょう。

・通信費の節約
もともと通信費などは家計の支出項目にはありませんでした。固定電話の普及で「長話をして電話代が大変なことに」というのも昔話になりました。最近では、私の周辺でも固定電話を解約するケースも珍しくなくなりました。

それぞれに利用形態も必要度合いも異なりますが、昔は必要でなかった出費であることも踏まえて、生活スタイルに合わせて工夫ください。

・食費の節約
食事は生きていくうえで大切な部分ですが、食費はかなり節約できる分野でもあります。コツは作り置きと、精神的豊かさの演出です。疲れて会社を出たとしても、家にすぐに食べられる作り置き惣菜があれば、つい外食に流れることが少なくなります。箸置きやランチョンマット、おしゃれなコースター、銘々盆などで食卓を演出したり、プランターで香味野菜などを育てて料理にあしらったりと、ゆったりとした気分で食事を楽しむように工夫すると、節約のストレスも和らぎます。

・光熱費の節約
東日本大震災で多くの地域が停電を余儀なくされました。我が家は幸いにして一度も停電になりませんでしたが、徹底的に節電しました。今も継続していますが、当時は驚くほど電気代が少なくなり、日ごろの浪費を大いに反省しました。

家族が一部屋で過ごせば光熱費はかなり節約できます。それぞれが個室でバラバラに照明やTV、オーディオやPC、スマホなどを使うと、光熱費は人数分増える計算になります。

・衣服等の節約
少し前の話ですが、若い女性が高価なブランドを所持するのは日本だけと言われていました。本来そうした高価なものは、巧成り名を遂げたそれなりの地位を得た方が持つもので、それを持ってホテルやレストランに入ると、それなりの額のチップを期待されます。実力がないのにブランドものを所持する若い日本人女性は、いくらか非難がましく見られていた時代もありました。

またヨーロッパの女性のワードローブに必要な量は日本人の1/3程度で済むと言います。良いものを長く使い、組み合わせで変化をつけるなどして、少ない衣類をやりくりしているそうです。最近は安い衣類が多く出回っていますが、若い頃に購入した、しっかりした洋服の方が何十年たっても、仕事の場でもいまだに現役で通用します。本稿を参考に不要なものを見直し、少しでも貯蓄に回すようにしましょう。