藤井七段が半世紀以上破られていない年度勝率記録[0.8545]を暫定的に上回る!「藤井七段以前」の2011年度にこの記録に挑んだ棋士、中村太地七段の戦いぶりを検証する。

1月24日、第32期竜王戦ランキング戦4組の藤井聡太七段―村田智弘六段戦が行われ、藤井七段が勝って2回戦に進出しました。

またこの勝利で今年度の勝敗を36勝6敗、勝率を[0.8571]とし、1967年度に中原誠十六世名人(当時五段)が樹立した年度勝率歴代1位の記録、47勝8敗の[0.8545]を一時的に上回りました。

年度勝率歴代2位の記録を持つ人気棋士・中村七段。1位には惜しくも2勝足りなかった

ここで「ストップ!」を掛けて対局を一切しなければ記録更新! となりますが、そういうわけにはいきません。トーナメントに勝てば次の対局が組まれますし、8戦全勝中の順位戦C級1組も2局残っています。結局、残りの対局もコツコツと勝っていくしかないのですが、記録更新には勝敗はもちろん、年度の境目に指される予定の対局が今年度になるか、来年度になるのか? というタイミングも関係してきます。

これまでに中原十六世名人の記録にもっとも迫った棋士は中村太地七段。2011年度、順位戦C級2組で10戦全勝などを含めた40勝7敗の好成績で勝率を[0.8511]とし、歴代2位の記録となりました。

NHKで日曜日に放映されている『将棋フォーカス』の司会を務めていますので、ご存じの方も多いことと思います。現在30歳で、昨年度は念願の初タイトル「王座」を獲得、また実力もさることながら好男子かつ美男子、スタイルも抜群(身長180cm!)ということで、女性にも大変人気の高い棋士です。

中村七段の2011年度全対局は画像の通り。

中村太地 2011年度全戦績

年度終盤に7連勝から1敗をはさんでの9連勝と怒涛の追い上げを見せましたが、中原十六世名人の記録を上回るにはわずか2勝足りませんでした。1月以降に組まれた対局は13局。棋戦の進行次第ではもう数局行われた可能性もあったかと思いますが、他の棋士のスケジュールなども関係してきますので、これは仕方がありません。

結果論ではありますが、4月の第42期新人王戦と翌年2月の第43期新人王戦で、いずれも奨励会三段に敗れたのが響いたようで、ここをクリアしていれば、たとえトーナメントの次戦で敗れたとしても42勝7敗[0.8571]で新記録となるところでした。

藤井七段は中村七段、中原十六世名人の記録を上回ることができるでしょうか。中村七段の記録を抜くには、今年度の残り対局を全勝した場合はもちろんOK。1敗した場合は5勝以上、2敗した場合は10勝以上の勝ち星を挙げる必要があります。中原十六世名人の記録は、1敗なら6勝以上、2敗なら12勝以上で更新できます。