購入したり借りたりした住まいが、何かしらのいわくつき物件であったら住み手にとっては大問題です。こうした事態はぜひとも避けたいものですが、どうすれば事前に知ることができるのでしょうか。売主や貸主が事前に説明する義務があるのか、自分でも調べる方法はあるのかなどをまとめてみましょう。

  • 事故物件

    「事故物件」とは入居者が死亡した物件(画像:マイナビニュース)

事故物件の定義

簡単に言えば、事件や事故、自殺、孤独死などにより入居者がその部屋で死亡した物件のことです。そうしたことに対する受け取り方は人それぞれですが、そうした自然でない状態で人が亡くなったところに住むとなると、心中穏やかではない方が多いかもしれません。

人は必ず寿命があり、死から逃れることはできません。自宅で寿命を迎える方もいれば、病院で余命宣告をされたので、最後は自宅でと考える方も少なくありません。そうしたケースで自宅で亡くなった時は事故物件とは言えないでしょう。線引きは一定ではないのです。

仕事がら不動産業者との付き合いも多く、不動産にかかわる仕事をしているメンバー間の勉強会などにも参加していますので、仲介を業務にしている方々の話を聞くこともありますが、長く仲介業務に携わっていると、多くの方が一度はそうした不審死の現場を経験しているのを聞いて驚きました。私たちが考えているよりも事故物件数は多いのかもしれません。

定義は明確ではありませんが、少なくとも直前に住んでいた方が通常ではない状態で亡くなったケースは「事故物件」と言えるようです。

「事故物件」を見分ける方法

不動産の仲介を行っている事故物件を見分ける方法はいくつかあります。どれも完全に把握することは難しいかもしれませんが、それでも事前に察知できるケースも多いのではないかと思います。少なくとも売主や貸主、不動産業者などにはざっくばらんに確認してみましょう。

事故物件の掲載サイトを確認する

全国の事故物件を掲載しているサイトがあります。不動産のプロの投資家も賃貸仲介業の不動産屋さんもこのサイトは一応みなさん確認しているようです。希望物件を検索してみるとよいでしょう。ただし、事故物件が必ず掲載されている保証はありません。定義があいまいなので、事故物件とも言えないものも掲載されているかもしれません。

チラシなどに「告知義務あり」と書かれている

告知義務がある事柄にはいろいろありますが、内容は記載されていませんので、この言葉が書かれていたら、内容を確認ください。

直接、売主や貸主、仲介業者などに事故物件でないことを確認する

不動産仲介業者によると、「告知義務あり」と書かれていた時だけでなく、心配な点は直接質問するのがベストだそうです。聞かれれば、正しく伝えなければならず、それが一番確実のようです。

売値や家賃が周辺の相場よりも安い

事故物件で通常より価格を安くしているケースも「告知義務あり」と書かれているはずです。告知義務がないような案件でも、多少問題があれば状況により、値下げしているかもしれません。事故物件でも気にしない方にとっては、割安で借りられたり購入したりできるチャンスでもあります。

売主、貸主、仲介業者には事前に告知する義務はあるのか

それではそうした物件を買ったり借りたりしてしまわないためにも売主、貸主、仲介業者には事前に告知する義務はあるのでしょうか。上記の「告知義務」とは具体的にどのような規定なのでしょうか。

「宅地建物取引業法」によると、第三十七条第一項十一に次のようにあります。事故物件は「建物の瑕疵」に当たります。

第三十七条 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買又は交換に関し、自ら当事者として契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方及び代理を依頼した者に、その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
十一 当該宅地若しくは建物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは、その内容

重要事項説明書で提示しなければならない事項とは?

上記第三十七条は書面による通知を規定していますが、住まいを借りたり買ったりするときには、事故物件の告知だけでなく、どのようなことを書面で取り決めなければならないかを知っておいた方がよいでしょう。通常「重要事項説明書」と言われるものに記載しなければならないことをまとめてみました。

対象物件に関する事項
1. 登記事項
2. 都市計画・建築基準法上の制約
3. 私道に関する負担に関する事項
4. 飲用水・電気・ガスの供給施設及び排水施設の整備状況
5. 宅地造成又は建物建築の工事完了時における形状、構造等
6. 建物状況調査の結果の概要(既存の建物のとき)
7. 建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存の状況(既存の建物のとき)
8. 当該宅地建物が造成宅地防災区域内か否か
9. 当該宅地建物が土砂災害警戒区域内か否か
10. 当該宅地建物が津波災害警戒区域内か否か
11. 石綿使用調査の内容
12. 耐震診断の内容
13. 住宅性能評価を受けた新築住宅である場合

※建物が区分所有の建物の場合は、下記の項目も追加されます。
一棟の建物又はその敷地に関する権利及びこれらの管理・使用に関する事項
(1)敷地に関する権利の種類及び内容
(2)共用部分に関する規約等の定め
(3)専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約等の定め
(4)専用使用権に関する規約等の定め
(5)所有者が負担すべき費用を特定の者にのみ減免する旨の規約等の定め
(6)計画修繕積立金等に関する事項
(7)通常の管理費用の額
(8)管理の委託先
(9)建物の維持修繕の実施状況の記録
(10)その他

取引条件に関する事項
1. 代金及び交換差金以外に授受される金額
2. 契約の解除に関する事項
3. 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
4. 手付金等の保全措置の概要(業者が自ら売主の場合)
5. 支払金又は預り金の保全措置の概要
6. 金銭の貸借のあっせん
7. 瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要
8. 割賦販売に係る事項

住まいは単なる「モノ」ではないところに難しさがあります。対象の住戸だけでなく、隣人や隣家の状況も関係します。そのために、万全を尽くしても完全ではないかもしれません。それでも、長年の経験で、居心地の良い住まいを手に入れるためにはエネルギーを惜しまないことが大切だと思っています。

■著者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。