内閣府によると、平成27年の初婚年齢は夫31.1歳、妻29.4歳だそうです。そろそろ住まいを取得する年齢である男性の35歳~39歳までの未婚率は35%で、女性は29.4%となっています。また50歳の未婚率は男性24.3%、女性は14.1%となっています。

住まいを取得するのに最適な30代前半の年齢での未婚率は高く、年齢からすると「おひとり様」の住宅取得は、今や普通のこととなりつつあります。親元住まいであれば、そろそろ親との同居もうっとうしく感じるころかもしれません。またアパート住まいであれば、資産形成から考えて家賃の無駄が気になる頃でしょう。周りの結婚している友人たちは次々住まいを手に入れている頃かもしれません。

「おひとり様」は何が違う?

昔から「一人口は食えないけど、二人口は食える」と言われてきました。これは共働きだと収入が二人分となり、生活が楽になるという意味ではありません。一人だと外食が多くなったり、何かと浪費しやすかったりするけど、家庭を管理している妻ができると貯金も増え、生活が安定するという意味です。

本来であれば、一人分の収入で消費は二人分なので生活は苦しくなるはずなのですが、それが実際は逆だというのです。「おひとり様」が家族持ちとどのような点が違うのかを突き詰めていくと、住まいに対する考え方も明確になるでしょう。

浪費が発生しやすい……上記のように、独身時代はなかなか貯金ができないというケースは結構多いのではないでしょうか。ただし心がけ次第では、むしろ多く貯金できるはずです。

収入源のダメージが大きい……働けなくなったり、何らかの理由で収入が少なくなったりした場合、カバーする配偶者がいなければ、一気に状況が悪化します。そのため、収入源対策が必要となります。

家族のサポートをお金でカバーしなければならない……家族の支えがないので、なんでもお金で解決しなければなりません。特に病気になったり、高齢になり介護の問題などが発生したりした時などの時のために、余分に貯金が必要です。

独身がゆえに余分に必要となるお金に対して、無駄を省き、ひたすら貯金に励むほかに、住まいが資産として、または将来生活費の削減に対して有利になるかどうかも重要ではないでしょうか。

賃貸と持ち家はどちらが有利か

実際に独身を前提としての条件を設定して考えてみましょう。

【設定条件】
35歳。現在の家賃8.5万。借り入れ予定額2000万円。30年返済。月々返済は約7.2万円。ほぼ全額ローンの前提。管理費及び修繕積立金の合計は約2万円。団体信用生命保険保険料+火災保険料0.8万円。固定資産税等1万円。

月々の差額は下記のようになり、65歳の時に新築時に2000万円相当の持ち家があるか、900万円の現金が余分に残るかの差となります。皆様はどちらが良いでしょうか。65歳でローンは完済しますので、それ以降は月々の費用は4万円程度ですが家賃は8.5万円のままです。もっと高くなっているかもしれません。900万円の現金は17年程度で差額分がなくなります。ただし、そのころはほぼ平均寿命に達します。

ローン返済7.2万円+管理費2万円+保険料0.8万円+固定資産税等1万円
-家賃相当分8.5万円=2.5万円
30年間の差額は2.5万円×12か月×30年=900万円

「賃貸か持ち家か」の議論は、今まで何度も話題に上り、何度も検証されてきました。収支だけを考えれば、ほとんど変わらないというのが、今までのおおよその結果です。問題は、やはり困ったときの対応力がどう違うかでしょう。

おひとり様こそ住宅購入!

ローンを支払っている最中に収入減になり、家賃の支払いやローンの返済に困ったときは、それぞれどのような対処方法があるでしょう。また65歳以降に病気になったり介護が必要になったりした場合は、どうでしょうか。

ローン返済中は「売却」するか「賃貸物件」にする方法があります。売却のケースを考えると、売却益でローンが完済でき、格安の賃貸住宅へ移れるか、売却益で安い中古マンションを購入できるかが問題となります。高く売ったり貸したりできる資産価値を維持できるマンションでない場合は、ローン負担があるだけに窮地に陥りかねません。貸す場合は最低限家賃で月々の返済額や管理費その他の費用をまかなえるかどうかがポイントです。

持ち家であれば、65歳を過ぎた時に病気等になった時でも、家があれば年金で管理費や治療費は賄えるのではないでしょうか。もちろんローンを完済していることが重要となります。入院費などが嵩んでも、貯金もある程度蓄えられているはずです。

一方賃貸のケースを考えてみると、あくまでも安い物件に住み替えを検討することになるでしょう。対策はあまり多くはありません。特に65歳を過ぎてトラブルに見舞われると、持ち家に対して著しく不利になります。

つまり重要なことは、生涯収支はどちらが有利であるかではなく、万一の場合にどちらが対応しやすいかなのです。「おひとり様」はお金に頼らざるを得ないことが多いです。特に身体が弱くなっていく65歳以降はなおさらです。そう考えると、現金と住まいのどちらが住まいの方が有利だと言わざるを得ません。

物件選びとマンションPER

独身者にとって住まいが資産として有効に活用できるかどうかは、その住まいの市場価値によります。万一の対応力がどれほどかが問題なのです。指標となるのが、「マンションPER」です。PER(Price to Earnings Ratio)とは金融用語で株価を1株当たりの利益で割った株価収益率のことです。株価の評価に利用されます。PERが低いほどその銘柄の株価は利益水準に比べて割安だと判断することができます。
※株価収益率(PER)=株価/1株当たりの利益

マンションPERとはこの考え方を利用して、1戸当たりの収益力を測る指標で、新築マンションの価格が、その周辺で貸されている分譲マンションの賃料の何年分に相当するかを示したものです。例えば4000万円の物件を貸した場合の家賃が月々15万円、年間180万円とすると……

4,000万円÷180万円≒22.2(マンションPER)

マンションPERはマンション市場調査会社・東京カンテイが考案し、数値を発表しています。2018年の平均は約24.5ほどだそうです。数値が低いほど、資金回収率が高いことを意味します。私自身が購入した時はそのような指標はありませんでしたが、購入前に物件の近所の不動産屋さんで市場調査をしました。賃貸にすれば家賃収入で楽にローンを返せておつりがくるとわかって大いに安心したものです。後々計算してみると、マンションPERはなんと13.3%でした。平均の半分近くになります。

自ら住む前提で「自分が住みたい」と思うエリアは、他の人も同様に考える確率が高いはずです。市場価値が高く、中古になっても「家賃が下がる」「中古物件の値下がり幅が大きい」「人気がなく空き家となる」などで、ローンが破たんするリスクのない物件であれば、「おひとり様」の住宅購入は大いに生涯設計を安定させると思います。

■著者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。