17作がそろった2018年の秋ドラマ。今回もドラマ解説者の木村隆志が、全作品の初回放送をウォッチ。俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視!」したガチンコでオススメ作品を探っていく。

別記事(「2018年秋ドラマの傾向分析! 「けもなれ」「大恋愛」“新旧対決”の行方」)において、2018年秋ドラマの主な傾向を[1]刑事ドラマ、仕事ドラマ、恋愛ドラマの三つ巴 [2]女性脚本家の対照的な挑戦の2つと分析。

おすすめドラマとして、『結婚相手は抽選で』(フジ系 土曜23時40分)、『昭和元禄落語心中』(NHK 金曜22時)、『忘却のサチコ』(テレビ東京系 金曜24時12分)、『僕らは奇跡でできている』(フジ系 火曜21時)、『ブラックスキャンダル』(日テレ系読売テレビ 木曜23時59分)の5本を選んだ。

本記事では、それらを含む全作品のショートレビューと、目安の採点(3点満点)を挙げていく。

『SUIT/スーツ』 月曜21時~ フジ系

織田裕二

織田裕二

出演者:織田裕二、中島裕翔、鈴木保奈美ほか
寸評:人気漫画と比べれば数の少ない原作ドラマを気にする必要はなく、存分にローカライズすればいいのだが、セリフや演出にアメリカ臭が漂うのが気になる。ただ物語には意外性があり、他の弁護士ドラマには負けていない。織田、鈴木、小手伸也の絡みは大人の笑いと色気十分。
採点:【脚本☆☆ 演出☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】

『ハラスメントゲーム』 月曜22時~ テレ東系

唐沢寿明

唐沢寿明

出演者:唐沢寿明、広瀬アリス、高嶋政宏ほか
寸評:ハラスメントという時流に沿うテーマに挑む姿勢が視聴者の共感を呼ぶ。「飄々とした凄腕男が悪を成敗する」時代劇テイストは熟練スタッフによるものであり、安定の品質保証。主要からゲストまでキャスティングに演技派をそろえる「ドラマBiz」らしさもうれしい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆☆ 期待度☆☆】

『僕らは奇跡でできている』 火曜21時~ フジ系

高橋一生

高橋一生

出演者:高橋一生、榮倉奈々、小林薫ほか
寸評:脚本・橋部敦子×カンテレのヒューマン作は鉄板。『僕シリーズ3部作』より哲学性を高めた脚本は、難解に見せて実はシンプルで心に染みる。主人公のカリスマ性や説明ゼリフに頼らず、視聴者の解釈に委ねる作風は、今や絶滅危惧種。視聴率に関係なく支持を集めてほしい。
採点:【脚本☆☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆☆】

『中学聖日記』 火曜22時~ TBS系

有村架純

有村架純

出演者:有村架純、岡田健史、町田啓太ほか
寸評:大人と中学生の恋、成人向け動画のようなタイトル、恋が芽生えにくそうなキャスト、田舎町の風景……プロデュースの迷走が「見る前から酷評」という悲劇を招いた。90年代にTBS自らが流行らせた作風でマッチポンプ的だが、演出の質は低くないだけに、もったいない。
採点:【脚本☆ 演出☆☆ キャスト☆ 期待度☆】

『獣になれない私たち』 水曜22時~ 日テレ系

新垣結衣

新垣結衣

出演者:新垣結衣、松田龍平、田中圭ほか
寸評:ハラスメントや暗い過去を詰め込んで、「現代のリアル」という筋書きに賛否。現代人は我慢せず避ける人も多く、「獣になれない」という設定がフィットするかは未知数か。シリアスを貫くなら『最高の離婚』『Woman』で坂元裕二が見せたようなシビアな会話劇が見たい。
採点:【脚本☆☆ 演出☆☆ キャスト☆☆ 期待度☆☆】