飛び抜けたヒットはないが粒ぞろい。今夏の連ドラは、視聴率・評判ともに、そんなスタートを切った。

初回の視聴率は、『遺留捜査』(テレビ朝日系)14.7%、『ハゲタカ』(テレビ朝日系)11.9%、『義母と娘のブルース』(TBS系)11.5%、『グッド・ドクター』(フジテレビ系)11.5%、『高嶺の花』(日本テレビ系)11.1%、『刑事7人』(テレビ朝日系)11.0%、『この世界の片隅に』(TBS系)10.9%、『絶対零度 ~未然犯罪潜入捜査~』(フジテレビ系)10.6%、『サバイバル・ウェディング』(日本テレビ系)10.4%の9作が2桁をマーク。

  • 遺留捜査

    『遺留捜査』(左から上川隆也、栗山千明)

プライムタイムのドラマで1桁は、『警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~』(テレビ東京系)8.8%、『チア☆ダン』(TBS系)8.5%、『健康で文化的な最低限度の生活』(関西テレビ・フジテレビ系)7.6%、『ゼロ 一獲千金ゲーム』(日本テレビ系)7.1%、『ラストチャンス 再生請負人』(テレビ東京系)6.1%(ビデオリサーチ、関東地区)の5作のみだった。

もちろん録画視聴やネット視聴の多い現状、視聴率はデータの1つにすぎず、ドラマの面白さとは別問題。夏ドラマで本当に質が高くて、今後期待できるのはどの作品なのか? 今期もドラマ解説者の木村隆志が、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコで、2018年夏ドラマ17作の傾向とおすすめ作品を挙げていく。

2018年夏ドラマの主な傾向は、[1]強力原作、続編、リメイクの手堅いラインナップ [2]若手俳優の抜てきラッシュ [3]テレ朝深夜に『おっさんずラブ』に次ぐ傑作か!? の3つ。

  • 義母と娘のブルース

    『義母と娘のブルース』(左から麻生祐未、竹野内豊、横溝菜帆、綾瀬はるか、佐藤健)

傾向[1] 強力原作、続編、リメイクの手堅いラインナップ

原作漫画とアニメ映画がヒットした『この世界の片隅に』、韓国でヒットしてアメリカでもドラマ化された『グッド・ドクター』、2007年のNHK版が国内外の各賞に輝いた『ハゲタカ』の3作は文句なしの強力原作。さらに、いずれも映像版のリメイクにあたる。

その他でも、小説では『サバイバル・ウェディング』、『dele』(テレビ朝日系)、『ラストチャンス 再生請負人』、『探偵が早すぎる』(読売テレビ・日本テレビ系)、『GIVER 復讐の贈与者』(テレビ東京系)。漫画では『健康で文化的な最低限度の生活』、『義母と娘のブルース』、『透明なゆりかご』(NHK)、『ゼロ 一獲千金ゲーム』、『ヒモメン』(テレビ朝日系)と、原作ありきの作品が多く、『チア☆ダン』も2017年公開の映画をモチーフにした作品であり、純然たるオリジナルではない。

さらに、『絶対零度』『刑事7人』『遺留捜査』『警視庁ゼロ係』は、いずれも人気シリーズの続編であり、オリジナルは『高嶺の花』だけと言っていいだろう。

これほど手堅い作品がそろったのは、やはり視聴率対策にほかならない。長期休暇やイベントで外出が増えるなど視聴習慣が安定しない時期だけに、確実にファンのいる作品をそろえることで、「視聴率2桁はクリアしたい」という思惑が見える。それが冒頭に書いた「飛び抜けたヒットはないが粒ぞろい」という状態につながったのではないか。

  • チア☆ダン

傾向[2] 若手俳優の抜てきラッシュ

いかにも夏ドラマらしい、もう1つの傾向は、主演に若手俳優が多いこと。

連ドラ初主演の清原果耶(16)と松本穂香(21)を筆頭に、山崎賢人(23)、土屋太鳳(23)、吉岡里帆(25)、波瑠(27)。深夜でも吉沢亮(24)、菅田将暉(25)、窪田正孝(29)、8月4日スタートの『いつかこの雨がやむ日まで』(フジテレビ系)でも渡辺麻友(24)が主演を務める。

その他でも、石原さとみ(31)、加藤シゲアキ(31)、綾瀬はるか(33)、山田孝之(34)と30代前半の主演が多く、やはり全体的に若さゆえのフレッシュさと勢いを感じさせる。

また、主演が若ければ、必然的に恋人、友人、同僚らの役を演じる俳優の年齢も若くなるもの。村上虹郎(21)、間宮祥太朗(25)など、近い将来プライムタイムの連ドラ主演を務めるであろう助演の成長ぶりも見どころの1つとなる。

特筆すべきは『チア☆ダン』。主演の土屋に加え、E-girlsの演技担当・石井杏奈(20)、朝ドラ『ひよっこ』で台頭した佐久間由衣(23)、名作『南くんの恋人』で4代目ちよみを演じた山本舞香(20)、女優業を本格派させた9頭身モデル・朝比奈彩(24)、子役時代からの出演が20作を超える大友花恋(18)、若手登竜門の『ポカリスエット』CMに出演する八木莉可子(17)、アーティストとしてブレイクしつつある足立佳奈(18)、朝ドラ『わろてんか』で主人公の妹を演じた堀田真由(20)、秋以降の出演作が次々に決まっていく福地桃子(20)、そして広瀬すず(20)と次代を担う主演女優候補がズラリそろった。

かつて学園ドラマは夏の定番だったが、2000年代以降は激減していただけに期待は大きい。山田孝之、森山未來、瑛太らが出演した『WATER BOYS』(フジテレビ系)、芳根京子、志尊淳、森川葵らが出演した『表参道高校合唱部!』(TBS系)、村上虹郎、新田真剣佑、北村匠海らが出演した『仰げば尊し』(TBS系)の系譜である“部活モノ”だけに、熱気と感動は鉄板だ。

  • チア☆ダン

    『チア☆ダン』(前列左から木下ほうか、阿川佐和子、オダギリジョー、土屋太鳳、石井杏奈、佐久間由衣、新木優子、後列左から清水尋也、志田彩良、箭内夢菜、朝比奈彩、山本舞香、大友花恋、伊原六花、足立佳奈)

傾向[3] テレ朝深夜に『おっさんずラブ』に次ぐ傑作か!?

視聴率を獲得する反面、ドラマフリークから「刑事・医療のシリーズばかり」「中高年向けで若者無視」と揶揄されがちなテレビ朝日が、そんな見方を払拭しつつある。前期最大の話題作となった『おっさんずラブ』に続いて、23時台の『dele』『ヒモメン』が注目を集めそうなのだ。

特に『dele』は、「デジタル遺品」という現代性の高いテーマ、山田孝之と菅田将暉のダブル主演、6人が渾身の脚本を持ち寄る体制など、類を見ない意欲作。山田兼司プロデューサーが「『面白いドラマを作る』ということを一直線に目指した、クリエイティブファーストの希有な企画」と胸を張るだけあり、クチコミで右肩上がりの評判を得ていくことが予想される。

一方、『ヒモメン』もB級のラブコメと侮ることなかれ。窪田正孝のヒモ男ぶりが注目されがちだが、社会派を匂わせるムードもチラリ。序盤は「楽して生きることに必死なあまり、楽していない」というムードだが、徐々に仕事、お金、パートナーシップを考えさせられるかもしれない。制作側が「働き方改革時代のニューヒーロー」と掲げているだけに期待していいだろう。

ただそれでも、「プライムタイムで『dele』『ヒモメン』を放送できないのか?」「いや、できるだろう。そのほうがもっと多くの人々に見てもらえるのに」という感があるのも事実。作品としては素晴らしくても、テレビ朝日の割り切ったスタンスは賛否両論か。

  • dele

    『dele』(左から菅田将暉、山田孝之)


これらの傾向を踏まえた今クールのおすすめは、「何を残すか」より「何を消すか?」という現代的なテーマにトライした「dele」。脚本・演出・演技、すべてにケチをつけようのないクオリティで、早くも名作誕生のムードが漂っている。

その他のおすすめは、『コウノドリ』(TBS系)を超える可能性を秘めた『透明なゆりかご』、4コマ漫画を見事に脚色した『義母と娘のブルース』、役と俳優の成長ドキュメントが楽しめる夏の定番『チア☆ダン』、滝藤賢一と広瀬アリスのキャラ演出が見事な『探偵が早すぎる』(日本テレビ系)。

「視聴率や先入観だけで判断して見ない」というのはもったいないだけに、TVerや各局のオンデマンドなどで、チェックしてみてはいかがだろうか。

■おすすめ5作
No.1 dele(テレビ朝日系 金曜23時15分)
No.2 透明なゆりかご(NHK 金曜22時)
No.3 義母と娘のブルース(TBS系 火曜22時)
No.4 チア☆ダン(TBS系 金曜22時)
No.5 探偵が早すぎる(日本テレビ系 木曜23時59分)

■著者プロフィール
木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。