ドワンゴとカラーが日本アニメーションの可能性を探るために進める共同企画「日本アニメ(ーター)見本市」の作品群を紹介する番組「日本アニメ(ーター)見本市-同トレス-」の第12回放送が、2月9日にニコニコ生放送にて放送された。

左から山田幸美(MC)、氷川竜介氏、荒牧伸志氏、松本勝氏、石井朋彦氏

番組には、2月6日に「日本アニメ(ーター)見本市」の公式サイトにて公開された第12弾作品『evangelion:Another Impact(Confidential)』の監督・メカニックデザインを務めた荒牧伸志氏とCGディレクターの松本勝氏、プロデューサーの石井朋彦氏が出演。本作は、「別の場所、別の時」で、決戦兵器として秘密裏に開発と実験が進められていた「Another No.=無号機」の暴走する様が描かれている。

本作の監督を務めたのは、フル3DCGアニメ『APPLESEED』(2004年)で世界中のクリエイターに大きな影響を与え、日本における3DCGアニメーションのトップランナーとして時代を切り開き、『EX MACHINA』(2007年)や『スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン』(2012年)、『キャプテンハーロック』(2013年)や最新作『APPLESEED ALPHA』(2014年)などを手がけてきた荒牧伸志氏。本作を制作したのは、石井氏から「何か一緒にやらないかと誘われた」のがきっかけだったという。

荒牧監督は「『パシフィック・リム』や『ゴジラ』など、日本のコンテンツがアメリカのハリウッドに行って、すごい形で戻ってくる。素晴らしいことだが、作り手として手放しで喜んでいていいのか」と感じており「日本の意地を見せたい」と思っていたという。荒牧監督と庵野氏は、20代の頃に庵野氏が関わっているアニメの仕事を庵野氏に手伝ってもらったこともある旧知の間柄であり、今回の"オフィシャル二次創作ムービー"とでも言うべき本作に、庵野監督が即GOサインを出したことを明かした。

スタジオジブリで『千と千尋の神隠し』(2001年)や『ハウルの動く城』(2004年)などでプロデューサー補を担当し、Production I.Gへ移籍した後は『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』(2008年)や『東のエデン』(2009年)などをプロデュースしてきた、スティーブンスティーブン取締役兼務の石井氏は、「庵野さんからも『エヴァンゲリオン』を好きにしていいという返事をもらいまして、じゃあもうやるしかないな」と本作制作の覚悟を決めたという。

全編を3DCGで制作された本作、「最初は1分半くらいのつもりで、地上に出て終わるつもりだったんです」と荒牧監督は考えていたようだが、「でもよく聞いてみると4分半くらいあるという(笑)」と裏話を明かした。「それからスタッフに声をかけました。エヴァンゲリオンの名前を出すと話が早くて(笑)」と、とんとん拍子で企画がまとまっていった模様。

『アップルシード』のブリアレオスも登場

今回、劇中のメインキャラクターとなる"Another Eva"のデザインを担当したのは、荒牧監督が絶大な信頼を寄せる竹内敦志氏。「盲目のエヴァ」をイメージし、原作を踏襲しながらも新しいもう一つのエヴァンゲリオンが生み出されている。そのデザインを見た庵野監督は、その絵を見ただけで竹内氏の仕事だとすぐにわかったという。

『evangelion:Another Impact(Confidential)』キービジュアル

「エヴァンゲリオンを立たせるとワクワクするんですよね」と荒牧監督はうれしそうに語り、「やっぱりエヴァンゲリオンってフォトジェニックなんだな」と実感。番組ではそのほかにも、モーションキャプチャを用いた制作の方法や絵コンテなど、本作のこだわりが語られた。

アニメ特撮研究家の氷川竜介氏が注目ポイントを紹介する「氷川の二度見」のコーナーでは、"浮遊粉塵"をテーマに講釈。氷川氏は「フレアやレンズ感があって、地上に出た後も立体的に粉塵が待っていて美しい。空気感や遠近感が出ています」と絶賛すると、松本氏はこの部分を非常にこだわっていたことを明かし、「この世界(CG)は綺麗すぎる。そこにいかにノイズをのせてリアルに見せるか。リアルだと逆にきれいな絵にするんですが」と、CGと実写の違いを説明した。

クリエイターのパーソナルな部分に迫る「クリエイターの法則」のコーナーでは、「あなたにとってアニメとは?」という話題になり、石井氏は「世界へのパスポート」と回答。「日本人が世界に出る唯一の手段がアニメだと思います」と語り、「今作を見た『パシフィック・リム』スタッフからも荒牧さんと一緒に仕事がしたいという声が届きました」ハリウッドでの活躍を期待させる裏話も。松本氏は「考えたことが無い」とフリップを出し、「子供の頃からあって当たり前のものだったので」と回答。荒牧監督は「魂」と一文字で回答し、「自分の魂の拠り所」であると補足。「心の真ん中に必ずアニメーションがあるという意識でCGアニメも作っている」と自身のアニメとの関係を語っていた。

3月上旬には第13弾作品『Kanon』が「日本アニメ(ーター)見本市」の公式サイトで公開。監督を務めた前田真宏氏と鶴巻和哉氏をゲストに招き、本企画セカンドシーズンの話や「日本アニメ(ーター)見本市OP募集企画の選考発表などを行う特別番組「日本アニメ(ーター)見本市-同トレス-」2ndシーズン開始特番が、動画サービス「ニコニコ生放送」にて3月9日22:00から生中継される。

■「日本アニメ(ーター)見本市-同トレス-」2ndシーズン開始特番
放送日時:3月9日22:00~23:00(予定)
出演者:前田真宏氏、鶴巻和哉氏、氷川竜介氏(アニメ特撮研究家)、山田幸美氏(MC)
番組URLはこちら

「日本アニメ(ーター)見本市」は、『新世紀ヱヴァンゲリオン』などで知られる庵野秀明監督が代表を務めるアニメ製作会社・スタジオカラーとニコニコ動画を運営するドワンゴが共同で行う短編映像シリーズ企画。若い才能に"挑戦の場"を提供するべく立案されたもので、さまざまなアニメーターたちが決められた予算と時間の中でオムニバスアニメーション作品を自由に創作し、毎週金曜日に1話ずつ公開していく。作品は公式サイトおよび公式スマートフォンアプリにて無料で視聴できる。

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