ユニチカは26日、主力の繊維事業の不振から、主力取引先に金融支援を要請した。往年の名門企業に何が起こったのか。そこに日本の繊維産業に起こっている変革が見える。

繊維産業は、明治維新後の日本を飛躍させた最初の花形産業であった。明治時代に生糸の輸出で貴重な外貨収入をもたらした群馬県の「富岡製糸場」は、6月にユネスコの世界遺産に登録される見通しだ。

今、東証一部に上場している繊維企業のほとんどが、繊維ではなく、非繊維事業で利益を稼いでいる。富岡製糸場を運営していた片倉工業は、かつて主力の蚕糸から撤退し、不動産・医薬を主力とする会社に生まれ変わった。多角化の成否が、存続と発展の鍵だ。

創業から手がけてきた繊維事業も、多角化の一環で手がけた非繊維事業も、どちらも不振で破綻したのが、かつての名門企業カネボウだ。ただ、非繊維事業の中で唯一利益の稼ぎ頭であった化粧品事業は、花王に吸収され存続している。

一方、東レ・旭化成・クラレは、繊維産業から出て、多角化で飛躍した代表企業だ。旭化成は高級住宅・化学品が稼ぎ頭で、東証一部の産業分類では、今は繊維産業ではなく化学産業に分類されるようになった。同じく、化学に分類が変わったクラレは、ポバール・エバールなど高機能樹脂の事業化に次々と成功して、成長してきた。

産業分類で繊維産業に留まって気を吐いているのが、東レだ。鉄より軽く、鉄より硬い炭素繊維で、世界トップの技術力を持つ。米ボーイング社の最新鋭機ボーイング787の機体に採用されているほか、将来は自動車への採用も期待される。海水の淡水化に不可欠な膜技術でも世界トップの技術を持つ。医薬・情報通信などにも幅広く展開している。将来、大きく成長する可能性を秘めた技術をたくさん保有する。

他にも、医薬・医療で稼ぐ帝人、エレクトロニクス・自動車部品で稼ぐ日清紡など、繊維産業にあって繊維以外で稼ぐ企業は数多い。

日本から繊維産業は消えてなくなるのか? いや、そうではない。天然繊維→合成繊維→高機能繊維・高機能プラスチック→応用製品と、形は変えてきているが、明治の日本を支えてきた技術の伝承・発展の延長線上に、今の繊維産業があるといえる。

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。