中国国営新華社通信によると、22日新疆ウイグル自治区で午前7時50分ごろ、朝市に車両2台が突っ込んで爆発し、少なくとも31人が死亡、94人が負傷した。中国政府はテロ事件と断定した。

ウイグル自治区には、歴史的に中央アジアとつながりが深いウイグル族が多数居住していて、一部に独立を目指す動きがある。近年中国国内で頻発するテロ事件は、ウイグル自治区の独立運動と関係があると考えられている。

中国内陸部には、中国からの独立を目指す民族が居住している。ウイグル自治区とチベットがその代表である。それぞれウイグル族・チベット族が多数居住しているが、近年、中国政府の積極的な入植政策によって、漢族の比率が増加している。今は、漢族の人口構成比がウイグル族・チベット族の構成比を上回るところまで増加している。

経済に限定した話をすると、中国にとってウイグル自治区はチベットより重要である。なぜならば、この地域にはタリム油田を始め、豊富な天然ガス・原油資源が存在するからである。資源不足に悩む中国は、この地域で開発した天然ガスを総延長4000キロのパイプラインで慢性的なエネルギー資源不足に悩む東部沿岸地帯まで移送している。このプロジェクトは、中国国内で「西気東輸」(西部のガスを東部に送る)と呼ばれ、中国経済に重要な役割を果たしている。

資源不足は中国経済にとってアキレス腱で、ウイグルには、まだ未開発の資源が大量に存在する。民族問題とどう折り合いをつけて資源開発を進めるのか、難しい舵取りが必要である。

(参考)新疆ウイグル自治区の地図

中国の隣には、豊富なガス・原油資源を持つ、ロシアが存在する。ロシアは中国本土周辺を回りこむようにパイプラインを敷設し、西シベリア産のガスをウラジオストックまで運んで、LNGに加工して日本をはじめとしたアジア諸国に輸出する計画を進めている。

中国は、本来ロシアから安価なガス・原油を大量に買い付ければ、エネルギー不足を簡単に解決できるはずだ。ロシアは、アメリカでシェールガスが豊富にとれるようになった影響で、ヨーロッパへのガス販売が減少しており、なんとしてもアジアへのガス販売を拡大したいところだ。中国は目と鼻の先の有望輸出先だ。

表面上、友好を保っている中ロ関係であるが、裏には長年にわたる領土問題の確執が残っている。中国はロシアに資源を頼りきることはできない。

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。