下諏訪温泉(長野県)

信玄のかくし湯は、良薬口に苦し?

下諏訪は諏訪大社のお膝元。大社の手水舍の龍の口からも温泉が湧き出ているのが象徴的だ。下諏訪温泉の源泉は20カ所あり、湧出量は毎分5,100リットル。大社秋宮から旧中山道沿いに温泉宿や公衆浴場が点在し、湯めぐりと散策を楽しめる。

山のほうへ足をのばせば、「毒沢鉱泉 神乃湯」という宿がある。「武田信玄のかくし湯」として知られ、信玄がけが人の治療に用いたと伝わる。一瞬ぎょっとする毒の文字は、人を寄せ付けないために付けたものだとか。

大自然の中にたたずむ神乃湯

お湯は自然湧出鉱泉中初の売薬許可を受けた、薬湯。鉄分を多く含んだ湯で、よく温まる。飲用では貧血や消化器官によく、入浴では神経病、筋肉痛などに効能が期待される。茶褐色の湯をたたえた湯船につかると、開け放した窓から山の眺めがよく、湯の香りと緑の風が入り交じって清々しい。

浴室には飲用鉱泉(冷泉)が湧き、ひしゃくにすくって飲むと、酸味と渋味、ほのかに甘みも。「飲みにくい味ですが、飲む人によって味が変わり、胃腸が悪いと受けつけられないようですね」と宿のご主人。

(左)神乃湯の風呂。茶褐色の湯に木々の緑が映りこむ。立ち寄り入浴可(上)飲用鉱泉は無色透明

まさに良薬口に苦しの鉱泉。飲用は無色透明だが、鉱泉の温度が2度と低いため入浴用は加温しており、空気に触れると茶褐色に変わる。毎日湯を見ているご主人は、湯の色は毎日違うという。次に訪れる時は、どんな色と味を楽しめるだろう?

毒沢鉱泉 神乃湯
長野県諏訪郡下諏訪町社7083
TEL:0266-27-5526 飲用:可