論文投稿件数が初めて1000件を突破
2026 VLSIシンポジウムの論文投稿件数は、前年比15%増の1041件となった。応募件数が1000件を超えたのは、初めてのことである。採択件数は237件で、採択率は22.8%と狭き門となった。前年の採択率は27.8%であったが、投稿件数の増加により採択率が5ポイント低下した。なお、Late News Paper(一般論文投稿締切後に投稿された緊急性のある内容の論文)としては、13件の投稿があったが、2件のみの採択となり、Late News Poster採択率は15%に留まっている。
最多投稿国は中国の336件、日本は51件
テクノロジー・サーキット分野合計の地域・国別投稿数トレンド、採択件数を見ると、全投稿件数のうちアジアからの件数は789件と全体の76%を占めてトップとなっている。もっとも投稿の多かった地域・国は中国で336件(前年は298件)、次いで韓国の226件(同174件)、北米169件(同161件)、台湾95件(同104件)、欧州90件(同87件)と続く。中国は2023年以降、投稿が急増しており、今年も前年比38件増となり、研究者の半導体に対する関心の高さと研究者の層の広がりを感じさせる。韓国も今年は前年比で52件増としており、中国と同様の増加傾向を示している。日本は51件で、前年の46件から微増としているが、日米共催のシンポジウムにしては寂しい数字だといえる。
採択件数トップは60件の韓国、採択率トップは日本
採択件数は、韓国が最多の60件、次いで北米55件、中国42件、欧州34件と続く。日本勢の採択件数は27件(テクノロジー分野14件、サーキット分野13件)で採択率は52.9%といつもながら最高であった。日本からは、伝統的に質の高い論文が投稿されているのだが、半導体教育・研究の全国展開を国家方針としている中国や韓国のような応募層の広がりは見られない。逆に中国の採択率は低いものの、中国から採択される論文の質は向上傾向にある。なお、採択率の地域・国別ランキングは、以下の通りとなっている。
- 日本(52.9%)
- 欧州(37.8%)
- 北米(32.5%)
- 韓国(26.5%)
- シンガポール(20.0%)
- 台湾(15.8%)
- 中国(11.5%)
- インド(0%)
テクノロジー・サーキット共通のジョイント・セッション
前回紹介しきれなかった、テクノロジー・サーキット共通のジョイント・セッションの紹介をしたい。
同シンポジウムのプログラムでは、テクノロジーとサーキットのトピックを統合し、両分野を横断する論文を紹介する6つの合同フォーカスセッションが設けられている。具体的には、以下の通りとなる。
- 新しいコンピューティングおよび量子コンピューティング 2.設計・技術協調最適化(DTCO)
- 先進的STCO(システム・設計・技術強調最適化)とAI/機械学習
- 高性能コンピューティング(HPC)向け接続技術
- 電力管理
- センサ・イメージャ・ディスプレイ
さらに、技術分野に特化したフォーカスセッションとして、以下の2つが設けられている。
- 先進3Dロジック
- 3Dメモリ(フラッシュおよびHBM)技術
パネル討論のテーマは「AI:壮大なビジョンか、それとも壮大な幻想か?」
シンポジウム2日目となる15日の夜に、テクノロジー・サーキット分野イブニング・ジョイント・パネルとして、「AI: Grand Vision or Grand Delusion?(AI:壮大なビジョンか、それとも壮大な幻想か?)」と題するパネル討論が行われる。米Rambus Labs シニアバイスプレジデントのGary Bronner氏と台湾大学 電気工学教授のVita Pi-Ho Hu氏がモデレータを務める。パネリストは以下の5名である。
- AMD シニアフェロー、Tom Burd氏
- Rapidus CTO 兼 シニアマネージングエグゼクティブオフィサー、石丸一成氏
- Real World Insights/ML Commons プレジデント 兼 創業者、David Kanter氏
- SK hynix シニアバイスプレジデント(メモリシステム研究)、Hoshik Kim氏
- Oxmiq Labs 創業者 兼 CEO、Raja Koduri氏
AI産業は現在、野心的なスケーリング目標が物理的・経済的限界と衝突する重要な転換点を迎えている。OpenAIが提唱する数兆ドル規模のAIインフラ投資は、データセンター、製造設備、エネルギー生成の大幅な拡張の必要性を浮き彫りにしていることがそれを物語っていると言える。
一方で、AIの収益化の牽引役として推論が期待されているものの、そのコストや2030年代には数百ギガワットに達する可能性が指摘されている電力需要など、現状の延長線上の事業としての実現可能性や効率性に疑問を投げかけられるようになっている。
そうした意味では、大規模言語モデルのための計算資源の拡張がAIの可能性をさらに切り開いていくのか、それとも「dot.AI」バブルのリスクを内包しているのかを慎重に見極める必要がある。今後もAIが進化を続けるためには、単なる規模拡大に留まらず、計算アプローチそのもののパラダイムシフトが求められる可能性があるのかどうか、現実的なビジョンなのか、壮大な幻想に終わるのか議論が繰り広げられる予定だという。
論文著者とインタラクティブな議論ができるデモセッション・レセプション
2017年から開催されているデモセッションは、2日目(15日)の夜に、今年も対面形式での開催が予定されている。参加者は、テクノロジーとサーキットの両セッションから厳選された論文著者とのインタラクティブな議論が可能である。15~20本程度のプレゼンテーションについて、デバイス特性、チップ動作結果、およびそれらのアプリケーション応用などを参加者の目の前で実演するほか、シンポジウム参加者の投票によりベストデモアワードも選出されることになっている。
ランチョン講演でニューロテクノロジーの研究状況を紹介
最終日となる18日の昼に開催されるランチョン講演は、フランスの国立研究機関CEA-LetiのMadjid Hihi氏による「Innovative Neurotechnologies – A Journey from the Lab to the Clinic and Back(革新的ニューロテクノロジー:研究室から臨床へ、そして再び研究へ)」が予定されている。
仏グルノーブルにあるCEA-Letiのバイオメディカルセンター「Clinatec」は、神経科学者、エンジニア、臨床医を結集するトランスレーショナル研究エコシステムの力を体現する施設で、運動機能障害を持つ患者に恩恵をもたらす長期臨床使用向けの無線皮質脳波計測システム「WIMAGINE」を開発したことが報告される。
すでにWIMAGINEと外骨格や脊髄刺激装置を組み合わせて運動機能の回復を実現する実証にも成功しており、2024年にはONWARD Medicalへの技術移転が行われている。将来的には、運動リハビリテーションシステムを用いた脳卒中後の神経リハビリテーションなどへの応用が期待されている。
第3回目となる次回は、テクノロジー分野の投稿・採択状況と注目論文を紹介する予定である。



