この半導体ニュースのまとめ
・ITF World 2026にてimec新CEOにインタビュー
・日本への研究所設置は現在も関係各方面と調整中
・ラピダスやLSTCとは緊密な連携で開発を支援
先端半導体研究機関imecの最高経営責任者(CEO)に2026年4月1日付で就任したばかりのパトリック・バンデナメーレ氏は、5月19~20日にベルギー・アントワープで開催された同社の年次イベント「ITF(imec Technology Forum) World 2026」に際し、著者とインタビューに応じる形で、imecの日本での活動に関して「日本に独自の研究所(分室)を設置する計画は、関係各方面と調整中であり、あきらめたわけではない」と述べ、日本への進出に意欲を見せた。以下、筆者と同氏とのインタビューをお届けしたい。
imec新CEOが語った日本地域での取り組み
筆者(以下、Q):Rapidus(ラピダス)は2022年12月に2nmプロセスによる半導体の量産化に向け、imecと技術協力に関する覚書(MOC)を締結しましたが、その後の協力関係の進捗は?
バンデナメーレ氏:ラピダスは2023年にimecのコアパートナープログラムに加わって以来、EUV露光技術を中心に協業を進めている。
ラピダス千歳工場の2nmプロセスラインが順調に立ち上がるように密接に協力している。ベルギーの本社キャンパスにラピダスのエンジニアが数名駐在して最先端技術の習得を進めてもらっており、今年さらに増員される見込みである。ラピダスの試みは、日本で先進的な製造業を復活させようという素晴らしい取り組みで、ぜひ成功してほしいと思っており、協力を惜しまず全面的に協力していく。
Q:最近、日本では技術研究組合 最先端半導体技術センター(LSTC)のプロジェクトにimecが参画する話が出ていますが、どうお考えでしょうか?
バンデナメーレ氏:LSTCが主導する国家プロジェクト(注:「光電融合を加速する半導体パッケージング技術開発と先端後工程拠点形成」)で、電子回路(EIC)と光集積回路(PIC)を組み合わせた「光エンジン」の開発をimecに再委託された。
とても興味深いテーマで、開発テーマのコアの部分で協業できることを楽しみにしている。
Q:以前、検討中であると発表されたimecの日本への研究所設置計画について、その後何も聞こえてきませんが、計画は中断されたのでしょうか? それともラピダスやLSTCとの協業のことを意味していたのでしょうか?
バンデナメーレ氏:日本に研究所を新設する計画は、日本側の関係者との間で調整に時間を要しており、決してあきらめたわけではない。もうしばらく時間が必要である。これは、今まで述べてきたラピダスやLSTCとの協業とはまったく別の計画である。
Q:ありがとうございました。
imecによる日本での研究所設置計画
imecの日本における研究拠点設置計画の経緯を振り返ってみよう。
imecが日本に研究所を設置する意向を示したのは、著者の知る限り、2022年12月にルーク・ファンデンホフCEO(当時)が京都にて明らかにしたのがはじめてであったと思う。その後、翌年の2023年5月1日に西村経済産業大臣(当時)がベルギーのimec本社訪問時に、同氏が「imecが日本に研究機関を設置する方向で検討を進めることで合意した」と発表している。
さらに同年5月18日に、岸田首相(当時)が米国、韓国、台湾、欧州の有力半導体企業トップ7人に日本への投資を呼びかけるために首相官邸でグローバル半導体トップ会談が開催した際に、imecはラピダスへの技術支援に注力することを説明するとともに、日本に研究所を設置する検討をしていることを説明した。
また、それに先立つ形で2023年5月にベルギーで開催されたimecの年次イベント「ITF World 2023」における記者会見にて、ファンデンホフCEO(当時)は、「日本研究所はまだ検討段階のため、設置を5月18日(の首相官邸への訪問時)に東京で発表することはない」と答えていた。
その後、2023年11月のITF Japan 2023の記者会見にて同氏は、「日本研究所の候補地としては、協業パートナーが多い東京や大阪などが候補になるだろう。ただし、最終的にどこに設置するか決定するのは時期尚早であり、検討を重ねていく必要がある」と答え、北海道の千歳市のオフィスは、あくまでもラピダス支援のための拠点であり、研究施設はそれとは別となるとの考えを示していた。
imecの関係者は当時、imecが日本に設置する予定の研究施設では、高齢化社会における課題解決に向け、日本国内で需要が見込める医療・ヘルスケアを中心としたライフサイエンスへの半導体技術の応用や日本が高いシェアを持つ自動車分野の半導体、AIのロボットへの応用に関する研究などを日本企業や大学と密接に連携しながら進める可能性があると話していた。
その後は、3年近くimecの日本研究所設置計画に関する動きはまったく外部に伝わってきていない。ルーク・ファンデンホフ前CEOもパトリック・バンデナメーレ新CEOも関係機関との間で調整に時間を要していると述べるにとどめている。
実は、10年ほど前に、経済産業省傘下のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、半導体研究振興のために、産業総合研究所とimecの共同研究所をつくば市に設置する計画を画策したが、経済産業省からimecへ支給する補助金の額で折り合いがつかず、計画がとん挫したことがあった。
なお、imecは、すでに世界各地に研究開発拠点を展開しており、グローバルでの存在感を高めている。日本では、大阪大学吹田キャンパス産業科学研究所内に大阪大学とimecの包括共同研究契約に基づく共同オフィスがあるほか、北海道大学とも連携を進めるなど、日本を含め、世界中で共同研究を拡大させている。

