この半導体ニュースのまとめ
・イーディーピーが2インチダイヤモンドウェハ用モザイク結晶の開発に成功
・単結晶接合時の応力問題を解決し大型化に前進
・2026年度下期の量産体制整備を視野、4インチ化に向けた検討も開始
イーディーピー(EDP)は5月27日、ダイヤモンド半導体デバイス向け2インチウェハ製造に向け、モザイク結晶の開発に成功したと発表した。ダイヤモンド単結晶の大型化が難しいという課題に対し、複数の単結晶を接合する方式で対応したもので、ウェハ実用化に向けた重要なステップとなる。
ダイヤモンド半導体で課題となる「大型結晶化」
ダイヤモンドは優れた熱伝導性や絶縁破壊特性を持ち、次世代パワー半導体材料として期待されている。特に損失低減効果の観点から、省エネルギー用途でのポテンシャルが高いとされる。
一方で、マイクロ波プラズマCVD法を用いたダイヤモンドの単結晶成長では大型化が難しく、実用的なウェハサイズの実現が障壁となってきた。半導体の製造では円盤の形をしたウェハを前提とした製造プロセスが確立されていることもあり、実際にダイヤモンド半導体を量産しようと思うと、それに対応できるだけのサイズが不可欠となる。現実的な製造装置が存在する最低サイズとしては2インチ(直径50mm)であり、まずは2インチウェハの実現に向けて同社では研究開発を進めてきたという。
モザイク結晶で「2インチ化」を実現
同社はこの大型化が難しいという課題に対し、複数の単結晶を横方向に接続するモザイク構造を採用し、大面積化を進める方針を採用。今回開発した結晶は約53mm角のサイズで、25mm級の単結晶を4個接合することで構成されている。
開発で最大の課題となっていたのは、結晶接合時に粒界付近で発生する応力により、結晶の割れや亀裂が発生する問題であったという。
小型結晶では顕在化しなかったこの問題は、大面積化に伴い顕著となっていたが、今回これを克服したことで、2インチウェハ用モザイク結晶の実現に至ったとする。また、大面積結晶の研磨技術についても改良を行い、ほぼ全面で面粗さ約5nmレベルの平滑性を確保したことで、親結晶として使用できることを確認したともしている。
年内に2インチウェハ量産体制を整備
開発された結晶から直径50mmの円盤を切り出すことで、2インチウェハとして利用することが期待できるようになる。同社はすでに量産に向けたプロセスを確立しており、イオン注入による複製技術を活用することで、2インチウェハ作製のための子結晶の製作を進めるとするほか、レーザー加工により2インチウェハ化を進める計画としている。同社によれば、これらの工程はすでに多数の基板やウェハ製作において実績があるため、スムーズに実用化ができると考えられるとしている。
このため、親結晶をまずは多数製作し、量産を開始。その準備が順調に進めば、2026年度下期にも量産体制を整える見通しだという。
一方で課題となるのは研磨工程で、2インチでは1インチと比較して約10倍の加工時間を要する点が挙げられる。今後は装置の大型化などによる効率改善が必要としており、そうした装置開発については、今後検討する資金調達を通じて実現を図っていくとする。
4インチ化に向けた開発にも挑戦
同社は今後、4インチウェハの実現に向けた開発を進める方針だ。そのためには、さらに大型の単結晶を用いたモザイク構造の確立が必要となることから、まずは50mm×50mm以上の単結晶を開発し、それを活用して100mm×100mm以上のモザイク結晶の製作を目指すとする。
また、モザイクウェハの開発がうまくいかない場合のリスク管理として、単結晶のさらなる面積拡大やダイヤモンド以外のウェハにダイヤモンドの小型基板を貼り付ける「貼り合わせウェハ」技術などについても検討を進めるとしており、技術的リスク分散を図る。
ダイヤモンド半導体は「次世代電力基盤」へ
パワー半導体分野ではSiCやGaNが次世代半導体としてすでに市場を形成しているが、さらなる高耐圧・低損失が求められる領域ではダイヤモンドが有力候補の1つとされる。
今回の2インチ化に向けた研究開発は、こうした次世代材料の実用化に向けた基盤整備の一環であり、単なる素材開発から実際のデバイス製造プロセスへの移行を示す動きといえる。
ウェハサイズの拡大は半導体産業においてコスト低減と量産化の前提となる要素であり、今回、2インチウェハの実現に向けた道筋が示されたことは、ダイヤモンド半導体が研究段階から実用化フェーズへ進む転換点となる可能性がある。
