連ドラは90年代あたりから近年まで、その多くを一部の脚本家が担ってきた。

トップシーンを走り続ける脚本家をあげていくと、野島伸司、岡田惠和、遊川和彦、大石静、井上由美子、北川悦吏子、坂元裕二、福田靖、中園ミホ、浅野妙子、橋部敦子、森下佳子、大森美香、宮藤官九郎、八津弘幸、古沢良太、黒岩勉、野木亜希子あたりだが、その年齢は50~70代。地上波連ドラは60歳前後の脚本家がメインであり、高齢化が叫ばれ続けながらも、新人発掘のコンクールに消極的な局が多く、育成を怠り、一部の人材に頼ってきた歴史がある。

そのため本来、中心を担うべき30~40代の脚本家が少なく、1クールを任せられるベテランとの実力差も指摘されていた。そんなベテラン脚本家頼みの状況が続いていたが、このところそれも難しくなっている。

その主な理由は、「これまで地上波の連ドラを支えてきたベテランが配信ドラマ、映画、舞台、アニメなどの割合を増やしている」「ベテランの中に、今なお視聴率獲得優先を求められ、表現の幅がせまくなり、ネット上で理不尽に叩かれるなど地上波への不満がある」「ベテランがかつてのようにヒット作を手がけられなくなった」「プロデューサーの若返りがあり、やりやすさから世代の近い脚本家を選ぼうとしている」。

また、もう1つ背景として忘れてはいけないのは、ここにきて各局が脚本家の発掘・育成プロジェクトに力を入れていること。これまで新人コンクールに力を入れてきたフジの『フジテレビ ヤングシナリオ大賞』、それに次ぐテレ朝の『テレビ朝日新人シナリオ大賞』だけでなく、TBSが『TBS NEXT WRITERS CHALLENGE』、日テレが『日テレシナリオライターコンテスト』を立ち上げた。

枠が増え、高まる即戦力のニーズ

ただ、TBSと日テレは海外で主流の“ライターズルーム”と呼ばれるグループでの脚本制作を掲げるなど、脚本家の発掘・育成には時間がかかる。また、フジが発掘して『silent』『海のはじまり』などを手がけた生方美久のような新人はめったに現れない。

一方、20年代に入って配信ビジネスを進めていく上でドラマの重要性が高まっている。国内外での配信、映画、アニメ、ゲーム、イベント、グッズなどにおけるIP(知的財産)ビジネスを進める上でドラマの重要性が増し、作品数が増えているにもかかわらず、スキルのある脚本家が足りていない。

その点、舞台や映画で脚本を担ってきた人材は即戦力になり得る。もちろん地上波の連ドラと舞台や映画では、脚本のルールやセオリー、ヒットのポイントなどが異なるだけに、脚本家にはアジャストしてもらわなければいけない。つまりプロデューサーにとって労力のかかる仕事なのだが、今冬の3作はしっかり寄り添って3人の良さを引き出しているのではないか。

詩森、金沢、バカリズムの脚本作品は、連ドラが本業の脚本家ではないからこその魅力であふれている上に、一定以上の結果も出ているだけに、今後も同様の発掘は見られるだろう。

いかに新人発掘のコンクールと受賞者の育成を続けながら、舞台や映画などの世界から実力者を引っ張ってこられるか。その両輪がうまく機能すれば地上波連ドラの未来は決して暗くないように見える。