また、象徴的だったのが、年末の超人気コンテンツ特番化と、年始のスペシャルドラマ量産。
まず年末は、25日の『M-1ネクストデイ~王者誕生までの舞台裏~』(ABC制作・テレ朝)、30日の『箱根駅伝 伝説のシーン表と裏』(日テレ)、31日の『WBC2023 ザ・ファイナル』(TBS)を放送。「最高峰のテレビコンテンツであるM-1、箱根駅伝、WBCでもう1つ特番を作ろう」という制作費と視聴率を踏まえた現実的な戦略が見られた。
一方で年始は、1日の『相棒 season22 元日スペシャル』(テレ朝)、2日の『義母と娘のブルースFINAL2024年謹賀新年スペシャル』(TBS)、3日の『侵入者たちの晩餐』(日テレ)、『松本清張 二夜連続ドラマプレミアム 第一夜「顔」』(テレ朝)、4日の『松本清張 二夜連続ドラマプレミアム 第二夜「ガラスの城」』(テレ朝)と5作のスペシャルドラマを放送。
さらに、3日に『Dr.コトー診療所』(フジ)、6日に『イチケイのカラス』(フジ)と“ドラマの劇場版が地上波初放送”された。いずれもネット上の評判は上々だったことを含め、「ここ2年弱、連ドラの放送枠が増え続けている」という勢いが年始に及んでいるのかもしれない。
年始の「初笑い」ではフジが奮闘
最後にもう1つ挙げておきたいのは、年始を問わず、音楽系特番の存在感が増していること。
12月は序盤から各局が大型音楽特番を競い合うように放送しているが、最終週にも26日の『発表!今年イチバン聴いた歌 年間ミュージックアワード2023』(日テレ)、28日の『オールスター合唱バトル 年末3時間SP』(フジ)、30日の『熱唱!ミリオンシンガー 奇跡の神声トップ50SP』(日テレ)が放送され、もちろん『レコ大』も『紅白』もあった。
年始にも4日の『新ドラマ俳優対抗 クイズドレミファドン!』(フジ)、5日の『~アーティスト別モノマネ頂上決戦~俺にアイツを歌わせたら右に出るものはいない』(TBS)などを放送。
このほかにも、26日に『バナナサンド』(TBS)「ハモリ我慢大賞2023! 年間No.1珍歌唱が決定3時間SP」、29日に『オオカミ少年』(TBS)の「ハマダ歌謡祭 紅白歌合戦3時間SP」、7日に『千鳥の鬼レンチャン』(フジ)の「夢のタッグモード!新春3時間SP」と、レギュラー番組の音楽コーナー特番も量産された。現時点では、「民放各局が求めるコア層(主に13~49歳)の個人視聴率獲得が最も期待できるのが音楽系の特番」ということなのだろう。
ちなみに年始らしいお笑い番組は、1日の『ドリフに大挑戦! ドリフ結成60周年爆笑大新年会SP』(地震報道で放送されず)、2日の『お笑いオムニバスGP2024』、『千原ジュニアの座王』(カンテレ制作)と、1日朝から午後にかけての『第57回新春!爆笑ヒットパレード2024』も含めてフジの意識が高かった。昭和・平成の年始特番を知っている人ほど、「もう少し“初笑い”をフィーチャーした特番が多くてもいい」と感じたのではないか。
2023年から2024年の年末年始特番で見られた主な傾向は、「レギュラー番組中心の低リスク戦略」「年末の超人気コンテンツ特番化と、年始のスペシャルドラマ量産」「音楽系特番の存在感アップ」の3点。これらの背景には、人・時間・金における各局の苦しい台所事情がうかがえる。
しかし、だからこそ昨夏のドラマ『VIVANT』(TBS)がそうだったように、1つでもしっかり予算をかけた新たな大型コンテンツがあれば、大きなアドバンテージを得られるチャンスにも見えた。