もう1つ忘れてはいけない節目は「戦後80年」。こちらもNHKはさまざまな特番を放送しただけに今年の『紅白歌合戦』でも特集が組まれる可能性は高い。奇しくも司会を務める綾瀬はるかと有吉弘行は広島出身であり、常連アーティストの福山雅治とMISIAは長崎出身。アーティスト2人がトリをつとめる。あるいは4人並んで何らかのメッセージを発する演出などがあるかもしれない。

広島出身と言えば、出場が待望されるのがPerfume。9月21日、今年いっぱいでのコールドスリープ(活動休止)を宣言し、すでに単独ライブも終えているだけに「ラストステージを紅白で」という声があがっている。

また、ともに還暦の奥田民生と吉川晃司が今年結成したユニット・Ooochie Koochie(オーチーコーチ―)も出場を望む声が多い。テーマの「つなぐ、つながる」に通じるユニットであり、6月19日に『NHK MUSIC SPECIAL 奥田民生×吉川晃司~オレたちの広島~』が放送されたことも裏付けの1つになっている。

さらに今年ソロデビュー50周年を迎えた矢沢永吉も広島出身。9月15日に『NHK MUSIC SPECIAL 矢沢永吉』、8月28日に『THE CoversSPECIAL 矢沢永吉ナイト!』が放送されたばかりであり、5月22日にも『MUSIC AWARDS JAPAN2025 第一部』のトリで生歌唱するなど関連番組が多かった。

もちろん、これら以外にも広島や長崎出身のアーティストが出演する可能性はあるだろう。

その他で大きなトピックスはSTARTO所属アーティストの出場。旧ジャニーズ事務所創業者の性加害問題でここ2年は出場ゼロだったが、今年は復活が確実視されている。なかでも、来春のコンサートツアーでの活動終了を発表している嵐の出場は注目必至だ。

嵐はデビュー日の11月3日にファンクラブ会員限定の『生配信だヨ嵐会 2025』生配信を発表したばかりであり、「そこでツアーの詳細だけでなく、紅白出場も発表してくれたらいいのに」という声がある。Perfumeと同様に「今年を逃すと見られない」ことが有力なアーティストは放送ギリギリまで話題となるだろう。

一方、旧ジャニーズ事務所関連で言えば、8月16日に『NHK MUSIC SPECIAL Numberi ~唯一無二の挑戦 世界へ~』が放送されたNumberi、5月29日に『SONGS 香取慎吾』が放送された香取慎吾にも、「出てほしい」「ないと思う」などの声がみられる。

映画『国宝』コンビの出演にも期待

それ以外では、朝ドラ主題歌を担当した『あんぱん』のRADWIMPSと『ばけばけ』のハンバート ハンバート。6月5日に『NHK MUSIC SPECIAL 松田聖子』が放送された松田聖子。その松田聖子のトリビュートアルバムに参加して「赤いスイートピー」を歌ったほか、4月に「中森明菜 Best Performance on NHK」が配信された中森明菜も、“紅白への伏線”という見方がある。

出場アーティストの選考基準はいつも通り、「今年の活躍」「世論の支持」「番組の企画テーマにふさわしいか」の3点だが、今回は放送100年の節目だけに業界内では「昨年のB’zらと同等以上の大物そろい踏みを目指す」という声が聞こえてくる。

NHKは今年、「日本版グラミー賞を目指す」とされる『MUSIC AWARDS JAPAN2025』を放送したほか、夏にも大型音楽特番『MUSIC GIFT』を新設。今本当に売れているアーティストと日本を代表する大物アーティストが出演し、「大みそかの紅白歌合戦への布石」「すでにオファーはしているのでは」などとみられていた。「NHKは1年弱もの時間をかけてアーティスト側にたくさん出演の布石を打ってきたが、それが『紅白歌合戦』でどのくらい実を結ぶか」というニュアンスが感じられる。

近年、季節ごとに放送される民放各局の大型音楽特番が定着する中、「NHKの音楽特番は別格」というイメージを浸透させたいところ。特に11月下旬から『紅白歌合戦』前夜の12月30日にかけて民放各局の大型音楽特番ラッシュがあるだけに、NHKとしてはそれらとは異なるスケール感を伝えたいだろう。

また、今年の大みそかはフジテレビが早々に『新しいカギ』特番を放送することが明らかになっている。同番組はフジテレビの切り札であり、「学校かくれんぼ」と「カギダンススタジアム」という人気企画が予定されているだけに、『紅白歌合戦』への影響は必至。もちろん民放他局の大みそか特番も同様の脅威がある上に、「YouTubeなどのネットコンテンツも昨年以上に大みそか企画をぶつけてくるのでは」という声もある。

一方、審査員のキャスティングで期待がかかるのは、大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』主演の横浜流星と、21日から朝ドラ『ばけばけ』に出演している吉沢亮。この2人は大ヒット映画『国宝』のメインキャストであり、「2025年のNHK」との縁も深いだけに目玉の1つにしたいところではないか。

『紅白歌合戦』に限らず音楽特番への興味はキャスティングに左右されやすいだけに、まずは例年11月中旬の出場者発表がポイントになる。その後もギリギリまで追加発表を重ねながら期待感を高めていくのだろう。