連載コラム『美人すぎる公認会計士がこっそり教える、やわらかマネー知識』では、公認会計士の平林亮子氏が、その豊富な経験を生かした「お金」に関する知識を、分かりやすく説明します。あなたの人生を変えるような、とっておきのマネー知識が得られるかもしれません。


年利率10%のとき、現在の100万円は1年後に110万円になるー。

前回、そんな話をしたと思いますが覚えていますか?

今回は複利の話ではありませんが、年利率10%だとすると、「現在の100万円=1年後の110万円」であるというわけです。

逆に言えば、1年後の110万円は現在の100万円であるということになります。

今の100万円と1年後の100万円では価値が違う―。

これは、会計や経済の世界では常識です。

ちなみに、一定の利率を前提とした時、将来の金額が現時点でいくらに相当するかという金額を「現在価値」といいます。

たとえば、

  • 「年利率10%の時、1年後の110万円の現在価値は100万円である」

と言います。

さらに、複利を前提とすると、年利率10%の場合、

  • 現在の100万円=100万円×1.01×1.01=2年後の121万円

となり、逆に、

  • 2年後の121万円の現在価値=121万円÷1.01÷1.01=100万円

という関係が成り立ちます。

…数式と前置きはここまでにしますので、数字が苦手だという人も、ぜひ続きを読んでみてくださいね。

将来の収入から現在価値を見積もって計算する「DCF(Discounted Cash Flow)法」

さて、実はこの考え方、いろいろな場面で利用されています。

たとえば、不動産の価格を考える時。

その不動産が、この先、どれだけの家賃収入を得られるかを予測し、毎年の家賃について現在価値を計算し、現在価値の合計額をもって、不動産の時価とするという考え方があるのです。

このように、将来の収入から現在価値を見積もって計算する方法をDCF(Discounted Cash Flow)法といい、不動産のみならず、いろいろなモノの価格を計算するする手法として用いられています。

とはいえ、理論的にはともかく、現実的に本当に利用可能な手法であるかは、疑問を感じずにはいられません。

まず、現在の預金金利や経済成長率を考えると、「現在価値」にどこまで意味があるのか疑問です。

それに、DCF法はあくまでも将来の収入の見積もり額を基本に計算する手法。その見積もりの金額で結果が大きく変わります。

将来の予測がしにくい現代に、どこまで正確な計算ができるのか、疑問を感じるというわけです。

ただ、考え方としてはとても面白いですよね。現在の価値は、将来の収入から見積もって割り出そうというわけですから。つまり「将来への収入(=将来への期待)」から時価を導き出そうというのですから、ある意味、「将来への期待というポテンシャルを盛り込んで評価する方法」と言えるのかもしれません。

さて、DCF法で自分の時価を計算してみるとしたら、どうなるでしょうか。

「今の自分だけでなく、将来の自分に大いに期待して欲しい! それだけの価値がある!」と胸を張って言えるでしょうか。

……もちろん、人の価値は、数値で測れるものではありませんが、DCF法の説明をするたびに、そんなことを考えてしまうのでした。

執筆者プロフィール : 平林 亮子

公認会計士。「美人すぎる公認会計士」としてTVやラジオ、雑誌など数多くのメディアに出演中。お茶の水女子大学在学中に公認会計士二次試験に合格。卒業後、太田昭和監査法人(現・新日本有限責任監査法人)に入所。国内企業の監査に多数携わる。2000年、公認会計士三次試験合格後、独立。企業の経営コンサルタントを行う傍ら、講演やセミナー講師など多方面で活躍。テレビの情報番組のコメンテーターを始め、ラジオ、新聞、雑誌など幅広いメディアに出演している。