テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、業務可視化組織改善ツールを提供するQasee代表取締役CEO村田敦氏が、HR領域がDX化をいま推し進めるべき3つの理由について語ります。

  • HR領域がDX化を進めるべき3つの理由


前回DX(デジタルトランスフォーメーション)についての本当の価値と意味や、企業がどのようにDX化を捉え、どのように成功に導いてくべきかについて取り上げました。

本稿では、そのDX化の中でも、最初に取り掛かるべきHR領域のDX化について注目したいと思います。

POINT1:HR領域はテクノロジーの進化が目覚ましく、企業にとって最も取っ掛かりやすい領域のひとつ

昨今、B向けソリューションでの企業が打ち出す広告の中に、このHR領域のCM等々を目にすることが多くなったなと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

勤怠管理システムのジョブカンやタレントマネジメントといった新たなジャンルで急拡大中のカオナビ、人事評価制度を確立できるHRbrainなど、HR領域といっても様々なシステムやサービスが広がりを見せています。

逆を言うと、HR領域はこれまで長い期間、進化がなかったアナログな領域だったと言えるでしょう。しかし、Saas(Software as a Service)の認知が進んだことで、ここにきて一気に進化してきたように感じます。

このHR領域の目覚ましい進化には、HRテクノロジーが細分化され発展してきているのではないかと思います。

HRテクノロジーは、その全体構成は大きな項目で分けても、「データ分析」「タレントマネジメント」「基幹業務」の3つに分類できます。「データ分析」については「メトリクス管理」や「ピープル・アナリティクス」など、「タレントマネジメント」については「採用」「ハイポテンシャル人材管理」「キャリア開発」「教育研修管理」「サーベイ360度評価」など、「基幹業務」については「人事管理」「給与計算」「勤務管理」など、自社で認識している課題やボトルネックに対して、ピンポイントにデジタル化し改善していきやすいのが、この多岐にわたって細分化されているHRテクノロジーであり、筆者が感じるDX化しやすい理由のひとつです。

POINT2:新型コロナウィルスの流行によって早いスピードでもたらされたライフワークスタイルの変化

経済産業省が2020年12月28日に公表した「DXレポート2」には「95%の企業がDXにまったく取り組んでいないか、取り組み始めた段階」と記載され、全社的な危機感の共有や意識改革のような段階に至っていないと報告されています。

「レガシーシステムから脱却し、経営を改革しなければ、日本経済は12兆円の損失になる」と、DX化の遅れを問題視した同省のDXレポートが公表されてから2年以上経っていますが、DX化は一向に進んでいないというのが現状でした。

ただ、悠長に構えていられないのがHR領域のDX化です。新型コロナウィルスによって、ライフワークスタイルの変革を企業が余儀なくされ、これら企業の取り組みの有無が、従業員満足度等に少なからずの影響を与えてきています。

キャリアバンクが実施した「コロナ禍における勤務先企業の対応についての満足度調査」によると、「リモートワークの導入」「時間差出勤の導入」「検温の徹底」などが満足度を高めており、一方で、これらの対応をとっていない企業では不満に感じているという結果になりました。

緊急事態宣言の再発令に伴い、テレワーク勤務や時差出勤などの対応が求められる中で、新しいワークスタイルを確立させ、仕組みを整えるためのDX化は、従業員の満足度を上げると同時に、企業の競争優位性を高めるひとつのポイントだと言えるでしょう。

POINT3:RPAやBOT化しやすい領域

冒頭に、HRテクノロジーが様々な細分化のもと発展してきているとお伝えしましが、その細分化によってもたらされる効果のひとつに、RPAやBOT化といった業務処理の自動化しやすいと言うことが挙げられます。

RPAやBOT化自体も日々進化を続けていますが、細分化された項目ごとにRPAやBOT化を検討するほうが、業務効率の効果が出やすいでしょう。また、国内の労働人口の減少に伴って、企業の生産力の低下が懸念されていますが、この業務処理の自動化を意識し、効果の出やすい領域でのRPAやBOT化を実行していくことが、いままさに企業の競争優位性を確立していくうえで重要なキーポイントだと感じています。


以上3つの点から、HRのDX化をまずは取り組むべきとおすすめさせていただきました。目まぐるしくライフワークスタイルが変化し、その変化に対応していくことを企業も強く求められています。その中で、自社にあった最適なHR領域の問題や課題をみつけ、まずは小さくでもDX化を検討実行していくことは、あらゆる企業にとって今後の未来を創造する上で必要なことではないでしょうか。