テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、書評ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大氏が、「飛躍する企業の特徴」についてお話します。

  • 飛躍する企業の特徴とは?


「ExO(飛躍型企業)」とは

最近、「ExO(飛躍型企業)」という言葉が起業家の中で話題になっています。ExO(飛躍的企業・Exponendal Organization)とは、加速度的に進化する技術に基づく新しい組織運営の方法を駆使し、競合他社と比べて非常に大きい(少なくとも10倍以上の)価値や影響を生み出せる企業です。

サリム・イスマイルは、ExOを最初に世の中に紹介した書籍の「シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法」 の著者で、かつてはヤフーのバイスプレジデントを務めていました。これまで7つの企業の立ち上げや育成で成功をおさめています。彼は「シンギュラリティ大学」の創業ディレクターもあり、そこでも多くの起業家を育てました。

そのサリムがExOのワークブック『シンギュラリティ大学が教える シリコンバレー式イノベーション・ワークブック』(出版 日経BP)を出版。起業家や経営者は、本書に書かれている10週間のプログラムである「ExOスプリント」のノウハウを活用することで、事業を加速し、世界をよりよいものに変えられるでしょう。

ExOには「MTP」「SCALLE」「IDEAS」からなる11の特徴があります。SCALLEとIDEASはそれぞれの特徴の頭文字をとった造語です。以下ExOの11の特徴を説明します。

ExOの11つの特徴

■MTP
1.MTP(Massive Transformation Purpose、野心的な変革目標)
最も重要な特徴がMTP。企業の目標を明確にすることで、前向きな変化に駆り立てられます。
・目標がある
・豊富な資源と結びついている
・大規模
・変化を起こす
・世の中の様子を描いている
・簡潔
・人の心を動かす
・野心的
・有益

■SCALE
SCALEという外側に向けた特徴を実践すれば、企業は世界中の豊富な資源にアクセスできます。
2.S(Staff on Demand):オンデマンド型の人材調達
3.C(Community & Crowd):コミュニティとクラウド
4.A(Algorithms):アルゴリズム
5.L(Leveraged assets):外部資産の活用
6.E(Engagement):エンゲージメント(社会的関心)

■IDEAS
IDEASという内側に向けた特徴を実践すれば、企業は豊富な資源をマネジメントできるようになります。
7.I(Interface):インターフェース
8.D(Dashboard):ダッシュボード
9.E(Experimentation):実験
10.A(Autonomy):自立型組織
11.S(Social Technologies):ソーシャル技術

どんな企業もExOになりたければMTPを決定することから始めなければならない。MTPが決まれば、それが組織の足並みをそろえ、方向性が共有されているという感覚をもたらし、目標違成のために必要な人材を呼び込んでくれる

飛躍的に進歩するテクノロジーは資源を豊富にします。そしてExOは、その豊富な資源と結びつくようにできているのです。MTPを定めることは、自分の会社と豊富さの関係について考えるよい機会を与えてくれます。豊富さとは、大量のリソースのことでもいいですし、あなたの会社が与えうる多大な影響のことでもいいのです。

たとえば、GoogleのMTPである「世界中の情報を整理する」は、ますますあふれるようになっている情級をマネジメントすることに結びつきます。

MTPは簡単に伝えられ、他者の共感を呼ぶような価値を示したものでなければならない

MTPは最初こそ「ばかげたアイデア」ですが、あとから組織を団結させる原動力になることもあります。アーリーアダプター(自分と同じ情熱を侍った人々)にMTPの案を話して、そのMTPを目の前に掲げられることがどれぐらい効果的かを確認すべきです。

●アーリーアダプターにとって有意義だろうか?
●説明や前後関係がなくてもわかりやすいだろうか?
●興味や興奮、意欲を引き起こすだろうか?

最終的な目標は、「そのMTPか新しいコミュニティを牽引していけるか」、また「既存のコミュニティから受け入れられるか」の2つを見極めることです。

MTPを作るためには、次の3つのアプローチを行いましょう。

(1)5回のなぜアプローチ
なぜこの会社は存在しているのか? から深掘りする
(2)オープンディスカッション・アプローチ
世の中にどんな変化が起きて欲しいか? からアプローチする
(3)ストーリーテリング・アプローチ
自分の会社を鼓舞するものの裏側のストーリーを考える

マインドと行動を変えてビジネスで結果を出そう

最後に、ExOを実現している組織のMTPをいくつかピックアップしてました。結果を出している組織を参考に、自社のMTPを考えてみましょう。

・シンギュラリティ大学:10億人の人々によい影響を与える
・Spotify:みんなに音楽を
・フィリップス:世界をもっと健康に
・TEDx:広めるべき価値あるアイデアを共有する
・ヴァージン・ギャランティック:地球に生きるもののために、宇宙へのアクセスを大衆化する
・テスラ:持続可能なエネルギーへ世界のシフトを加速する
・イケア:人々により快適な毎日を
・ユニリーバ:サスティナビリティを暮らしの当たり前に
・スターバックス:人々の心を豊かで活力あるものにする

本稿ではMTPを中心に紹介しましたが、このMTPを明確にし、今ある未使用な資源である「SCALE」を「IDEAS」を使ってマネジメントすることで、私たちは飛躍的な企業をつくれます。本書で紹介されているExOスプリントは、その効果が実際に証明された10週間のプログラムです。

サリムのテンプレートとフレームワークを活用し、ExOスプリント実践することで、ビジネスで結果を出せるようになるでしょう。私も自分のクライアントで、何度も本書のフレームワークを使用し、経営者のマインドと行動を変えてきました。MTPをつくることで、見える景色が変わり、やるべきことが見えてくるのです。