――『電波少年』が終わった後は、どんな番組に携わってきたのですか?

『ロンドンハーツ』に監修という形で参加しています。他にも、フジテレビの『(株)世界衝撃映像社』とか、VTRモノのバラエティ番組をやらせてもらってますけど、ほとんどが監修というポジションで、『電波』のころのように、自分でロケして編集するということはなくなりましたね。

――そんな現在のお立場から見て、最近テレビの規制が増えてきたということがよく言われますが、規制ギリギリの番組をやってきて、それは感じますか?

『電波』をやってたときも一応規制はありましたけど、そこからさらに厳しくなってるなというのは感じますね。僕らが現役でバリバリやってた時からは、シャレが通じなくなっている気がします。でも、当時だって「これをやっちゃダメだ」というのはありましたので、よく「ダメとここまでだったら許される境界線の塀の上を歩いて行く」というのを意識していました。塀の上のつもりが、実は落ちてたということもありましたけど(笑)

この連載でインタビューを受けている皆さんは、わりとそういうチャレンジをしてるんじゃないかと思いますけど、今は塀の手前の安全なところで作っている番組が若干多いから、テレビに刺激がなくなってきてると言われるんじゃないかな。今は、「しょうがねえか!」って笑って許してくれることがあまりなくて、ダメなものはダメとはっきりしちゃってる。それが作る人たちを、萎縮させてるんじゃないかなと思いますね。

――今後こういう番組をつくっていきたいという企画はなんですか?

いろんなメディアがある中で、テレビ独自にできることって「視聴者を動員させる」ことだと思うんです。『電波』でもイベントをやったり、猿岩石の凱旋で36,000人が来てくれたんです。今でも『鳥人間コンテスト』もそうだと思うんですが、そういう番組が、最近あまりにも減っちゃっているので、まだまだテレビでやって行けたらと思いますね。

昔、大先輩が「ショービジネスに欠かせないのは、お金と才能と時間だ」とおっしゃっていて。でもお金は制作費が削減され、才能も急に増えるものじゃない。そうすると時間、つまり手間ひまをかけるということが、逆風が吹いている今のテレビで、僕ら作る人間にとって一番大事なことなんじゃないかと思いますね。大変なことなんですけど、自分の反省も踏まえて、あえてそういうことをやることによって、テレビはまだ元気だぞというのを出してやってみたいなとは思いますね。

――〆谷さんが影響を受けた番組を1本挙げるとすると、何ですか?

昔、テレビ東京(当時:東京12チャンネル)でやっていた所ジョージさん司会の『ドバドバ大爆弾』です。素人の方がものまねや一発芸とかを披露して、100人のお客さんが審査して、例えば74人が面白いと思ってボタンを押すと、その場に74万円が出てくるんです。そしてゲームをクリアしたら、その74万円を持って帰れるというシンプルな構造なんですが、中学生とか高校生とかが、60万とか70万とかいう大金を本当に持って帰るんですよ(笑)。いい意味でも悪い意味でも、画面から出てくるバカバカしさとパワーを感じましたし、あれを見て「テレビって面白いなあ」と思いましたね。

――さきほどおっしゃっていた「動員する」という話に通じますね。

視聴者側にも作る側にも、テレビが遊び道具になってたんですよね。あの距離感に、言い知れぬパワーを感じました。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、〆谷さんの気になっている"テレビ屋"をお伺いしたいのですが…

この前、NHKの『あさイチ』を見てたら、女性のための情報を取り上げるシリーズの日で、「今日のテーマは『おりもの』です」って言ったんですよ! 今までいろんな情報番組を見てきて、『あさイチ』はこれまでもいろんなチャレンジをしてるなと思ってたんだけど、これにはとどめを刺されましたね! 普通情報番組なら、でき限り老若男女分かるネタを意識するじゃないですか、ましてやNHKが。それが少なくとも視聴者の半分である男性を捨ててるわけですよね。今、NHKが一番チャレンジしてるんじゃないかなと思う気がして、どんな感じで作ってるのか、『あさイチ』のスタッフが気になってます。

次回の"テレビ屋"は…

NHK『あさイチ』河瀬大作チーフ・プロデューサー