――今後、こういうものを作ってみたいというものはありますか?

お笑いはちゃんとやりたいなと思っています。『有吉の壁』やシソンヌじろうさんとのドラマもやったりしてるんですけど、やっぱりお笑いの人の本当の能力が出せる番組や場所がどんどん狭くなっている気がしているんです。コント番組ってお金も時間もかかるし効率が悪いんですけど、次世代の才能のある方はいっぱいいらっしゃると思っていて、そういう方たちと力を合わせて作り物の番組をやりたいですね。自分が経験した「テレビで人生が変わった」という体験を少しでも伝えたいなと思っているので。

――地上波では難しくなってきていますが、日テレさんだとHuluといったプラットフォームもありますし、そういうところで活路を見出すというのはいかがですか?

その出し口はどこがいいのかというのは、実はまだ誰も見つけられていないと思うので、僕らの世代のテレビマンが考えないといけない問題ですよね。ライフスタイルも変わっていき、コンテンツへの接し方も変わっていく中で、どういう届け方が一番効率的なのか、そこまで考えないといけない時代が数年のスパンで来るから、自分への宿題としては考えていきたいなと思っているんです。でも、こういうもので人を笑わせたいとか、楽しませたいとか、そういう想いを原点にして発想することが一番大事だと思うので、コンテンツ本位であることは忘れないでおきたいです。表現したいものがあって、その最善の届け方を考える、その順番を間違えなければ、必ず見出せる答えがあるのではないかと思っています。

――「地上波は規制が多くなってきた」とも言われることが多いですが、実際に直面している問題ですか?

僕はそんなに残念なことには全く思っていなくて、それは、テレビの見方が変わったということですよね。テレビというものに求めることが時代とともに変わっているだけで、それは必ずしも悪いことではないと思います。『有吉の壁』だって、ローションのヌルヌルの上で熱々のお湯をかけたりもしてますけど、自信を持ってやってます(笑)。人がどういうものを不快に思うか、許容できないかというものが時代とともに変わってきただけで、それを踏まえながら作っていくのは、当たり前のことだと思うので。「本当はこういうことしたかったのにできないんだ」っていう思いを抱いたことは、あまりないですね。演者さんとともに、視聴者とも“共犯関係”にあるのがテレビなのかなと。また、テレビマンもネット動画などを作る機会も増えてきて、今後ますますテレビ以外のプラットフォームで表現することもできる時代になっていくと思うので、映像表現ということでは、可能性は全然狭まってないと思います。

――最近は「若者のテレビ離れ」ということもよく言われますが…。

やっぱりテレビで見たいと思うソフトを作らなきゃいけない時代になっているということですよね。10年前だったら、裏に勝てる番組を作るということが大きかったと思うんですけど、今はわざわざテレビをつけて見たいと思わせるもの、すごく独創的なものだったりオリジナリティーがないと戦えないんだというのは感じています。でも、そこで悲観的になるというよりは、だからこそ面白いものを作ろうよっていう気持ちになればいいと思うんです。『有吉ゼミ』は、「テレビをつけて見るに値するものを作ろう」とスタッフや出演者のみなさんが一生懸命考えてくださっているので、いい雰囲気で作れています。そーたにさんもそういう人だと思うんですよね。テレビは面白くあるべきだという信念があって。だから大好きだし、たぶん一番ロマンチストなんじゃないですか(笑)

日テレ伝統のドキュメントバラエティが持つ可能性

――ご自身が影響を受けた番組を1つ挙げるとすると何ですか?

『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』ですね。今『ヒルナンデス!』の演出をやらせてもらっていますが、「芸能人社交ダンス部」が好きで、南原さんと最初に仕事するときは、感慨深かったです。絶対覚えてないと思うんですけど、2年目のADのとき、情報番組の取材でウンナンさんにカンペを出したことがあったんですが、緊張でガチガチでしたよ。こんなすごい人たちに僕なんかがカンペを出していいのか!って(笑)。でも、『ウリナリ』をはじめ『電波少年』もそうですけど、あの時代の日本テレビの番組には影響を受けてますね。やっぱりドキュメントが好きなんです。ギャル曽根さんの大食いも形を変えたドキュメントバラエティだと思っていて、日テレのDNAにあるドキュメントバラエティという表現の可能性は、まだまだあるんだろうなと思います。

  • 『ヒルナンデス!』(日本テレビ系、毎週月~金曜11:55~)
    (写真左から)滝菜月アナ、南原清隆、梅澤廉アナ (C)NTV

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”をお伺いしたいのですが…

『マツコ会議』の裏で『おっさんずラブ』をやっていた、テレビ朝日の貴島彩理さんですね。一緒にお食事させていただいたんですけど、「若い人に向けてテレビを作ろう」っていう信念を持っていて、本当に魅力的な方でした。あのドラマの企画書をなんで書こうと思ったのか。批判されるかもしれないとか、いろいろ考えた上で、ちゃんと踏み切って、しかもコミカルに描ききったじゃないですか。あれって本当にプロデューサーの腕一つだと思うんですよね。読後感の良いドラマに仕上がっていて、この人すごいなと思ってたんです。もう裏ではやらないでほしいですけど(笑)

次回の“テレビ屋”は…

テレビ朝日『おっさんずラブ』貴島彩理プロデューサー