テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第75回は、15日に放送されたテレビ朝日系ニュースバラエティ番組『中居正広のニュースな会』(毎週土曜12:00~ ※一部地域除く)をピックアップする。

前回ピックアップした『新・日本男児と中居』(日本テレビ系)とともに今春スタートの新番組であり、「ついに中居までニュース番組をやるのか?」という驚きは大きい。

土曜昼というニュース番組のない時間帯に、どんな内容で勝負しているのか? 今やジャニーズとニュース番組の組み合わせは当然のようなムードになったが、“後発キャスター”の中居はどんなスタンスで番組に挑んでいるのか?

また、『新・日本男児と中居』と合わせて、2つの新番組を見た上で、中居の現在地点も探っていきたい。

  • 『中居正広のニュースな会』を放送するテレビ朝日

■『バイキング』に似た怒りと不満の意味

番組冒頭、「今週、街のみなさんが納得いかないと思ったニュースを徹底解説!」「『2000万用意しろ』って突然言われてバカヤローだろ?」「高齢者の交通事故、防ぐ方法はない?」「老後は年金だけじゃ足りない?」「定年後って本当に資産2000万円も必要なのか? スタジオで検証します」「さらに中居正広スペシャル対談は、ボクシング井上尚弥に迫る」とこの日の放送内容をフラッシュで見せて、CMに入った。

CMが明けると、「どうもこんにちは。『ニュースな会』の時間がやって参りました。みなさんよろしくお願いします」とおじぎをしながらあいさつする中居。ふだんの笑顔がないばかりか、バラエティよりもテンションは低く、すぐにゲストの夏菜と千原ジュニアに話を振った。

ゲスト2人の紹介を終えると、島本真衣アナが「本日のラインナップ」を読み上げていく。まずは“世間が納得していないニュース”として、「秋田 地上型ミサイル迎撃システム配備&官僚 居眠り問題」「高齢者専用の新運転免許を検討」「老後“2000万円不足”の報告書 政府が受け取り拒否」の3つ。さらに“特別企画”として「中居正広×ボクシング世界3階級制覇 井上尚弥SP対談」を用意していることが明かされた。

放送開始からCMを含むわずか4分間で、「今日はこれをやりますよ」という放送内容を2度も紹介するというのは異例であり、わかりやすさ重視の方針がうかがえる。ただ、「世間が納得していないニュース」という怒りや不満を前面に出したスタイルは、『バイキング』(フジテレビ系)に近いのかもしれない…と思わせた。

しかし、番組と中居の目指すところは正反対。中居は「報道番組は初めてで、何で(オファーを)受けたんだろう…」と不安をこぼす夏菜に、「いや、僕がいるくらいだから大丈夫ですよ。カジュアルなカジュアルな報道番組ですから」と声をかけたように、出演者が感情をぶつけることも、激しい議論を交わすこともない。何より中居が坂上忍のように自論を熱く語るシーンは一度もなかった。

そもそも番組スタートから約1カ月間のメインコーナーは、今回のような怒りや不満を前面に押し出したものではなく、1週間のニュースをランキング形式で振り返る「ニュース・アンダーライン」。つまり、まだまだ試行錯誤の段階であり、視聴者の反応や視聴率を見ながら、「土曜昼にフィットするニュース番組」の最適解を求めていくのだろう。

■自らのコメントを後回しにする中居

そして、ある意味で番組の内容以上に気になるのは、ジャニーズの中でも“後発キャスター”である中居の立ち位置。

第1回放送の冒頭で「自分の身の丈にあった番組を目指していく」と語った通り、中居の進行は、焦らず、無理せず、ウソをつかず。「ジャーナリストや専門家のコメントをかみ砕き、補足をうながす」という黒子に徹し、自らのコメントは後回しにしている。

実際、高齢者運転事故のニュースでは、「確かにドライブレコーダーの搭載で映像提供が多くなっていますから、報道も多いのかと思いますけども」「超高齢化社会、分母が増えれば、それくらい事故も増えるんですね」「こういう映像を見ていると、『あれっ? 自分ももしかして(能力が)低下してきているのかな』と疑心暗鬼になります」「地方で車が使えないと仕事だけでなく、生活もままならないと…」「安全機能付きの車もそんなに安いものではないですよね」と、ジャーナリスト・岸田雪子の発言を受けつつ、それぞれの立場に寄り添うようなコメントをしていた。

続く「老後資金2000万円不足」のニュースでも、岸田のコメントを「『みんなに当てはまるものではない』と(言うことですよね)」「(2000万円という)数字が強烈にみなさん残っているでしょうから」とフォロー。さらに、自身の金銭事情を尋ねられると、「一人暮らしですし、ぜんぜん貯金が減らないですね」と正直に話し、「中居さんなら2000万円楽勝じゃないですか?」という質問に微妙な表情をしながらうなずき、「(この問題は)人それぞれですね」とまとめるなど柔軟な対応を見せた。

その後、井上尚弥へのインタビューでは、「結婚、最高ですね。帰る場所があるというのが」と語る井上に、「(そう)言わないとアレですもんね。『帰りたくないんだよな』とか…」「僕の世代の友達ですけど、『結婚は地獄』って言ってます」と笑い混じりに返す“バラエティの中居正広”を見せるシーンも。番組開始からわずか1カ月半で、硬軟織り交ぜた進行スタイルを確立してしまうのは、「さすが中居」と言ったところか。

■“1人の人間”としてニュースに向き合う

これまで“バラエティの中居正広”ばかりを見てきた視聴者にとって当番組は新鮮であり、「より1人の人間らしい姿を見ることができる」という点でファンはたまらないだろう。中居自ら井上のボクシングジムに出向いてインタビューしたり、両サイドの出演者に頭を下げながら「本日はどうもありがとうございました」と丁寧にあいさつしたり、とにかく謙虚な印象が残った。

当番組の各ニュースは、「『ANNニュース』の映像をそのまま使いながら、わかりやすいようにまとめ直す」という形で紹介されている。加えてスタジオでは、岸田雪子や柳澤秀夫らジャーナリストの解説をベースにしているため、中居の立ち位置はキャスターというより、ほぼ庶民。アイドルでも、大物タレントでもない、1人の人間としてニュースに向き合っている。

同時期にスタートしたもう1つの新番組『新・日本男児と中居』も、中居の向き合い方は同様。個性的な生き方をする“新・日本男児”に1人の人間として接し、笑いを交えながらも、人間味あふれる姿を見せている。

これまで数多くの番組でMCを務めてきた上に、その中には『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)、『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ系)、『なかい君の学スイッチ』(TBS系)など、人生を考えさせられるものも多かっただけに、中居にはキャスターを務める資格と資質が十分あると言っていいのではないか。少なくとも「後発だから」と言って、他のジャニーズ所属タレントに劣るところは何一つないだろう。

週末のニュース番組は飽和状態で競争が激しいが、続いてさえいければ、「中居正広の結婚」や「SMAP再結成」を自ら報じる日が来るかもしれない。そんな夢を描けることも当番組の意義ではないか。

■次の“贔屓”は…名番組『気分は上々。』を彷彿! 『内村バカリ南原出川が本気で考えた!最高の旅SP』

(左から)内村光良、バカリズム、出川哲朗、南原清隆

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、22日に放送されるフジテレビ系バラエティ特番『こんな休日どうですか 内村バカリ南原出川が本気で考えた!最高の旅SP』(21:00~23:10)。

「のんびり過ごす休日より、朝から晩まで1秒たりとも無駄にせず一生懸命休もう!」がテーマのロケ企画であり、今回の放送は昨年5月に続く2回目。前回に続いてウッチャンナンチャンの2人が最高の休日を提案していく。

内村光良率いる“内村班”は、温泉をめぐる旅。バカリズム、日村勇紀(バナナマン)、朝日奈央、武田真治と、6カ所の温泉を1日でめぐるプランを用意している。一方、南原清隆率いる“南原班"は、理想のカラダを手に入れるプラン。出川哲朗、佐藤栞里、澤部佑(ハライチ)、塚田僚一(A.B.C-Z)、池田美優とさまざまなエクササイズやグルメを体験するという。

1996年7月~2003年9月に放送された『ウンナンの気分は上々。』(TBS系)を思わせるコンセプトの番組だけに、どこかノスタルジックな笑いに期待するとともに、「ウンナンの現在と未来も見られるのではないか」と期待している。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者。毎月20~25本のコラムを寄稿するほか、解説者の立場で『週刊フジテレビ批評』などにメディア出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日の視聴は20時間(2番組同時を含む)を超え、全国放送の連ドラは全作を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの聴き技84』『話しかけなくていい!会話術』など。