テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第242回は、18日に放送されたTBS系バラエティ特番『THEプラチナリスト~ スターが生まれた伝説の名簿~』(21:00~)をピックアップする。

ヒロミと中居正広がMC初タッグを組む特番で、「さまざまな大会やコンテストのナンバーワンに輝いた人物のその後を調査する」というコンセプトで放送された。

  • 『THEプラチナリスト~スターが生まれた伝説の名簿~』MCのヒロミ

    『THEプラチナリスト~スターが生まれた伝説の名簿~』MCのヒロミ

■『消えた天才』を彷彿(ほうふつ)させる演出

最初のリストは、夏の甲子園優勝投手。制作サイドはまず「その称号は全国高校球児13万人分の1」「ダルビッシュ有、大谷翔平、佐々木朗希らも手にできなかった」ことを紹介し、さらに侍ジャパン・栗山英樹監督の「絶対に人と違うものを持っている。それを唯一、神様から持たせてもらった人。完全に選ばれし者」というコメントを紹介した。

つまり、「いかに“プラチナ”な存在なのかを印象付けよう」という狙いだが、キャスター歴が長かった栗山監督の演出意図を読み取る力の健在ぶりに感心させられる。

今回は30年分の優勝投手が対象で、企画のポイントは「その後、プロの世界で活躍しているのか、それともまったく別の道を選んでいるのか」の2択。ヒロミの予想は「ほぼほぼプロ」だったが、自分の記憶をたどってそれなりの予想ができることも、この番組の面白いところだろう。

・2021年の智弁和歌山・中西聖輝は、青山学院大在学中でプロ志望。
・2020年は、大会中止。
・2019年の履正社・清水大成は、早稲田大在学中でプロ志望。
・2018年の大阪桐蔭・柿木蓮は、日本ハムファイターズで現役のプロ。
・2017年の花咲徳栄・清水達也は、中日ドラゴンズで現役のプロ。
・2016年の作新学院・今井達也は、西武ライオンズで現役のプロ。
・2015年の東海大相模・小笠原慎之介は、中日ドラゴンズで現役のプロ。
・2014年の大阪桐蔭・福島孝輔は、社会人野球で現役。
・2013年の前橋育英・高橋光成は、西武ライオンズで現役のプロ。
・2012年の大阪桐蔭・藤浪晋太郎は、阪神タイガースで現役のプロ。
・2011年の日大三・吉永健太朗は、大学、社会人と進んだがプロ入りせず。

ここまで12人中6人のちょうど5割がプロ入り。2015年の小笠原が「ハンカチ王子さんとか平成の怪物さんみたいにそんなに有名になっていないんで、街も普通に歩けるし、ストレスフリーで生きさせてもらってます」と笑顔でコメントするなど、活躍中の現役選手はやはり充実感がにじみ出ていた。

その一方で苦悩を明かしたのが、2011年の吉永。幼いころからの写真にインタビューを交えた「プラチナストーリー」というVTRが流れ、吉永は「プロ入りを目指して理想のフォームを追い求めたが、投げ方が分からなくなった」「優勝した時の姿に戻ろうとしてしまったことが一番よくなかった。過去に縛られて苦しんだ時期があった」と打ち明けた。

ただ最後は、「甲子園優勝投手とは?」という質問に、「いい時も悪い時もたくさんの方に支えていただいて野球を引退するまで頑張ることができたので、答えは『優勝投手で良かった』という一択」とコメント。テンポよく甲子園優勝後の球歴や思いを見せるVTRだったが、番組の肝となるエピソードだけにもう少し時間をかけて掘り下げてほしかった感もある。

この「プラチナストーリー」を見て、同じTBSの日曜に放送されていた『消えた天才』を思い出した人は多かったのではないか。それもそのはず、主要スタッフが今回の番組を担当している。

『消えた天才』は不適切な演出があって3年前に終了したが、その構成は支持する視聴者も多かっただけに、同じくらい掘り下げる優勝投手がいても良かったのかもしれない。

■プロ入りせずとも素晴らしい人生

・2010年の興南・島袋洋奨は、ソフトバンクホークスに入ったが、現在は母校で指導者に。
・2009年の中京大中京・堂林翔太は、広島東洋カープで現役のプロ。
・2008年の大阪桐蔭・福島由登は、社会人野球へ進んだがプロ入りせず。しかし、2020年都市対抗野球の決勝で優勝投手となるストーリーの続きがあった。
・2007年の佐賀北・馬場将史は、商社勤務でプロ入りせず。「もともと高校で辞めるつもりで『プロに行きたい』という感覚がなかったです。甲子園で結果を残したことで大学に進学できましたし、それがきっかけで今の会社にも入れたと思っているので、人生のよい経験になっていると思います」と前向きに語った。
・2006年の早稲田実業・斎藤佑樹は、日本ハムファイターズでプロ入りしたが昨年引退。
・2005年の駒大苫小牧・松橋拓也は、大学を経て保険会社の営業マンになりプロ入りせず。ここで2本目の「プラチナストーリー」がスタートし、明大ではケガをして公式戦登板がなかったが、「甲子園優勝投手+マー君からエースの座を奪ったことは現在営業の仕事で役立っている」という。
・2004年の駒大苫小牧・鈴木康仁は、社会人野球に進んだがプロ入りせず。
・2003年の常総学院・磯部洋輝は、大学、社会人と進んだがプロ入りせず。
・2002年の明徳義塾・田辺佑介は、大学、社会人と進んだがプロ入りせず。

ここまで21人中9人がプロ入りという結果を受けてヒロミが「ここの世代はプロに行った人はほぼほぼいないね」と振り返る。すると陣内智則が「でも“優勝投手”(という肩書き)をポジティブに使ってますよね」と話を広げ、中居が「前半のVTRの人たちの思いは経験しているんじゃない?」と呼応。さらに、陣内が「『今となったらいい思い出』という風な」、中居が「『ダルビッシュと投げたんですよ、マー君と投げたんですよ』。どんどん言っていいと思う」などとポジティブなコメントを重ねた。

この番組のコンセプトは人生賛歌であり、決して頂点を極めた人の苦悩や転落を描きたいわけではないだろう。だからこそここで3人のコメントをはさむのは重要であり、その人選に間違いなかったことを立証していた。