テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第179回は、25日に放送された日本テレビ系音楽番組『MUSIC BLOOD』(毎週金曜23:00~)をピックアップする。

田中圭と千葉雄大がMCを務める今春スタートの番組で、「毎週1組のアーティストを迎え、今も血液として自分に流れるエモい話をトークとライブでひも解く」というコンセプトで放送。

「前日発表」されるゲストには、ここまでsumika、マカロニえんぴつ、東京スカパラダイスオーケストラ、Novelbright、森山直太朗、MAN WITH A MISSION、OMI(登坂広臣)、日向坂46、DISH//、緑黄色社会、乃木坂46、BTSが出演した。

ネットの発達で誰でもスターになるチャンスが広がる中、「あえてたった1組の人気アーティストにフィーチャーする」という時代に逆行するようなコンセプトの勝算はどこにあるのか。

  • 田中圭(左)と千葉雄大

■俳優MCをフォローする藤井貴彦アナ

番組冒頭のナレーションは、「自分の音楽の血となったアーティストは誰ですか? MUSIC BLOOD」「今夜のアーティストはBUMP OF CHICKENに“恋焦がれる女子”。3ピースロックバンド、SHISHAMO」。日テレ報道番組の大黒柱・藤井貴彦アナによる落ち着いた声のナレーションに“大人の音楽番組”をイメージさせられる。

続いて、「2010年、川崎市の高校の軽音楽部で結成。平均年齢20歳で日本武道館を満員にし、紅白にも出演。ギターボーカル・宮崎朝子の書く歌詞が10~20代の女子に刺さると話題に」というプロフィール紹介。さらに、「SHISHAMOの歌詞作りの原点となったBLOOD。それは……」、宮崎の「BUMP OF CHICKENさんの『ラフ・メイカー』。物語になっていて、絵本の世界というか、めちゃくちゃすごい」というコメントをはさんで「SHISHAMOがBUMPの歌詞のすごさを語り尽くす。そしてBUMPの名曲をテレビ初歌唱」と番組の見どころをテンポよく明かした。

ここまで1分あまりが経過したところでカメラはスタジオに切り替わり、宮崎、ベース・松岡彩、ドラム・吉川美冴貴の3人が登場。宮崎が「(MC・田中圭の主演ドラマ)『おっさんずラブ』が好きでグッズとかも買っていて……」と話すと、田中は「ひさびさに“はるたん”の髪型にしてきた」とサービス精神を見せる。

そもそもこの番組は、俳優とアーティストによるトーク中心の構成であり、その意味で進行役を務める田中と千葉の負担は大きい。特に田中は「テンションを上げ、リアクションを大きくして番組を盛り上げよう」という姿勢が目立つ。

本編のVTRがはじまると、「今、SHISHAMOがエモい理由。それはリアルな恋愛を描いたストーリー性のある歌詞。『夏の恋人』では、彼氏との別れを考える女子の心を表現。まるでドラマの1シーンのような心理描写。そのルーツとなったのは……」というナレーションに合わせて、宮崎が「BUMP OF CHICKENさんの『ラフ・メイカー』です。小学生のときに初めて買ったCDもBUMPさんだったりとか、自分の作詞のスタイルだったりルーツになっているのはBUMPかな」と“BLOOD”を語った。

田中と千葉の技術的な不安を減らすために藤井アナのナレーションを多用し、編集でアーティストの声とつなぐことによって、俳優MCの進行をサポートしている。これは裏を返せば、「田中と千葉のイメージやルックスのよさは、進行の不安を補ってあまりある」ということだろう。女性アナウンサーを1人アシスタントにつけてもよかったはずだが、それをしないところにこの番組の目指すところが見えてくる。

■アプリsmash.との連動番組だった

BUMP OF CHICKENの「ラフ・メイカー」(2000年発表)と「ダンデライオン」(2002年発表)が紹介されると、宮崎は「曲としてまとめるのはすごい技術だなと思って」「2分59秒で、起承転結が詰め込まれてるんってすごくね? って」と熱っぽくコメント。その間、田中は「面白い~! でもめちゃくちゃすごくないですか?」「いやだ! 何それ」などと大きく反応し、千葉も両手を叩きながら「素敵」と呼応していた。

次は、SHISHAMOによる「ラフ・メイカー」のカバー演奏。宮崎は「コピーして自分たちで楽しむとかはあるんですけど、披露するとかがないので、もう……緊張MAX」と不安を漏らすも、「SHISHAMOが奏でるラフ・メイカーの物語、3ピースにアレンジしたロックサウンドにも注目です」という曲紹介から演奏が始まった。

ライブハウスを思わせる暗めのライティング、たくさんのテレビモニターに砂嵐が映されただけのシンプルなセット、オーソドックスなカメラワーク。いずれも「じっくり楽曲に集中してもらいたい」という意図を感じるもので、「バズらせるために奇をてらおう」という姿勢は見られない。やはりアーティストとファンを優先させた構成・演出の番組なのだろう。

ここで放送時間の約半分が経過。すると「MUSIC BLOOD×BTS 未公開トーク smash.で明日ひる12時配信」というテロップが表示され、続いて「影響を受けた音楽は?」「リフレッシュ方法は?」「モーニングルーティーンは?」などのトーク項目が映し出された。さらにそのまま、スマホで楽しむバーティカルシアターアプリ・smash.のCMに突入。この番組のロゴを見ると、『MUSIC BLOOD』という文字の左上に「smash. presents」と書かれている。

「あえてたった1組の人気アーティストにフィーチャーする」というNHKの『SONGS』と似たコンセプトは、smash.というアプリとの連動あってのものだった。ネットの発達で個人嗜好が細分化し、誰でもスターになるチャンスが広がる中、時代に逆行しているように見えるこのコンセプトは、民放各局にとってまだまだビジネス的に「アリ」なのだろう。

『アナザースカイ2』を木曜深夜に移動させ、金曜深夜にはすでに『バズリズム02』という音楽番組があったにもかかわらず、放送を決めたことがそれを証明している。

■出演アーティストは放送前日発表

次のコーナーは、数多くの恋愛ソングを聴いてきた宮崎が「グッとくる深すぎる恋愛ソングの歌詞」を紹介。1曲目は「片思いしているときに刺さる歌詞」でaikoの「milk」、2曲目は「世の男子に聞いてほしい曲」でキリンジの「メスとコスメ」をピックアップした。

さらに、番組は2曲目の演奏へ。カバー1曲、オリジナル1曲という計2曲の演奏は、多少の物足りなさを感じさせるが、あくまで“BLOOD”がメインの番組だけに妥当な感もある。楽曲が終了するとすかさず「SHISHAMOのメンバーをさらに近くで感じられるアンカット(ノーカット)映像をこのあとバーティカルシアターアプリ・smash.限定公開。3人の映像をスマホでお楽しみください」というナレーションが流れた。

同アプリは「最大15秒までの映像を切り取ってコレクションし、SNSでシェアもできる」という楽しみ方があるだけに、放送後にどれだけの新規会員加入効果が得られるのか、気になるところだ。

番組の最後、田中と千葉に「7月3日の大型音楽特番『THE MUSIC DAY』で、東京スカパラダイスオーケストラとコラボし、『美しく燃える森』を披露する」ことが明かされた。サプライズで聞かされた田中は「イエーイ! ……ってなんないですよ!」と苦笑いしたが、これは現在の音楽番組MCにつきものの試練であり、もちろん特権という見方もできる。

「次週……夏フェス出場回数1位バンド」「オフコース小田和正……神の声」とアーティスト名を伏せて次回予告するところもこの番組らしい。数字を確保するためにトーク内容すらネタバレさせる番組が多い中、「前日発表で勢いを保ったまま放送当日を迎える」という方針は、情報過多な現在の世の中に合っているのではないか。

■次の“贔屓”は…「料理人のM-1グランプリ」は盛り上がるか『DRAGON CHEF』

『DRAGON CHEF 2021』の出演者たち

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、7月4日に放送されるABCテレビ・テレビ朝日系バラエティ特番『DRAGON CHEF 2021』(19:00~20:56)。

「次世代スター料理人No.1決定戦」。また、同じABCテレビが制作することもあって「料理人のM-1グランプリ」。いずれのキャッチコピーからも、大型のコンテスト特番であることがわかるのではないか。

全国761人の料理人が優勝賞金1,000万円を目指して、2月に都道府県予選、3月に全国6地区でエリア予選が行われ、続くサバイバルラウンドは4月24日から土曜深夜に関西ローカルほかで放送。さらに今回放送の決勝ラウンドは、全国ネットの日曜ゴールデンタイムという大勝負だけに、関東エリアでもジワジワと注目を集め始めている。

まずは準決勝の「デリバリー対決」が放送され、勝者2名が激突する決勝戦は豪華クルーズ船「シンフォニー」の上でコース料理対決をするという。片岡護、脇屋友詞、須賀洋介、神田裕行らレジェンドシェフ、服部幸應らも登場し、どんなスケールの番組になるのか興味深い。