テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第100回は、7日に放送された日本テレビ系バラエティ番組『世界一受けたい授業 日本の嘘SP』をピックアップする。

同番組は「古今東西の名物講師が登場し、自ら『使える学問』を講義」のコンセプトで、2004年秋のスタートから15年が経過。土曜夜の名物番組として定着し、高視聴率を記録している。

今回の放送内容は、あなたはダマされていませんか? 日本の8つのウソSP! 「ダマされていませんか?」「8つのウソ」と、いつになく過激なフレーズを掲げているところに興味をそそられる。土曜夜の番組では、同じ2014年に始まった『天才!志村どうぶつ園』(日テレ系)と並んで、断トツの放送回数を重ねる理由は何なのか? 掘り下げていきたい。

  • (左から)上田晋也、堺正章、有田哲平

■特番らしいランキング形式を採用

番組は「日本の8つのウソ」をランキング形式で紹介。実にシンプルだが、「何が上位にランクインしているのか?」が最後まで気になる2時間特番らしい構成と言える。下記に各順位のポイントを書き出していこう。

8位は「夜ホットミルクを飲むとよく眠れる」という睡眠のウソ。「牛乳は夜ではなく朝飲むほうがいい」「夜は緑茶がおすすめで、水出し緑茶にするとカフェインが抽出されにくい」。

7位は「お腹のダイエットには腹筋運動」というダイエットのウソ。「腹筋はお腹より太ももの筋肉を使っていて、腰痛やヘルニアのリスクもある」「おすすめはプランクという運動と、入浴しながら氷水を飲むこと」。

6位は「津軽海峡のクロマグロが大間でしか獲れない」というマグロのウソ。「北海道の戸井漁港でもおいしいマグロが獲れる」。

5位は「がんの検査は時間がかかる」というがん検査のウソ。「最新のがん検査は一滴の尿を調べるだけで、体長1㎜の線虫を使って15種類に渡るがんのリスクを調べられる」「検査費用は約1万円で、来年1月から一部の病院で実施予定」。

4位は「Do you like Japan?」という英語のウソ。「好きという気持ちを押し付けてしまうので、頭に『How』をつけたほうがいい」「『Can you speak Japanese?』も『Can』より『Do』のほうがいい」。

3位は「レタスは食物繊維が豊富」という栄養のウソ。「食物繊維はきのこのほうが多いくらいで、おすすめはアボカド」「また、ビタミンCをとるならレモン7個分がとれる柿がいい」。

2位は「ベートーベンの第九=年末の歌」という第九のウソ。「年末の風物詩なのは日本だけで、海外では自由と平和の象徴として特別な機会に演奏される」「第九=歓喜の歌もウソ」「日本で初めて第九を演奏したのは1918年6月1日で、徳島県のドイツ兵捕虜たち」。

1位は「ラグビーは日本ではあまりなじみのないスポーツで、本当に盛り上がるのか心配されていたが、それは全くの間違いだった」というラグビーのウソ。「スコットランド戦の瞬間最高視聴率は53.7%」。

スタジオでは、それぞれの内容をクイズ形式で当てるほか、プランクの実践、マグロ寿司の試食、外国人との英会話、第九の合唱などが行われた。クイズ、運動、食、英語、歌と、それぞれ動きの異なるアクションを織り交ぜたダイナミックかつバランスのいい構成は、いかにも日テレらしい。

ただ、1位のラグビーはウソというより日テレ自身の不安であり、誰が見てもこじつけのネタだった。事実、すぐさま「祝ラグビーW杯ベスト8進出 日本代表を陰で支えた職業図鑑」という企画に移り、コーチ、通訳、選考漏れした選手らのエピソードを紹介。

さらに、日本代表の田中史朗選手が登場し、すでに何度も放送されている妻との感動秘話を披露した。「今、確実に視聴率が獲れるラグビーをどう使うか?」は日テレの課題だが、この日は強引だったと言わざるを得ない。

■「一流を集める」コンセプトにブレなし

ランキングと並ぶもう1つの目玉コーナーは、特別授業の「映画『アナと雪の女王2』大ヒットの秘密」。スタジオに同作のアニメーションスーパーバイザーのマイケル・ウッドサイドが登場し、オラフやスヴェンのイラストを即興で描いて盛り上げた。

さらに、「ディズニー映画定番の王子との恋愛をしない」「長編映画初の女性監督によるリアルなプリンセス像」「吹き替えは『口の動きを合わせる』という世界共通のルールがある」「秋景色の中で登場人物がハッキリ見えるように霧を描いた」「リアルな姉妹を描くために社内でシスターサミットを開いた」などのエピソードを披露。

未公開動画やアイディアスケッチなどのお宝も紹介するなど、タイムリーなテーマらしく力の入った内容であり、土曜夜の放送に重要なファミリー視聴を促したのではないか。

番組には、この日も「先生」として、医師、マグロ仲卸人、アニメーター、大学教授、ラグビー日本代表選手など、各界のトップランナーが集結。「一流の人物を集める」とコンセプトにブレはなく、情報の信頼性がより問われる時流に合った番組と言えるだろう。

その一方で、番組を学校に見立てた“教養バラエティ”というイメージは薄れつつある。全編に渡ってクイズ形式が貫かれ、「知識を得るというより、クイズを当てる」という印象が強く、先生と生徒の授業というより、クイズの出題者と解答者に見えるのだ。もちろんそれは制作サイドの狙いであり、「教養とクイズの間をゆく」いい意味でのファジーさが当番組の強みなのかもしれない。

■台本に協力させるお膳立てのうまさ

もう1つ、当番組を語る上で忘れてはいけないのは、ボケまくる有田哲平の存在。この日も、「お世話になった方にマグロを贈りたい…尊敬する(堺正章校長と思わせておいて)長州力さんに」「(『リアルな姉妹を描くためにした工夫は?』という問いに)叶姉妹のインスタをフォローした」「合唱団のみなさんはどこで洋服を買っている?」「仕事がバタついてたんで昨日からラグビーW杯を見はじめている。日本がロシアに勝った」などとボケ続けて上田晋也のツッコミを誘い、教養番組の堅くなりがちなムードをやわらげていた。

ボケやすいムードがあるから「生徒」のゲストたちも、芸人、バラドル、俳優、さらには「先生」たちも、その流れに乗ってボケを連発。というより、「緻密な台本通りに振る舞いやすい」と書いたほうがいいだろうか。第九の合唱団たちが繰り返しボケていたように、当番組のスタッフはプロ・一般人を問わず、台本に協力してもらうお膳立てがうまいのだ。

台本の緻密さは、各パートで見せる締めのコメントにも表れていた。おおまかな流れを書くと、まずクイズ形式で出題し、次に答えを明かし、最後にゲストが締めのコメントをする。

その締めのコメントは笑わせるためのものではなく、「意外でした」「知らなかった」「ためになる」「面白い」など視聴者の心境を着地させるようなものが多い。これを「心地よい」と思う人は番組のファンであり、「誘導されている」と思う人はアンチなのではないか。

土曜夜の『天才!志村どうぶつ園』『世界一受けたい授業』『嵐にしやがれ』と、日曜夜の『ザ!鉄腕!DASH!!』『世界の果てまでイッテQ!』『行列のできる法律相談所』。このバラエティ3本立ては日テレが誇るゴールデンタイムの軸であり、とりわけ前後の番組をつなぐ真ん中の『世界一受けたい授業』『世界の果てまでイッテQ!』の役割は大きい。

来年いっぱいで『嵐にしやがれ』の終了が有力視されているが、どんな新番組がスタートしても、当番組が幅広い世代が楽しめる日テレらしいバラエティであり続ける限り、好影響を受けられるのではないか。

■次の“贔屓”は…自ら再現VTR出演で気合十分! 『松岡修造の「先生も悩んでます」』

(左から)劇団ひとり、松岡修造、滝川クリステル、川淵三郎氏=テレビ朝日提供

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、14日に放送されるテレビ朝日系バラエティ特番『松岡修造の「聞いてください!先生も悩んでます」』(18:56~20:54)。

同番組のコンセプトは、「ふだん立場上、弱い顔を見せることのできない先生の悩みを徹底調査し、再現ドラマで紹介。悩みの問題点を掘り下げることで先生たちを全力で応援していく」。今年だけでも、体罰、給食、部活動、スマホ、SNS、教師間いじめの問題が取りざたされるなど、「学校の先生」は社会的な関心の高いテーマと言っていいだろう。

「先生」がテーマの番組も珍しいが、同等以上に惹かれるのが松岡修造。「『少しでも先生の悩みを自分事として感じたい』という思いから再現VTRにも出演した」というから、いつも以上の熱血ぶりが見られるのではないか。

今回は学校の先生にフィーチャーしたが、好評なら今後は、医師、政治家、小説家、その他各界の専門家など、さまざまな展開も考えられるだけに、ぜひチェックしておきたい。

著者:木村隆志(きむら たかし)

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。