テレビ解説者の木村隆志が、先週注目した“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。第98回は、22日に放送されたフジテレビ系特番『池上彰×サザエさんスペシャル お茶の間ニッポン史50の解説でございま~す!』をピックアップする。

国民的アニメ『サザエさん』放送50周年を記念したスペシャル特番。「スタジオにサザエさんが登場し、池上彰とともにアニメ内で描かれた世相を振り返っていく」という斬新なコンセプトに興味をそそられる。

さらに、池上がサザエさんに「貯金はしているの?」「マスオが浮気したら?」などと切り込むコーナーもあるという。24日にスペシャルドラマ『磯野家の人々~20年後のサザエさん~』が放送されたことも含め、『サザエさん』というコンテンツそのものも掘り下げていきたい。

  • サザエさん(左)と池上彰氏

■「池上×サザエ」ベテラン同士息ピッタリ

番組冒頭、池上彰とサザエさんが「はじめまして」と初対面を果たす。平面のアニメではなく、CGの3Dサザエさんが動く姿は新鮮であり、そのクオリティは想像以上に高い。オープニングトークでは、サザエさんが「初MC」であることが明かされたほか、「いい質問ですね」「ございま~す!」とお互いの決めゼリフを使い合うなど、業界のベテラン同士、まったりとしたムードを作るべく息の合ったところを見せた。

続く番組コンセプトを説明するナレーションと映像は、一転して力感たっぷり。

「2531回放送、最高視聴率39.4%、テレビ界が認める国民的アニメ」「1969年10月5日にスタートし、サザエさんは先月でちょうど半世紀、放送50周年を迎えました。世界で最も長く放送しているテレビアニメ番組としてギネス世界記録を更新」「もともとは福岡県の地方紙『夕刊フクニチ』ではじまった長谷川町子作の4コマ漫画。それが高度経済成長さなかにアニメ化され、昭和・平成・令和とニッポンの世相を映してきました」

「今日はアニメ『サザエさん』50周年を記念した1度限りのスペシャル企画! 実際にサザエさんをスタジオにお迎えして池上彰、豪華ゲスト陣と夢の共演。『サザエさん』に描かれてきた時代を映すニッポンの出来事をテレビ初司会・フグ田サザエさんとともに池上さんが徹底解説。さらに池上無双、炸裂! 禁断の質問の嵐に…いったいどうなる?」

アニメそのままのセットが再現されたスタジオには、サザエさんと池上彰に加えて、進行に高島彩、ゲストに実写版のサザエさんを演じる天海祐希と、「50周年記念応援サポーター」として勝俣州和、生駒里奈、大久保佳代子、森矢カンナ、寺田心、田山涼成が座っていた。

いずれも「いかに特別な番組であるか」を伝えようとしているのだが、ワクワク感がないのは、『サザエさん』が持つ穏やかな世界観によるものなのか? それとも他の理由があるのか…?

■「禁断の質問」コーナーが悪目立ち

本編に入ると、「サザエさんで描かれたニッポン史」として、大阪万博、押し売り、ベビーブーム、皇室、福引、家電、配給、昭和のスター、光化学スモッグ、海外旅行、埋蔵金、セレブ避暑地・軽井沢、太陽族、手渡しボーナス、東京オリンピックなどをピックアップ。古いアニメ映像や原作漫画をたっぷり使いつつ、実際の映像資料や池上の解説を交えて、歴史を振り返っていった。

その中には、「磯野家には1969年の第1回から押し売りが来ていた(50年で計14回)」「サザエさんは50年で1611回失敗し、波平は451回『バカモノ!』と言った」「新聞漫画には加藤一二三やデヴィ夫人も登場していた」「初海外旅行はマスオさんが懸賞に当たって着物でヨーロッパへ」などのトリビアも多く、50周年らしいファンサービスとなっていた。

ただ気になったのは、「禁断の質問 サザエさんに池上彰が切り込む」というコーナー。番組冒頭から何度もあおり映像を入れ、「世紀のショー」とまで言いながら、「マスオさんへの不満やクセは?」という質問に「欠点をあげるよりいいところを見たい。もし言うならおだてにノリやすい」、「貯金はどれくらいある?」という質問に「タラちゃんのこともあるのでコツコツと積み立てております」、「もしマスオさんが浮気したら?」という質問に「してみたら面白いですね」、「好きなテレビ番組は?」という質問に「『サザエさん』」、「好きな芸人は?」という質問に「大谷翔平さん」。

1つもトピックスにならないレベルの残念な回答であり、前述したワクワク感がなかったのは、こうなることを何となく予想できていたからに他ならない。もし「『サザエさん』の世界観を壊さないために具体的な答えはさせられない」と言うのなら、最初から視聴者をあおらないほうがいいだろう。

ニッポン史を振り返る本編以外のサブコーナーには、「レアグッズが当たる『サザエさん×池上彰スペシャルコラボじゃんけん』(計4回)」、「池上彰出演アニメ特別版(計4本)」などもあったが、明らかに「禁断の質問」だけが悪目立ちしていた。

■「唯一のほぼゴールデン帯アニメ」という重責

エンディングはオープニング同様の2人トークで、テーマは「『サザエさん』が50年続いたワケ」。

池上が「いつもの人が出てきて、いつものやり取りがあって安心できる。それをみんな求めているんだと思います」「長谷川町子さんは戦争直後から漫画連載をスタート。もう二度と戦争が起きてほしくない。平和な日々がほしい。大したことが起きない日常を描きたい。それが『サザエさん』だった」「日曜日の夜、みんなで『サザエさん』を見て『今週もまたいよいよ新しい週がはじまるんだ』という生きる勇気を与えてくれる」と解説した。

スタッフの「はい以上です。おつかれさまでした」という声で番組終了…と思いきや、「CG制作3か月! 初共演舞台裏」というエピローグがスタート(※一部地域除く)。制作チームが声優・加藤みどりのコメントに合わせて全530カットを手がけ、顔と体は500パーツ以上作ったことなどが明かされた。ちなみにラストカットは、池上がアニメのアフレコで苦戦している姿。「スタッフの努力を見せるためのエピローグかな」と思わせておきながら、結局は脱力で締める構成が、いかにもサザエさんらしかった。

サザエさんと池上彰という人気コンテンツをかけ合わせた特番ながら、視聴率(ビデオリサーチ調べ・関東地区)は7.2%と厳しい結果に。「サザエさん、池上彰、ニッポン史という中高年層に強そうな企画だから視聴率は獲れるのでは」という前評判を裏切る形となってしまった。

「さすがに4時間は長すぎた」という声もあるが、23日放送の『逃走中15周年記念! 50周年のサザエさんとコラボスペシャル』が8.0%、24日放送のドラマ『磯野家の人々~20年後のサザエさん~』が8.8%と、2時間の関連特番も低迷。一方で、1時間拡大した90分版の『アニメ「サザエさん」放送50周年記念スペシャル』は13.1%と通常回を上回った。

視聴者の本音は、「『サザエさん』は通常のアニメで楽しみたい」「関連企画は興味がない」なのか。フジテレビとしても最重要ランクのコンテンツであり、もともと「50周年」などの大義名分がなければ活用しづらいはずだが、今後はさらに慎重な取り扱いが求められそうだ。

ともあれ、『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』(テレビ朝日系)が土曜夕方に移動した今、『サザエさん』は「最もゴールデンタイムに近い全国ネットのアニメ」という重責を兼務することになった。

また、ドラマに目を向けても、一般家庭の日常を描いたホームドラマがごくわずかとなり、その意味でも現行の『サザエさん』を保つ必要性は高まっているのではないか。この先、視聴率が低迷する期間が訪れたとき、フジテレビは我慢できるのか? 「打ち切られてしまうのでは…」と不安な人はリアルタイムで見て支援するべきだろう。

■次の“贔屓”は…野球のみでも結果を得られるか? 『プロ野球珍プレー好プレー大賞』

(左から)元木大介、炭谷銀仁朗、松田宣浩、秋山翔吾、福田秀平、角中勝也、石川雅規 (C)フジテレビ

今週後半放送の番組からピックアップする“贔屓”は、12月1日に放送されるフジテレビ系特番『中居正広のプロ野球珍プレー好プレー大賞2019』(19:00~21:54)。

『プロ野球ニュース』内のコーナーをベースに作られた1983年11月の第1回から毎年放送されるなど人気を集めたが、視聴率は徐々に低下。2005年でいったん打ち切られ、2010年の復活後もローカル枠の午後放送に留まっていたが、中居正広の冠番組になった2015年にゴールデン復帰して今回で5年連続となる。

ただ、地上波ではなくCSや動画配信サービスでの視聴が広まったほか、野球以外の人気スポーツが年々増える中、「野球単独のバラエティでは視聴率が取れない」と言われているのも事実。

実際、「プロ野球にわかファンも大歓迎! 1年1度だジャッカルSP!」という今回のサブタイトルは「ラグビー人気にあやかりたい」という願望が透けてみえるだけに、どんな構成で挑み、どんな結果を得るのか興味深い。

著者:木村隆志(きむら たかし)

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。