競馬場での新しい遊び方を探る本連載。第2回は馬とのゆかりも深い千葉県船橋市にある船橋ケイバ(船橋競馬場)を訪れた。南関競馬(南関東4競馬場)のなかでもレトロな雰囲気を色濃く残す当地で、グルメとレースを存分に堪能してきた。
昭和レトロを味わうなら今!
複数の鉄道路線が走るなど都心へのアクセスも良好で、住みたい街ランキングでも上位に名を連ねる船橋市。現在は千葉県で2番目となる63万人が生活する都会である一方で、かつては江戸幕府の馬牧(うままき=放牧場)が置かれるなど、古くから馬産地として名が知られてきたのをご存知だろうか。
例えば、新京成電鉄の駅名にも使われる“高根木戸”という地名。これは、馬牧の出入り口に、馬が逃げ出さないように設ける木戸(門)に由来する。船橋市が馬産地であったことの名残だ。
そんな当地にある船橋競馬場は1950年の開業。当時は内馬場内にオートレースのダートコースを併設していた。日本で初めてオートレースが開催された発祥の地としても知られている。
長い歴史を誇る船橋競馬場だが、施設の老朽化が進んでいて、2019年3月には大規模改修計画(2023年完成予定)が発表された。より安全な競馬場に生まれ変わるのは嬉しい半面、ノスタルジックな雰囲気が失われてしまうのは、なんとも残念だ。そこで、昭和の風景が消えゆく前に、昔ながらの競馬場グルメを楽しもうというのが今回の狙いだ。
濃厚すぎる「煮込み」に出会える「田久保」
船橋ケイバのグルメといえばモツ。ということで、1軒目は船橋競馬場と同時に開業した当地随一の老舗「田久保」(アタリーナ前)に決めた。聞けば、モツの提供も最初に行ったそうで、船橋ケイバ=モツのイメージを根付かせたのが同店といっても過言ではないだろう。
目の前で焼き上がる「もつ焼き」に後ろ髪を引かれつつも、今回選んだのは「煮込み」(450円)だ。豚の白モツとガツ(胃)、こんにゃくを味噌でじっくりと煮込み、白ネギを添えた煮込みは、濃い味付けが特徴だ。その理由は「お酒と一緒に注文されることが多い」(店主)ため。実際に口にしたところ、思わず声が出そうになったほど濃厚な味わいだったが、お酒と一緒だと考えると、このパンチ力は歓迎できる。この煮込みを使った「煮込み丼」(500円)もラインアップされていたが、間違いなく、ご飯が止まらない丼に仕上がっているはずだ。
もう1つの名物はカレー風味のあんかけ焼きそば!?
次に足を運んだのは「東西売店」(スタンド1階)だ。同店の「もつ串」は『マツコと有吉の怒り新党』の「新三大・絶対にハズさないギャンブル場飯」でも紹介されているため、なんとなくご存知の方もいるかもしれない。
もつ串に間違いがないのはもちろんだが、今回紹介したいのは、もうひとつの名物グルメである「あんかけ焼きそば」(380円)だ。あんかけ焼きそばといえば、カリッとしたかた焼きそばをイメージするが、こちらの場合はソース焼きそばの上に餡を乗せたB級グルメ。スタッフの「隠し味にカレーを使ったカレー風味の味付けでおいしいですよ」という言葉通り、こってりとしたコクのある味わいが絶品だ。
目の前を駆け抜ける競走馬に一喜一憂
名物グルメを堪能し、ふとコースに眼をやると、ちょうど「第66回日本テレビ盃」が発走の直前だった。このレースは、地方競馬のダート重賞の1つ。日本テレビが、民放初の競馬中継として船橋ケイバを放送したことを記念し、1954年に始まった歴史あるレースだ。現在はJRA(日本中央競馬会)との交流重賞として、地方競馬のみならず、JRAからも有力馬が集まることで知られている。
レースはというと、単勝1.1倍の圧倒的な支持を集めたクリソベリル号が、直線に入るやあっという間にほかの馬を突き放し、2着に4馬身差をつけて圧勝した。船橋ケイバ所属の2頭は4着、5着に善戦するも、差は大きかった。
馬券という意味でいえば堅い決着となったため、配当的妙味は少なかった。それでも、最後の直線で、応援する馬に大勢のファンが一体となって声援を送る臨場感は、決してほかのスポーツに劣るものではなく、また、紹介したように魅力的なグルメもたくさんある。大人1人100円の入場料で1日遊べることを思えば、休日を競馬場で過ごすのもアリな気がしてこないだろうか。