東海道・山陽新幹線の「EX予約」サービスは新幹線専用のため、在来線区間は別料金となる。IC乗車券と連動した「スマートEX」を使う場合は、在来線の乗車駅から新幹線乗換駅までの運賃が自動的に差し引かれる。降車時も在来線乗換駅から在来線の駅までの運賃が差し引かれる。

しかし、グループ旅行などで複数の座席を予約した場合など、紙のきっぷを発券したときは少々厄介だ。「EX予約」のきっぷは東海道・山陽新幹線専用だから、在来線の駅では使えない。在来線の駅を利用する場合、在来線のきっぷ、またはIC乗車券を使って電車に乗り、新幹線乗換改札口で在来線を通してから新幹線のきっぷを使う。自動改札機で処理できるけれども、慣れないと引っかかるし、そのために案内係員が待機している。

では、在来線に乗車しない場合、新幹線駅の在来線改札口から新幹線に乗りたいときはどうなるか。たとえば東京駅や熱海駅などから乗る場合。両駅とも新幹線の駅はJR東海、在来線の駅はJR東日本で別会社となる。本来なら「EX予約」のきっぷでは在来線の改札を利用できない。

  • 筆者のiPhoneに取り込んだ「Suica」の履歴 「東京駅→東京駅」が「支払いなし」になっている

じつは、東海道・山陽新幹線の専用きっぷだから、会社が違わなくても、JR東海やJR西日本の在来線の駅を使う権利もないというタテマエだ。在来線の駅を利用するなら、在来線の駅の入場料金が必要になるのではないか。

それはいくらなんでも杓子定規すぎる。駅の外につながる新幹線専用改札口があれば、そこへ行けばいい。しかし熱海駅・西明石駅・姫路駅・相生駅・三原駅は新幹線専用の改札口がない。乗換改札口を通って、必ず在来線の改札口を使う。それでも在来線駅の入場料を取るなんて、利用者としては納得できない。

安心してほしい。東海道・山陽新幹線の「EX割引」は、在来線の改札口だけを使う場合は入場料金不要というしくみになっている。IC乗車券を使って自動改札を入場した場合は、新幹線乗換改札でもう一度タッチする。「EX割引」のきっぷと同時に処理すれば、入場料はナシ。ICカード乗車券から料金を引き落とされない。

このルールは東京駅でも適用される。筆者が実際に試してみたところ、東京駅の東海道新幹線乗り換え改札で「Suica」をタッチし、在来線の丸の内改札口でタッチしたけれど、画像でも紹介している通り、履歴は「支払いなし」となった。

東京駅はIC乗車券を持っていなくても便宜を図ってくれた!

問題はIC乗車券を持っていない場合だ。紙の入場券を買わなくてはいけないのか。それはなんだか不公平ではないか。

そこで、JR東海の公式サイトにはこんな記述がある。

・交通系ICカードをお持ちでない場合
熱海・三島・掛川・名古屋・西明石・姫路・相生・福山・三原の各駅では、係員のいる改札口でお申し出いただければ、在来線コンコースをお通りいただけます。

在来線改札の有人窓口に新幹線用のきっぷを見せて申し出ると通してくれる。駅によって異なるけれど、入場券の代わりになる紙片を渡されて、それを新幹線乗換改札で渡すという手順になるようだ。名古屋駅・三島駅・掛川駅・福山駅は新幹線専用改札もあるけれど、在来線駅構内を迂回すると遠回りになってしまうから、同じ便宜が図られている。

ところが、ここに東京駅が含まれていない。路線バスや東京メトロ丸ノ内線で東京駅に来た場合など、丸の内改札口を使いたいけれど、「EX割引きっぷ」は使えない。大原則として「自由通路を利用して八重洲口に回って、新幹線改札口を使ってください」あるいは「入場券を購入して東京駅構内を通過し、新幹線乗り換え改札を利用しなさい」となる。

自由通路といっても、改札外で丸の内側から八重洲側へ向かう通路は、最も近くて北自由通路だ。丸ノ内線から東京駅に向かうと東京駅丸の内中央口が近い。しかし、ここから改札を通らずに八重洲口に行くとかなり遠回り。ICカード乗車券を持っていれば改札内を直行できるけど、持っていなかったら……。

そんなときは、丸の内改札口の係員に相談してみよう。他の新幹線駅と同様に、改札内を通してくれる場合がある。

  • 東京駅でも在来線改札から新幹線乗換口に行ける

先日、筆者も「EX予約」で手配してもらったきっぷで丸の内口から乗ろうとして、改札口で通せんぼされてしまった。有人改札に行くと「JR東海のきっぷだから通れない」という。「ここから一番近い新幹線改札はどこですか、発車の時刻も迫っているし困ったな」と言ったら、「出場券」という紙片をくれた。「次回は専用改札をお通りください」という但し書きが付いていた。今回は発車時刻が近いので、特別に通してくれたようだ。

いま思うと、IC乗車券で通れる方法を教えてくれたら良かった。でも、その説明より紙片を渡して「これでどうぞ」のほうがわかりやすい。粋な計らいに感謝しつつ、もしかしたら筆者の慌てる様を見て、「普段電車に乗らない人」と思われたか、あるいは人相が悪くて「外国人、たとえばアジア系のマフィア」と勘違いされたかも(笑)。

いずれにしても珍しい体験ができた。本来は、車椅子利用者やお年寄りなど、遠回りが辛そうな人向けの便宜なのだろう。便宜だからと、いつもこうしてくれると期待してはいけないと思う。筆者は次からIC乗車券で堂々と通り抜けようと思った。でも、本当はこの仕組みを制度化してくれると良いんだけどね。