俳優の町田啓太が主演するフジテレビ系ドラマ『テッパチ!』(毎週水曜22:00~)。1クールの連ドラで、陸上自衛官になるべく候補生として厳しい訓練を受けて成長していく第一部と、部隊に配属して実際の現場に出て任務を遂行していく第二部による「二部構成」、そして「陸上自衛隊」が舞台というのも異例の作品だ。

防衛省の全面協力によって実現した今作は、どのように生まれたのか。企画・プロデュースの栗原美和子氏(共同テレビ)と、企画の渡辺恒也氏(フジテレビ)に、キャストの魅力や彼らに課したミッションなどを含め、話を聞いた――。

  • 自衛官候補生のキャストたち(左から 坂口涼太郎、一ノ瀬颯、佐野勇斗、佐藤寛太、池田永吉、町田啓太、藤岡真威人、時任勇気) (C)フジテレビ

    自衛官候補生のキャストたち(左から 坂口涼太郎、一ノ瀬颯、佐野勇斗、佐藤寛太、池田永吉、町田啓太、藤岡真威人、時任勇気) (C)フジテレビ

■災害支援時で一番身近に感じる組織

――なぜ陸上自衛隊という題材をドラマにしようと思ったのでしょうか。

栗原:20年くらい前から陸上自衛隊を舞台にした青春ドラマをやりたいというのがあったんです。「男臭い」というか、頭で考えるより先にハートで体が動いちゃうみたいなイメージがあるのと、災害とかが起きたときに、一生懸命国民のために動いてくれるじゃないですか。その人としての懐の深さ、大きさが全体的に熱い人間たちの集まりなのかなと思って。特に陸上自衛隊にこだわったのは、災害支援のときに一番身近に感じる組織だと思って、そこの若者の姿が描きたいというのがあったんです。いろんな職業の選択がある中で、昔から言われる「歩兵」というものを選ぶ人たちには、きっと何かスピリットとして熱いものを持った人たちなんじゃないか、そういう男の群像を描きたいというのが前からありました。今回、水曜10時という新しい枠ができて、テーマが「ニューヒーロー」と言われたときに、「もう今しかない!」と思って自信満々で企画を出したら、案の定「いいですね」と言っていただけて、すごくうれしかったです。フジテレビが世間に対して見せたいと思っているものと、私がずっと思ってきたものが合致したなというのが、今回はうれしいですね。

渡辺:共テレさんから企画を頂いて、いろんな職業もののドラマがあると思うんですけど、単純に陸上自衛隊というのはどういう人たちがどのように働いて我々の暮らしや生活を守ってくれている人なのかという興味が、視聴者の方にもわいていただけると思ったんです。陸上自衛隊を舞台にした連ドラはなかったので、新しい登場感のある作品になると思って「やりましょう!」となりました。

――枠のテーマである「ニューヒーロー」にもかなった作品でもあると。

渡辺:決まった定義があるものじゃないんですけど、水曜10時は今までに見たことあるようなドラマとは違うもの、新しい面白さがお届けできるようなものであればジャンルを問わずにやっていこうという枠です。女性の視聴者に楽しんでいただけるように、男性が主役のものをイメージしてスタートしたので、今回は町田啓太さんが主演ですが、それ以外の候補生や、第二部でいうと陸上自衛隊という特別な職場で働く自衛官たちが、新しいヒーロー像として当てはまるのではないかというところで、今回の企画がスタートしました。

■男たちの熱い汗がほとばしる「懐かしい感じ」

――「青春群像劇」は、今の時代に求められているジャンルというのを感じますか?

渡辺:言い方は今っぽくないですが、「イケメンだらけの青春群像劇」は何年か1回にヒット作が出ていているんですけど、最近あまり見てないなという印象がありました。たまたま今回は陸上自衛隊という職業が舞台ですけど、個性豊かなメンズが勢ぞろいする群像劇というジャンルとしては、そろそろ求められている時期が来ているんじゃないかなと、企画を頂いたときに思いました。この水曜10時は4月に始まって2作品目になるんですけど、どこか懐かしい、安心感を持って楽しめるストーリーだと思うので、連続ドラマならではの醍醐味である、自分の推しメンを見つけて、一緒に成長していく様を見て応援してもらえるようなドラマになるといいかなと思っています。

栗原:そうですね、懐かしい感じがするかもしれないですね。いろんなドラマのジャンルがあって、その中の定番のひとつになるんじゃないかと。出演者の北村一輝さんに「私が幼い頃に見ていた青春ドラマのような感じなんです」って言ったら、「『われら青春!』(74年、日本テレビ)でしょ!?」という話になって、町田さんと佐野勇斗さんはキョトンとしていたんですけど(笑)、そういう熱い汗がほとばしる感じの男性たちがいっぱいいる青春群像劇というものは、今、渡辺さんがおっしゃったように定期的に求められているんじゃないかなと思うんですよね。奇しくも夏クールが多いイメージがありますし、撮影は戦闘服を来て炎天下、本当に暑くて大変ですけど、“暑い夏に男たちの青春ドラマ”というのは、ひとつ定番としてあるのかなと思っています。

  • 渡辺恒也氏(左)と栗原美和子氏

――若者たちが陸上自衛隊の候補生として奮闘するという今回の作品に、SNSの反応を見ると警察学校を舞台にした『教場』のような感じをイメージする人もいたようですが、『教場II』のプロデューサーも務めていた渡辺さんから、この2作品の違いを改めて伺えましたら。

渡辺:まずテイストが全然違いますね。『教場』は生徒が抱えている問題を風間(木村拓哉)という教官が見抜いていくミステリーですが、今回は全くミステリーではないので。また、“規律に縛られた生活を送る生徒たち”というところは一緒ですが、あまり自衛官候補生の生活が厳しいものだというところは強調して描きたくないと思っています。もちろん、いざとなったときに力を発揮するために、きちんと規律を守っている方たちなんですが、その中でも仲間内で楽しめることを見つける喜びが積み重なっていくところを見せていくとか。物語の中盤で、候補生たちが訓練を終えて修了式で感動するところのゴールは似ているかもしれませんが、そこに至るまでのプロセスは、描き方も中身も全然違うものになっています。

栗原:私から見て一言でいうと、『教場』は真面目なドラマで、『テッパチ!』は不真面目(笑)。それくらい違いますね。