本連載の第95回では「異動先の部署で活躍する人材になるために自分を差別化しよう」と題し、異動先で自分を差別化して活躍するために考えておくべきことをお伝えしました。今回はこの春で就職や転職、あるいは部署異動で新しく部署に入った人からの情報を業務改善のきっかけととらえましょう、というお話をします。

この春から就職や転職、或いは異動や転勤などで新しい人が加わったという部署は少なくないでしょう。以前からその部署にいる人と、参画して間もない人の間では何らかの不協和音が起きることが珍しくありません。「郷に入っては郷に従え」という言葉はありますが、不協和音が起きたときに「よそから来た人がうちの部署の慣習に合わせるべきだ」という考えで即座に相手の言動を否定したり変えさせたりしようとする人がいます。

しかし、こうした行為によって組織を強くしたり部員の成長を促したりする機会を潰してしまっているかもしれません。中でも部署の常識に捉われない新卒社員からの質問や中途入社社員や他部署から異動してきた社員の発言には改善のヒントが隠されているかもしれないと捉えておくことをお勧めします。

新卒社員からの質問の活かし方

「この仕事は何のためにやるんですか?」
「この作業はどうやったらいいのでしょうか?」

前からその部署にいる人にとっては当たり前のことが、その部署に新しく来た人、特に新卒の新入社員にとってはそうではないということは多々あります。自分が分かり切っていることをたびたび質問されるのはストレスが溜まるかもしれませんが、煙たがっていてはもったいないかもしれません。

一つ目の「この仕事は何のためにやるんですか?」という質問は、その仕事の目的を改めて問い直すきっかけになります。このような問いに対しては「決まりですから」とか「そういうものなんです」などとお茶を濁すのではなく、相手が納得できるよう論理的に目的を説明しようと心掛けるとよいでしょう。もしも上手く説明できない、或いは相手に伝わらない場合には該当する仕事の目的について改めて問い直し、場合によっては不要なものとしてなくすという選択肢を考慮してもよいでしょう。

二つ目の「この作業はどうやったらいいのでしょうか?」という質問ですが、こちらは作業の手順を聞かれているということです。「なんでこんなことも分からないんだ」と苛立つこともあるかもしれませんが、その仕事が未経験の人にとっては「分からないのが普通」と捉えて対処する方が生産的です。その上で、その仕事の特性によって対処すべき方針を変えると良いかと思います。

例えば、定型的な仕事であればマニュアルを整備して対応するのが、長い目で見ると効果的です。既にマニュアルがあるのに質問されるのであれば、該当箇所の説明の記述を見直すのがよいでしょう。非定型的な仕事であれば、具体的な作業や所作というよりは気を付けるべきポイントを整理したり、予めやっておくべき準備を伝えるなどの対応を取るのがよいかもしれません。

中途入社社員や異動してきた社員からの発言の活かし方

「前の職場ではこういうツールを使ってましたよ」
「前いた部署では単価が低い案件の決裁権限を部長ではなく課長に持たせていましたよ」

中途入社や他部署から異動してきた社員は、自分がそれまでいた環境との比較で物事を見る傾向があります。そのギャップを感じたときにこのような発言をすることがありますが、古参の社員にとっては少しばかり鬱陶しく感じるかもしれません。

しかし、だからといってこのような質問をされた時に「よそのことは知らないが、うちのやり方に合わせてもらわないと困る」などと一蹴してしまうのは控えましょう。改善の目を摘んでしまっているかもしれないのでお勧めしません。

一つ目の発言「前の職場ではこういうツールを使ってましたよ」というのは少々偉そうに感じる方もいるかもしれませんが、この発言の意図するところは「もっと便利なツールがあるのだから使わない手はないですよ」という情報提供に他ならないでしょう。それならば感情的に反発するよりは「そうなんですね。そのツールはどんなメリットがあるのですか?」と突っ込んで聞いてみる価値があるかもしれません。それで本当にそのツールにメリットがあれば既存のツールと取り換えることを検討すればよいですし、そうでなかったとしても既存のツールが本当に現在においても最適なものかを今一度検討するきっかけになるかもしれません。

二つ目の発言「前いた部署では単価が低い案件の決裁権限を部長ではなく課長に持たせていましたよ」ですが、こちらも「うちの部署のルールなのだから放っておいてくれ」と思うかもしれませんが、そもそも今のルールが最適なのかを問い直すきっかけと捉え直すこともできます。もし部長の権限の一部を課長に移譲できれば、業務のスピードを上げることができるかもしれません。もちろん、その際にはリスクとのバランスを考慮する必要はあります。

ここまでで見てきたように、新卒の新入社員や中途入社社員、あるいは他部署から異動してきた社員からの質問や発言は時として業務の改善に繋がるきっかけを与えてくれます。感情的に反発するのではなく、古参の社員では見落としがちな改善機会を見つけるための貴重な情報源として扱ってみてはいかがでしょうか。