本連載の第3回では、作業計画を作る際に気を付けるべきことをお話しました。今回は効率的・効果的に仕事を行うために、そもそも「やらなくてよいこと」を見極める方法についてお話します。

仕事の中に「やらなくてよいこと」を見つけよう

「うちの部署は仕事が多すぎて、定時で帰るなんてとても無理」という人、多いと思います。でも、もしそれが本当なら、裏を返せば「仕事を減らせば定時で帰れる」ということですよね。そうすると今度は「仕事を減らすなんて、けしからん」という声が聞こえてきそうですが……。

そこで、少し仕事について考えてみましょう。ここでは便宜上、仕事について「自分以外の誰かの役に立つことを行って対価を得ること」と定義をします。そして、自身が行っている仕事のすべてがこの定義に当てはまっているか、再点検してみてください。もし当てはまらないことがあれば、それはやめても差し支えのないことでしょう。

ところが、この時点で「やらなくてもよいこと」を掘り出せる方は少数派で、しかもそのような方でも「元々、無駄なのではないかと思いながら渋々やっていた」ことに限られるかと思います。

そこで、以下では効果的に「やらなくてよいこと」を発見する方法をお伝えします。

方法その1:誰の何の役に立っているかを書き出す

まずはご自身の一日の仕事すべてをリストにしてください。その際、「受注業務」「発注業務」「顧客管理」「業績管理」などの大きな括りから書き始め、そこから徐々に細かく分割していきます。例えば「業績管理」なら「地域別業績管理」「担当者別業績管理」などに分けて、さらに「地域別業績管理」を「都道府県別業績管理」「市区町村別業績管理」「学区別業績管理」などに分けて、さらに……と細かく分けていきます。

そして、ある程度細かくなったところで、各々の仕事が「誰の何の役に立っているか」を、その横に追記していきます。その際に、もし行き詰まることがあったとすると、その仕事は「やらなくてよいこと」の候補になります。

例えば「地域別業績管理」の目的が「地域ごとに顧客のニーズや競争相手が異なることを踏まえて営業戦略を変えているが、それが功を奏しているか否かを時系列の定量データで確認し、迅速かつ柔軟に対応するため」だったとします。この場合は「営業が地域のニーズや競争相手に合わせて戦略を調整するのに役に立っている」ということになります。

しかしながら、「地域別業績管理」を最も細かく詳細化した「学区別業績管理」はどうでしょうか。会社で扱っている商品やサービスの種類によっては意味のある管理かもしれませんが、大抵の会社では、あまり意味のある分け方とは思えません。

こういう仕事の多くは、なぜやっているのかと問われると「前任者から引き継いだから」という理由に留まってしまいます。これは残念ながら「誰の何のために役に立っているのか」という問いの回答にはなり得ませんので、「やらなくてよいこと」ではないかと疑ってみましょう。

方法その2:リストを他の人に見てもらう

先ほどの例では無事に「やらなくてよいこと」の候補を見つけ出すことができましたが、仕事をリスト化して「誰の何の役に立っているか」を書き出しても、まだうまくいくとは限りません。この時点で、すでに自分の仕事の5%でも「やらなくてよいこと」を炙り出せていれば御の字で、一つも特定できていない人も多いかと思います。

しかしながら、ここで諦めてはなりません。先ほどのリストを活用して、「やらなくてよいこと」を見つけ出す強力な方法が存在するのです。

それは、自分が作ったリストを他の人に見てもらうことです。自分以外の人、できれば他部署の人にリストの内容を説明し、「この中で不要だと思う仕事があれば遠慮なく言ってください」と依頼します。そうすることで個人の先入観や部署の常識にとらわれずに、「この仕事をやっている理由がよく理解できない」といった客観的な意見をもらえるはずです。つい反論したくなるかもしれませんが、そこは我慢して素直に話を聞きましょう。それはきっと「やらなくてよいこと」の候補になるはずです。

さらに欲を言えば、先ほど書き出した「誰の何の役に立っているのか」の「誰」に挙げた人にチェックしてもらうのが最も効果的です。なぜならば「その人の役に立っているかどうか」は本来、自分ではなく相手が判断するものですから。

日常生活でも、自分が「相手によかれと思ってやっていること」が実は相手にとっては無意味だったり、場合によっては煩わしくすら感じていたとわかって落ち込むことや、その逆に相手からの厚意がかえって面倒に感じたりすることはあるかと思います。また、そう感じても相手に伝えるのは億劫なので、適当に謝意を伝えてその場をやり過ごすことのほうが多いのではないでしょうか

まして、ビジネスの場で「あなたのこの仕事、無駄だからやめましょう」と指摘されるケースは、余程のことでもない限り起きないでしょう。だからこそ、勇気を持って、こちらから相手に尋ねるのです。そうすることで、実は相手にとっては過剰サービスだったことが判明して「やらなくてよいこと」がいくつも出てくるかもしれません。

今回は仕事の中に紛れ込んでいる「やらなくてよいこと」を見つけ出す方法をお伝えしました。それがうまくいったら、周りにしっかり説明した上で、試験的にそれをやめてみましょう。万が一、何か不具合が起きたのであれば、すぐに試みを中断して原因を探り、対策をとればよいですし、何事も起こらなければそのまま本格的に仕事から除外すればよいのです。「やらなくてよいこと」を特定し、省くことで時間の使い方を効率化して定時上がりに近づいてもらえれば本望です。

著者プロフィール:相原秀哉(あいはら ひでや)

株式会社ビジネスウォリアーズ代表取締役

慶應義塾大学大学院修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)入社。グローバルスタンダードの業務改革手法、Lean Six Sigmaを活用したコンサルティングを得意とし、2012年に日本IBMで初めて同手法の伝道師 "Lean Master"に 認定される。その後、幅広い組織や個人の生産性向上に寄与するべく独立。生産性向上による働き方改革コンサルティングや、コンサルティングスキルを実践形式で学べるビジネスブートキャンプを手掛ける。