本連載の第44回では「テレワークのコミュニケーションを円滑にするためにやるべきこと」と題し、テレワークでのコミュニケーションを効果的にするためのコツをお伝えしました。本稿ではテレワークという特殊な環境下だからこそ「成果主義」にシフトすることの意義とメリットをお伝えします。

努力主義から成果主義へ

テレワークへの移行は部下を持つ上司にとっても頭の痛い問題を投げかけているのではないでしょうか。オフィスにいれば同じ空間にいるので部下が仕事をしている様子を容易に把握できたのに、テレワークが導入されてからは部下の様子を逐一確認することもままならず、ひょっとしたらサボっているかもしれないと不安になる方もいるかもしれません。

周囲から見られないのをよいことに、部下が「サボっているかもしれない」という不安を抱くことはもっともなことです。しかしながら、カメラアプリなどで部下の様子を常に見張るというわけにもいきませんし、そもそも在宅ゆえのプライバシー上の問題もありそうです。

ではどうするかということですが、「サボっているかもしれない」と疑心暗鬼になるくらいなら、いっそのこと「仮にサボっていたとしても気にしない」と意識を転換することをお勧めします。「そんな馬鹿な」と驚かれる方もきっといらっしゃるでしょうが、仕事に集中していようがサボっていようが、本来はその人が求められる成果を出し続けていればよいはずです。

同じオフィスで部下と仕事をしていれば自ずと部下の努力している姿が目に見えるので、たとえ成果が上がらなくとも努力していれば評価したくなるというのが人間の性です。特に残業までして仕事をしている人は「頑張っている」ことがわかりやすいので特に優遇されやすかったと思います。無論、その上で成果を上げていれば文句なしです。

一方、成果を上げていても毎日定時で帰っていたり、あまり努力しているように見えなかったりする人は「あいつはやる気がない」とか「残業してもっと成果を上げるべきだ」などと評され、冷遇されることがあったかもしれません。

しかし、そもそも企業が存続するには利益を上げなければならず、そのためには社員一人一人が求められる成果を上げ続けなければなりません。いくら社員が努力しても、長時間の残業をしても、成果が上げらなければ意味がないのです。さらに言えば、社員の努力や時間を減らす一方で成果を上げることによって生産性が上がるはずです。

そしてテレワークでは努力や時間の厳密な管理が難しくなっている今だからこそ、努力や時間から成果への評価の移行、すなわち努力主義から成果主義に転換するチャンスなのです。

1日の成果の捉え方を決めよう

当然ながら勤怠管理は行わなくてはなりませんが、それはそれとして成果主義に基づく部下のマネジメントをどのように行えばよいのでしょうか。「成果」と一口に言ってもすべての職種や社員に共通するものはないので、まずはご自身の職場、職種、社員に合った成果を定義し、部署内で合意することが必要です。以下では、その際の参考として一つの考え方を示します。

成果を定義する際にはまず、業務を「前もって予定している業務」と「突発的に発生する業務」に分けて整理し、さらに前者を「1日の内に完了させる業務」と「数日かけて完了させる業務」、「完了せずに継続する業務」に分けます。その上で、日々の成果を定義します。

・「1日の内に完了させる業務」は文字通り、当該業務の完了を持って成果とします。

・「数日かけて完了させる業務」についてはできれば1日単位での進捗の目安を設定し、そこまで終えたことをもって成果と見なします。

・「完了せずに継続する業務」は1日あたりの処理件数や入力件数などの目標値を立てて、その達成をもって成果とします。

・「突発的に発生する業務」については事前にある程度予見できるものは当該業務の特性を踏まえて完了、進捗、1日あたりの処理件数のいずれかに割り振りますが、あまりに細かい業務は成果を把握する対象外としてしまってもよいでしょう。

なお、「前もって予定している業務」だけで成果を定義して業務の計画を立ててしまうと「突発的に発生する業務」に対応するためのゆとりがなくなってしまう恐れがあるため、あえて明示的に分けています。

目標を立てて共有しよう

部下の業務を洗い出し、仕分けをして各々の成果の定義ができたら、それを日々の業務でどこまで行うか、目標を立ててお互いの共通認識としておく必要があります。

前述したとおりテレワークという環境下においてはお互いに相手の姿が見えないため、「努力」が見えません。そこで、「努力」の替わりに「成果」で評価すべきと考えますが、そのためには予め上司と部下の間で「目標」を共有しておくことが肝要です。

なぜなら、「目標」を与えないままに仕事を割り振ってしまうと、日々どこまでやればよいのか互いの共通認識が存在しないので、部下が「自分はしっかり成果を上げている」と主張する一方で、上司が「それでは成果を上げたうちに入らない」などと評価して、認識に齟齬が生まれてしまうという事態が避けられません。このようなことが何度も続くと互いに相互不信に陥ってしまい、もはや成果を上げるどころではなくなってしまいかねません。

そうならないために、成果の定義に加えて予め明確な目標を立てて共有しておくことが必要なのです。なお、できれば日次に加えて週次、月次で行って短期的な目標から長期的な目標まで設定するとよいでしょう。というのも一般的に「重要度が高い」けれど「緊急度は低い」仕事はつい後回しにされがちなので、週次や月次での目標設定・共有を図ることでカバーすることが必要だからです。

また、スプレッドシートやタスク管理ツールなどを用いて目標を可視化するとともに、いつ何をどこまでやったかという成果を振り返れるようにしておくと反省点・改善点を抽出できるのでお勧めです。

「百聞は一見に如かず」ということわざにもある通り、人はどうしても「目に見えること」を重要視してしまう傾向があります。そしてオフィスで一緒に働いていれば部下が一生懸命に働いているという「努力」を過大評価してしまう傾向があった方も多いのではないでしょうか。それが突然のテレワークへの移行に伴い「努力」が見えなくなってしまったことで不安になるのは当然です。

ですが、いくら不安になったところで「努力」が見えるようになるわけではないのでこれを機に「努力」の把握は諦めて「成果」にフォーカスしてはいかがでしょうか。テレワークかどうかに関わらず本来、仕事で重要なのは「成果」のはずです。本稿が「成果」を軸にした評価へと移行する際の参考になれば本望です。

筆者プロフィール: 相原秀哉(あいはら ひでや)

株式会社ビジネスウォリアーズ代表取締役
慶應義塾大学大学院修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)入社。グローバルスタンダードの業務改革手法、Lean Six Sigmaを活用したコンサルティングを得意とし、2012年に日本IBMで初めて同手法の伝道師 "Lean Master"に 認定される。その後、幅広い組織や個人の生産性向上に寄与するべく独立。生産性向上による働き方改革コンサルティングや、コンサルティングスキルを実践形式で学べるビジネスブートキャンプを手掛ける。