本連載の第43回では「テレワークでもモチベーションを維持するには」と題し、テレワークでのモチベーション低下の問題を取り上げました。緊急事態宣言の発令によって在宅勤務への転換がこれまで以上に推奨される状況を踏まえて、本稿では引き続きテレワークに注目し、オフィスと異なる環境での効果的なコミュニケーションの取り方を提示します。

新型コロナウイルスの影響で最近テレワークを始めたという方の中には、オフィスでの仕事とは異なるコミュニケーションに関する悩みを抱えていらっしゃる方も多いのではないかと思います。

自宅にこもって誰と話すこともなく独りぼっちで作業するので孤独を感じてなんとなくうつっぽくなってしまうとか、オフィスで仕事をしていたときより心理的な疲労感が大きいとか、自分の所属する組織や仲間に対して距離を感じ、気がついたら転職サイトを眺めているなど、心当たりのある方もいるのではないでしょうか。

離れているからこそ意識的にコミュニケーションを

オフィスで働いていたときには上司や同僚、部下から度々話しかけられて、その都度業務を中断させられてウンザリしていたという方でも、いざテレワークになると誰にも話しかけられず、独りポツンと仕事をしていると気が滅入ってくるということはありませんか。もしかすると上司や同僚、部下も同じように感じているかもしれません。

人と人のコミュニケーションの意義の一つに「相手の存在を認めてあげて、それを伝えること」があります。「おはよう」というただの挨拶でも、相手には「自分のことを気にかけてくれているのだな」と伝わります。ところがテレワークになると、このような何気ない挨拶すらかけてくれる人がいなくなってしまいます。また、職種にもよりますが終日誰ともやり取りすることがないまま終業時刻を迎えてしまうこともありえます。

このように誰からも自分の存在を認識してもらえないと感じる時間が長くなってくると、次第に活力が失われていくのは必然です。そして上司や同僚、部下もまた同じような状況に陥ってしまう恐れがあります。こうした事態を回避するために、仕事仲間とは意識して頻繁にコミュニケーションを取ることをお勧めします。

そしてその中で、「いつも迅速に報告してくれて助かるよ」とか「お客様からの問い合わせに丁寧に応対しているね」などと、相手のことをしっかりと気にかけていることがわかるような声かけをするとよいでしょう。ただし、「同期の他のやつよりうまくやってるじゃないか」という他者との比較や、「もっと頑張れよ!」という激励、「目標到達したのか、えらい!」というような評価などは効果を半減させてしまうのでお勧めしません。

この中で「評価」についてはわかりにくいかもしれないので捕捉しますが、これは「評価する側」と「評価される側」という位置づけを相手に印象付けてしまうので、受け手によっては素直に受け入れ難い場合があるということです。評価ではなく相手のことをよく観察し、尊重し、事実を伝えることが大事です。

なお、激励の「もっと頑張れよ!」は「頑張ってるね」と言い換えるだけで相手に伝わる印象は改善できますし、さらに「突然のテレワークへの移行に戸惑いもあるだろうが、こんな状況でも以前と変わらない質のアウトプットを出していて、よく頑張ってるね」などと、内容についての事実を含めて具体的に伝えると効果が増します。

効率を追求するからこそ雑談を含めよう

職場で働いていれば同僚とのやり取りの中でちょっとした冗談を言い合ったり、プライベートの悩みについて相談したりといった「雑談」は日々行われていることと思います。雑談そのものは仕事と無関係なので効率性の観点から排除すべきものと思われそうですが、実はそうではありません。雑談を通して、仕事に関する情報のやり取りだけではわからなかった相手の人となりを理解できたり、逆に自分のことを理解してもらうことができたりします。また、あえてプライベートについて話すことで相手との距離感が縮まる効果も期待できます。

そのため、このような「たわいもない話」は度を過ぎれば業務遂行に支障をきたしますが、逆に不足すれば相手との信頼関係の醸成や維持に悪影響を及ぼす恐れがあります。そして、テレワークという特殊な環境は相手との物理的な距離によってオフィスと比べて雑談をしにくい環境でもあります。無論、急ぎの用件を伝えたいときなどの緊急時には雑談などしている場合ではありませんが、そうでなければ適度に雑談を交わすことをお勧めします。

わざわざ雑談のためだけに相手に連絡を取ると「サボりたがっている」と思われるのではないかと不安な方は業務連絡の際に一言、自分や相手の趣味や家族の話、世間話などの雑談を振ってみることで自然にきっかけを作って話を展開させることができるでしょう。そして適度な雑談のやり取りによって相手との心理的な距離を近づけると共に、双方の気分のリフレッシュにもなるので自ずとその後の業務効率が高まることが期待できます。もちろん、「雑談に夢中になっている間に気がついたら1時間も過ぎていた」というようなことがあっては本末転倒なので、雑談への時間のかけ方に留意すべきことは言うまでもありませんね。

チャットやメール文化だからこそ声を交わそう

最近では「手軽だから」ということでチャットやメールを中心としたコミュニケーションを取るという職場も多いようです。そのような職場がテレワークに移行してもチャットやメールでのやり取りには支障がないので特に困らなそうですが、そこには落とし穴が存在するかもしれません。仕事仲間が職場にいれば、仕事上のやり取りなどを主にチャットやメールで行っていたとしても、実際に顔を合わせることによってお互いの表情や声、しぐさなど、多くの非言語情報を読み取っているものです。

しかしながら、テレワークになってもチャットやメールなどのテキスト情報だけのやり取りを続けてしまうと、その土台とすべき非言語情報のやり取りが失われてしまうことによってコミュニケーションの歪みが生まれてしまう恐れがあります。このような状況が長く続くとお互いに相手の真意がわかりづらくなってしまい、「あの人の反応は冷たい」とか「感謝が伝わりにくい」とか「以前は仕事を率先してやってくれていたのに今は渋々引き受けているように見える」といった感情面での不平不満が募ってくる原因になりかねません。

例えば部下にチャットで仕事を依頼したときに「わかりました、やります。」という短い文言が返ってきたら、人によっては「やる気がないのかな」と感じたり、「他の仕事で切迫していて余裕がないのかな」などと感じるかもしれません。しかしその文面の情報からだけでは確認が難しいですし、返事をした部下の立場に立つと、上司がそのように感じているとは知る由もありません。これでは相互不信に陥ってしまうのも時間の問題でしょう。

こうした事態を防ぐには、チャットやメールでのやり取りに加えて電話やビデオ通話、Web会議システムなどを用いたコミュニケーションを意識的に行うことが有効と考えられます。これらを併用して声や表情、ジェスチャーなどの非言語情報を相互にやり取りすることでテキスト情報だけでは伝わりにくい感情の把握がスムーズになり、コミュニケーションの円滑化が期待できます。なお、これらのツールによるコミュニケーションは一度に長時間行うより、短時間でも良いので多めに行う方がコミュニケーションロスを回避するためにも有効だと考えられます。

これから約1カ月間、テレワークが続くという職場も多いでしょう。オフィスとは違う仕事仲間とのコミュニケーションに戸惑っている方、やりにくいと感じている方にとって本稿の内容が少しでもお役に立てば本望です。

筆者プロフィール: 相原秀哉(あいはら ひでや)

株式会社ビジネスウォリアーズ代表取締役
慶應義塾大学大学院修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)入社。グローバルスタンダードの業務改革手法、Lean Six Sigmaを活用したコンサルティングを得意とし、2012年に日本IBMで初めて同手法の伝道師 "Lean Master"に 認定される。その後、幅広い組織や個人の生産性向上に寄与するべく独立。生産性向上による働き方改革コンサルティングや、コンサルティングスキルを実践形式で学べるビジネスブートキャンプを手掛ける。