本連載の第42回では「関係者全員の同意を原則とする意思決定の弊害とは?」と題し、意思決定の際に全会一致に拘ることの弊害と、反対者への対応方法のコツをお伝えしました。本稿からは数回にわたって新型コロナウイルスへの対応で急速に拡大しているテレワークに焦点を当てて、働き方の変化に伴って発生する問題を考察し、解決策を提示していきます。

これまでオフィスで働いていた人の多くが直近1か月ほどの間に在宅勤務へと転換し、いわゆるテレワークでの仕事にシフトしています。それによって満員電車での長時間通勤の苦痛から解放されて当初は喜んでいたという方でも、いざ始まってみるとテレワークならではの壁にぶつかっているという方は少なくないとお察しします。

その壁の一つとして考えられるのがモチベーションに関するものです。

1.オフィスで働いていたときよりダラダラしてしまって全く仕事が捗らない

2.注意散漫になってしまい、ふと気がつくと仕事とは無関係のことをやってしまう

3.わからないことがあっても、上司に聞きにくくて一人で悩む時間が長くなってしまう

これら3つは共に、時間単位当たりのアウトプット、即ち生産性の低下をもたらしてしまい、結果として残業せざるをえなくなったり、顧客へのサービスの遅延を発生させてしまったりする可能性があるので早急に対処すべきでしょう。

ルーティーンと期日の宣言でダラダラ仕事予防

自宅で仕事をするとなると、オフィスで仕事をしていた頃と比べてダラダラやってしまって遅くなってしまうということはありませんか。その原因は出勤することによる「プライベート」から「仕事」への気持ちの切り替えの欠如と、オフィスにいればあるはずの上司や同僚、部下などの「周囲の目」がないことによるのではないでしょうか。

「プライベート」から「仕事」への気持ちの切り替えの欠如については、自宅から出ないことによって気持ちがプライベートモードのまま勤務時間に突入してしまい、ズルズルと時間が過ぎていくことで仕事が進まないのに時間と疲労感だけが蓄積していって、終業時刻が過ぎたときに「仕事が全く進んでないじゃないか」と後悔の念に駆られてしまうようなケースを想定しています。

そうならないために、オフィスへの出勤に替わるルーティーンの実施をお勧めします。例えば「オフィスには行かなくても、パジャマや部屋着からスーツなどのビジネスウェアに着替えたり化粧をするなど身だしなみを整えたりする」「始業時刻になったら上司や同僚に挨拶の電話を入れたりメッセージを送ったりする」「一旦家の外に出て家の周辺を10分~15分ほど歩いてから自宅に戻って仕事に取り掛かる」などです。特に「自宅周辺を歩く」というルーティーンは、気分の切り替えと軽い運動による脳の活性化にもつながるので外出禁止令が出ない限りはお勧めです。

また、「周囲の目がない」ことによるプレッシャーの欠如については、自分から適度なプレッシャーを作ることが効果的です。具体的には、一日の始まりにその日の内にやらなくてはならないタスクを洗い出し、それぞれのタスクについて「何時までに終えるか」という期限を設定して、それを上司や仕事仲間に宣言してしまうことです。

「12時までに例の案件についての報告書を作成してお送りします」と上司に勝手に宣言したり、「15時までにプロジェクトの計画書を作成して共有ドライブにアップします」と仕事仲間に宣言したりするのです。無論、先に上司から期日を指定してタスクを依頼された際には必要ない場合もありますが、その場合でもさらに時間を区切って細かく「ここまでをこの時間までに終えます」と宣言することで自分にプレッシャーを与えて仕事をテキパキこなせるような環境を作ってしまうのです。

手間の追加とルールの設定で気が散るのを回避

自宅で仕事をする際、数分置きにスマホでSNSをチェックしてしまったり、友人からメッセージが届いたのをきっかけにLINEにハマってしまったり、テレビや漫画を観たり読んだりしてしまうなどして一向に進まないという経験はありませんか。また、人によっては炊事や掃除、洗濯や買い物などの家事が気になって度々仕事を中断してしまうこともあるのではないでしょうか。テレワークではオフィスでは起こりえない、このような仕事の阻害要因にも対処する必要があります。

まず、スマホやテレビ、漫画など仕事から注意を逸らす要因については勤務時間内だけでもうまく遠ざけるのがよいでしょう。ついついスマホでSNSやLINEなどのメッセージングアプリに興じてしまうのであれば、設定を通知オフに変えるのがお勧めです。さらに手元に置かずに自分の机から離れた場所、できれば他の部屋に置いてしまうとよいでしょう。その際、電話の着信音だけは鳴るようにしておいて、緊急の要件についてはすぐに連絡がつくようにしておくと安心です。

また、どうしてもテレビを観て仕事が止まってしまうという場合には、勤務時間中はリモコンから電池を抜いて、リモコンと電池とテレビを別々の部屋に置くことをお勧めします。「テレビを観る」ということをあえて面倒くさい作業に変えてしまうことで遠ざけてしまうというわけです。

また、漫画についてはできれば実家やレンタルルームなどに預けてしまうのが最善です。それが難しい場合にはまとめて紐で縛って段ボールに入れてガムテープで密閉しクローゼットの奥などにしまうのがよいでしょう。こちらもテレビと同様、読むための煩わしさを上げることで遠ざける効果があります。

次に、家にいると炊事や掃除、洗濯、買い物などの家事があって仕事に集中できないというケースですが、これは明確に「勤務時間中には一切の家事を行わない」というルールを徹底することで解決するはずです。本来、オフィスに出勤中であれば一切の家事はできないはずですし、それによってこれまで困ることはなかったのではないでしょうか。

つまり、「今、テレワークで家にいるからやっている家事」は本来不要だった作業のはずです。そのため、「勤務時間中は一切の家事をやらない」というルールを決めて徹底することが大事です。ただし、これに関しては前提として「育児を伴わない」ことを記しておきます。育児そのものや、子どもが家にいる場合の炊事などの必要最低限の家事についてはこの限りではないので、そこは留意ください。

一人で悩んで抱え込むより適切なコミュニケーションを

オフィスと違って自宅にいると、自分の仕事を気にかけてくれるはずの上司や同僚がいないので仕事で行き詰まっても誰にも相談できないで悶々とし、モチベーションが低下していく一方で時間だけが過ぎてしまうという悲惨な状況に陥りかねません。

同じフロアにいれば、部下や同僚の表情から困っていることを察して声をかけてくれる人がいるかもしれませんが、お互いに顔が見えない環境においてあなたが困っていたり悩んでいたりすることを上司や同僚が見抜くことはまず不可能です。

そのため、何らかのトラブルに遭遇したり作業が行き詰まったりした際には自分から電話やメール、チャットなどで相談する必要があります。その際、最もお勧めなのは電話です。メールは双方向での素早いやり取りには不向きですし、チャットも情報量が多くなるとどうしても時間がかかってしまいます。その点、電話であれば多くの情報を短時間で伝達できるうえ、声の調子や話すスピードなどで文字だけでは伝わらない微妙な情報も同時にやり取りできるからです。もっとも、突然の電話は気が引けるという方は「今、電話してもよいですか?」とチャットで一報入れて、OKなら電話するのもアリでしょう。

なお、度々電話で相手の時間を取るのは気が引けるという方は、予め上司に「一日に数回、決まった時刻に作業の進捗報告をする」旨、伝えておくのもよいでしょう。例えば9:00の始業時刻には当日やることを伝えて、12:00に午前の進捗報告、15:00に午後の進捗報告、18:00に一日の作業報告をすると伝えておけば、電話するのに遠慮する必要もありませんし上司も安心するでしょう。さらに、電話で聞いて理解したことの要点をまとめてチャットやメールで上司に送っておくと頭の整理になる上、自分と上司の備忘録になるのでお勧めです。

昨今の状況において、急なテレワークへの移行に伴って仕事の進め方が大きく変化して戸惑っていらっしゃる方も多いでしょう。自宅での仕事で生産性が落ちて悩んでいる方にとって、本稿が改善のヒントになれば幸いです。

筆者プロフィール: 相原秀哉(あいはら ひでや)

株式会社ビジネスウォリアーズ代表取締役
慶應義塾大学大学院修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)入社。グローバルスタンダードの業務改革手法、Lean Six Sigmaを活用したコンサルティングを得意とし、2012年に日本IBMで初めて同手法の伝道師 "Lean Master"に 認定される。その後、幅広い組織や個人の生産性向上に寄与するべく独立。生産性向上による働き方改革コンサルティングや、コンサルティングスキルを実践形式で学べるビジネスブートキャンプを手掛ける。