本連載の第14回では「会議は始まる前に半分終わっている」と題し、会議の準備段階でやっておくべきことをお伝えしました。今回は会議本番で起こるトラブルを上手に乗り切る方法をお話します。

  • 会議で起こるトラブルを乗り切るには?

    会議で起こるトラブルを乗り切るには?

事前の準備をしっかりしておくことの重要性は前回お伝えしましたが、だからといって本番で手を抜くわけにはいけません。どれほど入念な準備をしていても人が関与する以上、想定外のトラブルは起こって当たり前と捉え、しっかり結果を出すために、会議本番でトラブルが起こった時に対応できるようにしましょう。

会議中に起こるトラブルの例は無数に考えられますが、その中でも特に会議が長引く要因になりやすい「議論」に関するトラブルに焦点を当てて、その対応方法を探っていきます。

議論の「停滞」の突破術

会議の冒頭や途中で議論が止まってしまい、参加者から発言が出なくなってしまった経験はありませんか? もちろん5秒や10秒くらい発言が止まっても、参加者が考え込んでいるだけの場合もあるので、さほど問題ではありませんが、さすがに30秒以上にわたって沈黙が続いたり、それが頻繁に発生したりするようでは会議が無駄に長引きかねません。

発言がなくなることによる会議の停滞の要因としては様々考えられますが、ここでは参加者が「雰囲気が重苦しくて発言しにくい」、または「何を話してよいかわからない」と感じていることにより起こる停滞に焦点を当てます。

会議の停滞が「雰囲気が重苦しくて発言しにくい」ことに起因すると考えられる場合は、それが会議の冒頭ならば、場を和ませるような小話を挟み(取引先の大変感じのよかった対応、社員の笑える失敗談、グルメやスポーツ、ペットに関することなど、その場に相応しいものを選択してください)、そこから複数の参加者に振って話させるのがよいでしょう。

多少の時間のロスはありますが、発言しやすい雰囲気作りにより、総合的に見れば時短につながるはずです。また、ある程度会議が進行してから発言が滞った場合には、参加者の疲れが影響していることが考えられます。その場合には一旦、10分ほど休憩を挟むことをお勧めします。リフレッシュすることで停滞感が一掃されることが期待できます。

なお、会議の停滞が「何を話してよいかわからない」と参加者が感じていることに起因する場合には、上記の対応をとっても効果は得られません。そのような兆候が見られた時は、参加者への問いかけを具体化することをお勧めします。例えば「売り上げを伸ばすためにどうしたらよいか?」という議題では意見しづらそうだという場合でも、「営業が現状より1日1件、見込み顧客との接点を増やすにはどうしたらよいか?」など、より具体的な話にすればきっと参加者が意見を出しやすくなるでしょう。

議論の「紛糾」の突破術

発言は活発でも議論が紛糾してしまうと、これもまた会議が長引く要因になってしまいます。もちろん参加者の間で意見の相違があることは当然で、多様な意見があるからこそ、画期的なアイディアや鋭い指摘、それまで誰も気がつかなかった観点が見つかるなどのメリットがあるはずです。一方で、意見が摺り合わないまま膠着状態に陥ってしまい、時間だけが過ぎてしまうことは生産的とは言えません。

会議が紛糾する主な要因として考えられるのは「議論が噛み合わない」場合と「主張が真っ向から対立する」場合です。そのどちらも、互いに主張をぶつけ合うだけでは、いつまで経っても議論が平行線のまま進展しない状況に陥りかねません。

なお、「主張が真っ向から対立する」場合は基本的には「どちらか一方の主張を受け入れる」か、「どちらの主張よりも優れた第三案を考える」かを検討すれば済む話ですが、より対応が厄介なのは「議論が噛み合わない」場合なので、こちらにフォーカスして考えたいと思います。具体的なイメージを持ってもらえるよう、ここではケースとして、とある営業部員と商品開発部員の会議の一幕を見てみます。

営業部員「先月の新商品の投入、あれは残念ながら失敗と言わざるをえませんな。そもそも商品の売りがターゲットのニーズに合っていないんじゃないですか」
商品開発部員「そんなはずはないですよ、あの商品は顧客のニーズを基に開発を進め、求められている機能を全て搭載できたんですよ。それが失敗のはずがない。それにターゲット顧客からも好評いただいていますよ」

紛糾している原因が「議論が噛み合わない」場合には、「視点のズレ」と「軸のズレ」の2つが考えられます。

最初の「視点のズレ」とは、社長/部長/部員/顧客/取引先といった「誰の立場に立った見方か」が異なる場合や、店舗/支店/支社/全社といった「どの範囲での見方か」が異なる場合、それに日単位/週単位/月単位といった「どの期間での見方か」が異なる場合などが考えられます。先ほどのケースでは「視点のズレ」が発生し、営業部員と商品開発部員の考える「ターゲット」の範囲が異なっている可能性があります。

また、「軸のズレ」とは、同じ「費用」について話しているつもりが、一方では売上原価、もう一方では販管費を想定して話していたり、同じ「成果」について話しているつもりが、一方では売上高、もう一方では利益額を想定して話していたりする場合などに発生します。そして上記ケースでは、同じ「失敗」について話しているつもりが、営業部員は「売れ行き」、商品開発部員は「機能」を念頭に話をしているために噛み合っていない可能性があります。

このような「議論が噛み合わない」場合には、相手の考える「視点」と「軸」が何を想定しているかを確認して明らかにすることで回避することができます。話が噛み合わなくなってきたら「それは~のことでしょうか?」と曖昧性を排除するための質問をしましょう。

議論の「ループ」の突破術

長丁場の会議に参加していると、時として「あれ? さっきも同じことを議論したな」と気がつくことはありませんか。そのような時は議論がループしている可能性があります。意見が出ているので議論は停滞せずに進んでいるはずなのに、気がつくと同じ議論を延々と繰り返してしまうところがこの現象の厄介なところです。

このループ現象は、議論の対象になっている事柄が複雑な構造になっていて、全体像がわからないままに進めていて「議論の迷子」になっている場合と、議論の要素間の関係が「本当にループしている場合」が考えられます。後者の「本当にループしている」場合については、説明が長くなってしまうので別の機会に取り上げるとして、ここでは「議論の迷子」になっている場合を取り上げます。

「議論の迷子」になってしまうのは、「目的が定まっていない/見失っている」場合と、「目的までの議論の進め方がわからない」場合、それに「何をどこまで話したかがわからなくなっている」場合の3つの要因が考えられます。

最初の「目的が定まっていない/見失っている」場合は、「一度立ち止まって、そもそもの議論の目的を再確認しませんか」と参加者に促すことで解決できる場合が殆どです。2番目の「目的までの議論の進め方がわからない」については議論の目的から逆算して、「決めなければならないことは何か」「その判断基準は何か」等の議論のポイントを整理し直すことで、目的達成に至るまでの道のりを明確にすることで対応しましょう。

そして最後の「何をどこまで話したかがわからなくなっている」場合には、会議冒頭からの重要な発言の要旨を表すキーワードをホワイトボードなどに書き出して、それを矢印でつなげていくことをお勧めします。それによってそこに至るまでの議論がどう進んできたのか、参加者の間で共通認識ができて、地図のような役割を果たすことで議論のループから脱出することが可能になります。

ここまでで、会議中に起こる議論の「停滞」、「紛糾」、「ループ」の3つのトラブルの要因と対処法についてお伝えしました。やたらと長引く会議があったら、これらの内のどれかに起因するのではないかと疑い、対処して頂くことで効率化できるかもしれません。ぜひ一度、お試しください。

筆者プロフィール: 相原秀哉(あいはら ひでや)

株式会社ビジネスウォリアーズ代表取締役
慶應義塾大学大学院修了後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)入社。グローバルスタンダードの業務改革手法、Lean Six Sigmaを活用したコンサルティングを得意とし、2012年に日本IBMで初めて同手法の伝道師 "Lean Master"に 認定される。その後、幅広い組織や個人の生産性向上に寄与するべく独立。生産性向上による働き方改革コンサルティングや、コンサルティングスキルを実践形式で学べるビジネスブートキャンプを手掛ける。