いまなお昭和の雰囲気を残す中央線沿線の穴場スポットを、ご自身も中央線人間である作家・書評家の印南敦史さんがご紹介。喫茶店から食堂まで、沿線ならではの個性的なお店が続々と登場します。今回は、高円寺の中華料理店「中華料理タカノ」です。
想像を超える、ものすごいチャーハンとは?
「ものすごいチャーハンを出す店がある」と近隣に住む友人から聞かされていたので、その店の存在自体は、もう20年近く前から知っていました。
でも、疑う気持ちはたしかにあったのです。なぜって、ものすごいとはいえチャーハンですぜ。そんなの、たかが知れているじゃないですか。だから、「ずいぶん大げさだなー」としか思えなかったわけで。
そのため、さほど期待していたわけではなかったのです。が、なめすぎていました。認めましょう。すごかったです。「中華料理タカノ」というその店は。
青梅街道沿いなので、高円寺駅からだと少し歩くことになります。15~20分くらいかな。最寄りの駅は東京メトロ丸の内線の新高円寺で、そちらを利用すればほんの数分。
いずれにせよ、白いアクセントも入った建物のベースカラーはオレンジ色で、柱は赤。おまけに厨房及び居住スペースになっていると思われる部分はエメラルドグリーンと、なかなか強烈な色づかいです。したがって、初めて訪れたとしてもすぐにわかると思います。
お昼時などには混雑すると聞いていたのですが、この日は時間を少しずらしたため、待たされることもなく入店に成功。とはいえ店内には、すでに作業服を着た4人組や、学生とおぼしき青年が。体力を使う仕事をする人や、食べる気まんまんの若い子たちから支持されていることがわかります。
で、運よく空いていたカウンター中央の席へ。真正面が厨房になっており、高齢のおばあさんがお水を出してくださいました。息子さんと思われる調理担当の男性は、忙しそうに動き続けています。
さて、黄色いクリアファイルのメニューをチェックすると、友人から聞いていたお目当ての品はすぐに見つかりました。
チャーハン 鳥の唐揚付き
中華スープ、お新香付き ¥700
チャーハンに、大きな唐揚げが2つもついてくるらしいのですよ。たしかにメニューには、そんな写真が掲載されていますね。ただ、写真だけではそれほどのインパクトは伝わってきません。
ところが数分後に実物が目の前に現れたとき、「なるほど、写真は必ずしも現実を伝えるわけではないのだな」と感じることになったのでした。「圧倒的」としか表現のしようがないから。
皿の右側、こんもりと盛られたチャーハンは、6粒乗った枝豆の色が鮮やか。お店の外観もそうでしたが、やはり色づかいにこだわりがあるのでしょうか(それは考えすぎだと思うね)。
それはともかく、問題は左側です。というのも、2個並んだ唐揚げの直径が、チャーハンのそれとあまり変わらないのです。だから、皿の上に大きな丸い形のものが3つ、どどーんと鎮座している感じ。
しかもアツアツの中華スープとお新香もついているので、価格を考えるとかなりコスパがいいことがわかります。いや、量を考えると、コスパが"よすぎる"と表現すべきかもしれません。食べてみれば、とにかくボリューム感がハンパないからです。
チャーハンはしっとり系で、どこか懐かしさを感じさせる味。見た目以上にギッチリ詰まっているので、食べごたえも充分です。ほとんど更新されていないお店のブログには「昭和39年当時の写真」というページがあるのですが、そのころから変わってないんだろうなと連想させてくれる味です。
ただ、チャーハンだけならまだしも、唐揚げの破壊力がものすごいわけですよ。揚げたてのカリカリ、もも肉がジューシーなクオリティの高い唐揚げなのですけれど、なにしろ量が……。箸で挟むとずっしりとした重みが伝わってくるほどで、これはなかなか手強いやつです。
そんなわけで、なんとか食べ終えた結果、軽く見ていた自分の愚かさを痛感することになったのでした。いや~、これはすごい。間違いなくおいしいし、しかも量がとてつもないのだから、「すごい」としかいえません。
まいりました。満腹になりすぎたため、夕飯が食べられなかったことを書き添えておきます。完敗です。
●中華料理タカノ
住所:東京都杉並区高円寺南3-6-1
営業時間:11:30~15:00、18:00~22:30
定休日:木曜日